未知の世界に一歩踏み出す面白さをぜひ知ってほしい。  ― アドベンチャーランナー 北田 雄夫氏

最終更新日: 2019年11月25日
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八田 智大

未知の世界に一歩踏み出す面白さをぜひ知ってほしい。  ― アドベンチャーランナー 北田 雄夫氏

きただ・たかお◆1984年、大阪府堺市生まれ。中学から走るこ とを始める。近畿大学陸上競技部に入部後、選手として主将として日本選手権4×400mリレー3位。卒業後、就職し一度は運動を辞める も、再び競技を始める。IRONMAN完走、アフリカ最高峰キリマンジャロ5,895m登頂、山口萩往還140kmマラソン完走など、 様々な経験を積み2014年、アドベンチャーマラソンに参戦。2017年、『日本人初の世界7大陸アドベンチャーマラソン走破』を達成。 現在講演、執筆、レース映像の配信などを通じて、世界の果てで学んだ経験を伝える活動を行う。

 

―アドベンチャーマラソンに挑もうと思われたきっかけをお聞かせください。

 

世界にチャレンジしたかったんですね。かつ誰もやっていないことにチャレンジしたいという思いがあった。そんなときにこの競技にちょうどめぐり合って、飛び込んだのがきっかけです。陸上競技を中学・高校・大学と続けてきて、大学3年のときにはリレーで日本3位までいくことができたということもあったので、社会人になってもう一度チャレンジしようというときに、昔の自分を越えるような、新しいチャレンジができるようなことをしたいということが前提にありました。そこで最初はマラソンから始めたんですけど、やるんであれば思い切って勝負をしたいということで、アドベンチャーマラソンの世界に飛び込みました。

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―長距離を走破するためには、気持ちの持続やスイッチを切り替えるのが相当大変だと思うのですが。

 

本当に大変ですね。やっぱり全行程、例えば200キロを走らないと、と最初に考えてしまうと、気持ちを持続するのが難しいのですが、アドベンチャーマラソンはステージ形式で、ぶっ通しで200キロ走るわけではなく、1日あたりおよそ40キロ、それを5日間続けて走りますので、まずは1日走る距離を目標に設定し、モチベーションをコントロールしたりスイッチを切り替えたりしながらクリアしていくように考えています。

 

 

―レースではGPSなどはなく、周りの情報だけを頼りに進んでいくのだとか。

 

そうです。他のランナーの姿と足跡、それとコースを示す旗を頼りに走るのですが、砂漠のような場所を延々と走っていると、暑さなどで意識が朦朧としてきて、旗を見失ったりすることもあります。また夜になると、明かりがなく、自分のヘッドライト一つだけになるので、それを頼りに目印を探しながら進むというので迷うこともありますね。

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―そんな過酷なアドベンチャーマラソンに挑戦されながら、現在も会社員として週4日勤務されている北田さん。転職を経験されて現在の会社に入られたとお聞きしましたが、以前の会社ではどのような仕事観を持ちながら働かれていたのでしょうか。

 

新卒で最初に入社した会社では、3年ほど働かせていただきました。やはりその時は大学を卒業して新社会人としてバリバリ活躍したいというフレッシュな思いで頑張りました。サンドイッチやお弁当などの食品に使われるプラスチック容器を扱うメーカーの営業職だったので、営業先としては食品の問屋さんやメーカーさんを中心に訪問していました。

 

 

―大変だな、と感じるようなことはありましたか。

 

いやあもう全部が大変でしたね(笑)。特に大変なのはお客様とのコミュニケーション。やっぱり社会人って学生とはぜんぜん違うじゃないですか。お客様も生活がかかっているわけですから、学生気分でいくと当然怒られますし。特に交渉事なんかはそれまでまったく経験がなく、特にお客様にとって不利な交渉をしないといけない場面なんかは本当に大変だと感じましたね。言葉遣いにはじまり、どうやったらお客様の立場になって物事を考えられるか、そんなことを散々考えたり、悩んだりした覚えはありますね。

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―今もう一度以前のお仕事に就かれたとしたらどのようになると思いますか。これまでの経験が何か役に立つ局面というのはあるでしょうか。

 

それはすごくあると思います。やっぱり壁や問題があって乗り越えようというときに、自分が残してきたこれまでの記録なり、結果によって得た自信が後押ししてくれるのは大きいですね。

そう思えるのは会社生活、社会人経験もそうですけど、やっぱりこのアドベンチャーマラソンの経験の中で培ってきたものが大きいと思います。少しずつでも努力を続けていけば、いずれは成長できるということが知ることができた、自分にとってのかけがえのない財産ですね。

 

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 ―最後に今20代で人生の岐路に立ちながら、いろいろな悩みを持っている人に向けてメッセージをお願いします。

 

自分自身も20代の頃は「これでいいのか」とすごく悩んでいて、転職活動をし、5年間働いたあと、現在のアドベンチャーマラソンという競技に進みました。私はたまたまこの道を選びましたが、皆さんにはそれぞれの道があると思います。もしかつての私と同じような悩みを抱えている方がいらっしゃったら、勇気を持ってぜひ自分なりにチャレンジしてほしいな、と思いますね。長い人生で考えれば20代はまだまだこれから。何かにチャレンジしてみる、何かを変えてみる、そんな一歩があなたの将来像を徐々に明確にしていったり、物事の見方を変えていくと思います。私も何かに踏み出す瞬間はいつも怖いですし、不安ばかりなんですけど、一歩踏み込んだ先の面白さや醍醐味を知ることで、人生を切り拓く勇気の源にしていただけたらいいですね。

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