会社員から売れっ子脚本家に転身 恵まれた職場を辞めた理由は? ― 脚本家 山岡潤平氏(第1回)

最終更新日: 2019年11月25日
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朝日新聞社教育総合本部 岩田 一平

会社員から売れっ子脚本家に転身 恵まれた職場を辞めた理由は? ― 脚本家 山岡潤平氏(第1回)

やまおか・じゅんぺい◆1983年、兵庫県出身。脚本家。テレビドラマ「釣りバカ日誌~新入社員浜崎伝助」、「マジすか学園」、「世にも奇妙な物語」映画「ピーチガール」など、脚本多数。東京外国語大学フランス語科卒。2018年公開予定の映画「不能犯」、「Honey」の脚本も手がけている。

 

――兵庫県加古川市のご出身で東京外国語大学フランス語科の卒業です。将来の仕事を考えての選択だったのでしょうか。

東京外語大にしたのは役者になるために東京に出たかったからです。家の事情もあり、私立ではなく国立をねらいましたが、英語が割と出来たので試験科目から大学を選びました。フランス語科は、美術も好きで、演劇の参考にもなるかなと。でも授業は最低限だけ出席して、あとは仲間と劇団をやっていました。エンタテイメント系です。観客をびっくりさすようなことをやりたくて。宇宙人とか怪獣とか登場させたり、いきなり血がドバドバッと吹き出たりとか……。

――大学を卒業して、いきなり脚本家ですか。

いえ。新卒で靴の製造販売の会社に就職しました。そこは靴のデザインから販売まで新人でもすべて任せてくれる会社でした。デザインはシロウトでしたが、2カ月間の研修を受けて一から教えてもらいました。飛び込み営業も経験しましたよ。会社の主な取引先が中国だったので時差の関係もあって、勤務は午前9時半から午後7時まで。朝はゆっくりできるし、残業もそんなになくて、フリーな時間がたっぷりあった。空いた時間で演劇を続けていました。

――とてもよい職場環境に思えますが。

かえってよすぎました。恵まれた暮らしが、そのうちになんだか腑に落ちなくなってきました。このまま居心地がよいのでずっと続けていってしまいそうで、これはヤバイと思いました。3年ほどで、「お世話になりましたが辞めさせてください」と申し出ました。でも、一度始めた仕事は、ともかく一通りきっちりやろうと、勤めている間にパンプス2足とデザインブーツ1足を作って自分で販売するところまでやってから辞めました。シナリオの勉強は専門の本を買ったりして、独学でした。

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撮影:丸橋ユキ

――テレビの脚本家としてデビューのきっかけは?

持ち込みです。テレビの制作会社に作品を売り込みに行きました。テレビ番組を見渡して、ここぞと思ったのが、フジテレビの「世にも奇妙な物語」でした。このシリーズは春と秋に特番があって1回10本放映します。1本の尺(番組の長さ)が25分ほどで、そう長くない。この番組から三谷幸喜さんや北川悦吏子さんたち名だたる脚本家が輩出されていて、若手にも門戸を開いてくれる脚本家の登竜門のような存在でした。

――どうやって持ち込んだのでしょう。

まず「世にも奇妙な物語」のための脚本をまず八十数本書き溜めました。その番組の製作会社まで行って、ビルの下から「脚本を書いてきました。お会いしたいのですが」と言ってディレクターさんを呼び出しました。でもアポなしで突然行ったって、会ってくれませんよね。「じゃあ、書いたのは送って」と言われました。で、20本くらい送る。2週間経っても音沙汰なしです。また会社を訪ねて行ってまた会えなくて、20本。もう一度行ってさらに20本、それでも会えずに20本……最後に「1本、おもしろいのがあったから」と、制作会社のディレクターさんから電話がかかってきました。

――書き溜めた原稿を一度に見せずに、何度も会社訪問して20本ずつ送った、それ自体が熱心さをアピールするための演出ともいえますね。それからは順風満帆?

いいえ。最初はそんなに注文なんてありませんよ。テレビ業界に人脈もなかったし。じつはデビューが決まってからシナリオ作家協会の講座に通ったんです。そこには毎回、一線のディレクターさんとか業界のひとが講義に来ていました。そこでコネを作りたくて、せっせと通って名前と顔を覚えてもらいました。最初に起用してくれた制作会社の人のつながりからだんだん仕事が広がっていきました。

 

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