もっと自分にわがままになっていい ― 作家 三浦しをん氏(第3回)

最終更新日: 2019年11月25日
  • シェア
  • ツイートする

中村千晶

もっと自分にわがままになっていい ― 作家 三浦しをん氏(第3回)

みうら・しをん◆1976年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000年、24歳で『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利屋』で第135回直木賞を受賞。12年『舟を編む』で第9回本屋大賞を受賞。映画化された著作も数多い。06年に書き始め、08年に上梓した『光』(集英社)が大森立嗣監督によって映画化。11/25に公開。

 

――取材をして「この仕事やってみたいな」と思うことは?

 ありますよ。辞書編集部も林業も文楽の世界も、すごく魅力的でした。そこには単なる「仕事」を超えた何かがある。「情熱」ですよね。「お金のためだけなら、こんなに厳しい道はいかないよなあ」という人たちを見ると、自分も生まれ変わったらこんなふうに生きてみたいなと思う。そういう人たちを小説でどう表現しようかと考えるのが好きなんです。最近まで新聞連載で植物学の話を書いていて「理数系の才能があったら、やってみたかった」と憧れました。私は理系は小学校高学年から苦手で、授業中ずっと魂が浮遊してましたから(笑)。

――いま新卒の3割が3年以内に離職しています。どうお感じになりますか?

 みなさん、何で辞めてしまうんですか?思っていた仕事と違ったのかな? 私も出版社のほかに新聞社も受けましたよ。筆記試験が難しくてひとつも受からなったけど。あと「伊勢丹」が好きだったから、伊勢丹も受けました。受かっていたらどうなってたでしょうね。

 辞めたい理由がブラック企業なら、すぐに転職すればいいと思います。そんなところで我慢して働く必要はない。そうじゃなくても「若いうちにほかの可能性にかけたい」というのであれば、転職も全然いいと思います。世の中にはいろんな職業がある。「会社」だけを選択肢にせず、いろいろ試してみたほうがいいのではないでしょうか。

D75_1510_.jpg

撮影:丸橋ユキ

――自分のやりたい仕事がなかなか見つからないと悩む人も多いようです。

 私がこれまで取材で会った仕事人たちは、ほぼ「その道一筋」という方ばかりでした。彼らは自分の好きなものが何かを、しっかり把握してるんだと思うんです。若い人たちも自分が本当に好きなもの、もしくは「これは絶対に無理!」というものを把握したほうがいい。「世間体」「給料がいいから」「親が言ってるから」とかは、やめたほうがいい。もう大人なんですから。自分の好きなものを必ずしも仕事にする必要はないですが、でも「これは譲れない」ものはきちんとわかっておいたほうがいい。給料とか条件面ではなくて、自分の気持ちとして譲れないものです。そういうことを考えずにさまよっても、たぶん、また同じことになると思います。

――転職を目指す若者にメッセージをいただけますか?

 Re就活世代は、もっとご自分にわがままになったほうがいいんじゃないでしょうか。人の目や親の目を気にしてもしょうがない。それになにより、「オレに合う仕事はこれ」とか「やりがいのある仕事がしたい」といった、“自分自身の目”も気にしないほうがいいと思うんですよ。いや、人生や仕事に「やりがい」なんて言葉に当てはまるものはないから、と言いたい(笑)。そういうことを考える人は、自分に対する期待値がすごく高いんだと思います。

 小説を書いていて「ここまできたぞ」「やりがいだ!」なんていう感覚は、私はまったくないです。私にとっては小説を書くことが仕事で、書きたいと思うものがあるから、やっている。それは「やりがい」とかとは違う。毎回、作品を自分が思っているところまで到達させたいとは思いますし、もちろん真剣に書くんですけど、でもなかなか到達できませんしね。だから「しょうがない、また次やるか!」みたいに思うのかもしれません。

 

20代の転職なら「Re就活」

20代・第二新卒・既卒のための転職サイト「Re就活」。
「もう一度、納得できる仕事を探したい」…というあなたの向上心に期待する企業との出会いが待つ転職サイトです。

求人はすべてキャリアチェンジ大歓迎。あなたを採用したい企業から届く「スカウト機能」など、はじめての転職をサポートする機能が満載です。

“これまでの経歴”ではなく、“これからの可能性”を。あなたの可能性に期待するたくさんの企業が、あなたのチャレンジを待っています。