面接担当者が開いた「小説家」への道 ー 作家 三浦しをん氏(第1回)

最終更新日: 2019年11月25日
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中村千晶

面接担当者が開いた「小説家」への道 ー 作家 三浦しをん氏(第1回)

みうら・しをん◆1976年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000年、24歳で『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利屋』で第135回直木賞を受賞。12年『舟を編む』で第9回本屋大賞を受賞。映画化された著作も数多い。06年に書き始め、08年に上梓した『光』(集英社)が大森立嗣監督によって映画化。11/25に公開。

 

――原作を書かれた『光』が映画化されました。監督は『まほろ駅前多田便利軒』シリーズの映画化でもコンビを組んでいる大森立嗣さんです。

 大森監督は毎回シナリオも素晴らしく、信頼してお任せしています。原作者は配役などにノータッチなので、映画を見て「おお!」と思います。微妙にエピソードの順番を入れ替えたり、監督が細心の注意を払って原作を読み込んでくださって、素晴らしい映画になっていました。

光_メイン写真.jpg

11/25(土)から新宿武蔵野館、有楽町スバル座ほか全国ロードショー。出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミほか/監督:大森立嗣/原作:三浦しをん/配給:ファントム・フィルム©三浦しをん/集英社・©2017『光』製作委員会

 

――さまざまなテーマの作品を書かれていますが、デビュー作の『格闘する者に』は、ご自身の就職活動を題材に書いた小説ですね。

 そうです。出版社を受けたのですが、これがまあ受からない(笑)。何十社も受けましたが全滅でした。落ちるたびに「ガビーン」と思わなくはないのですが、ただ私、会社で働くということがよくイメージできていなかったんです。出版社を選んだのも、子どものころから本や漫画が好きだったからという単純な理由でした。編集者がどんな仕事をしているのか、具体的には何も知らなかったんです。いま出版社でお世話になっている編集者さんを見ると、やっぱりすごく優秀だし、人の気持ちにさといんですよね。思いやりや気働きもある。「そりゃ自分は落ちるな」と思いました(笑)。

――小説に描かれている試験や面接のシーンはとてもリアルです。

 すごくいやな感じの面接担当者もいましたし、圧迫面接も実際にありました。でもそもそも出版社って何千人も受けて5人くらいしか受からない。だんだん「これはもう無理だな」って思いました。出版社は作文が試験に出るんです。「写真を見て、作文を書く」とか。最初は真面目に書いてたんですけど、「これはどうしたって受からないから、好きなように書こう」と、途中から好き勝手なテイストで書いてました。

――そうしているうちに、ある編集者との出会いがあったのですね。

 早川書房の試験で「10年後の私」というお題で作文を書いたんです。マジメに10年後の自分を考えてもつまらないから、活劇風に書きました。試験は落ちたのですが、その作文を読んだ編集者の方が連絡をくださったんです。その方がちょうど出版社をやめて、出版エージェントを立ち上げるときで「何か書いてみませんか」と。在学中からwebマガジンで週1でエッセイを書かせてもらうようになり、そのうちに「小説も書いてみたらどうですか」と言われました。

――まさに運命が決まった瞬間、という感じです。

 でも最初は正直、よくわかんなかったんです。こっちは編集者になりたくて出版社を受けてたので「いえ、小説を書くほうじゃなくて、編集者になりたいんですけど」みたいな(笑)。それに、それまで全く小説なんて書いたこともなかった。本を詠むのは大好きだったけど、作文も読書感想文も全然好きじゃなかったし。だからあのとき声をかけていただかなかったら、小説を書こうとは思わなかった。あれがすべての始まりですね。

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