2023.04.19FOCUS
最近よく聞く「タイパ」ってなに?生活や仕事に与える影響まで、詳しく解説!
20代の働き方研究所 研究員 T.I.
スマホやタブレットで動画を見ているとき、このような経験はありませんか?
これらはいずれも「タイパ」を意識した行動です。
「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略であり、かけた時間に対する効果や満足度がどの程度なのかを考える際に使われる言葉です。ただ時間を節約するのではなく、かけた時間に対する成果に重点を置いています。
今回は「タイパ」という言葉が生まれた背景から、生活や仕事に与えている影響まで、詳しく見ていきましょう。
例えば、インターネットで調べ物をするとき、検索エンジンやSNSの検索機能などを使うと思います。そんなとき皆さんは、検索結果画面に表示される情報すべてにアクセスしているでしょうか?
きっと無意識のうちに、ほしい情報が手に入りそうなページや記事、投稿などを取捨選択しているのではないかと思います。すべてに目を通していたら膨大な時間も労力もかかってしまいますよね。
幼い頃から身近にインターネットがあり、大量の情報に囲まれて育ったZ世代。このような情報の取捨選択には、他の世代と比べて長けているといえるでしょう。そして、その根底にある「効率よく情報を手に入れたい」「時間を無駄にするのが嫌だ」という考え方こそ、まさしく「タイパ」という言葉が使われるようになった理由の一つなのです。
◆1分以内のショート動画が人気
動画投稿サイト「TikTok」やInstagramの「リール(Reels)」には、スキマ時間で見られる1分以内の短い動画が多く投稿されています。少し視聴してみてつまらなくても、画面をスワイプすればスキップ可能。バラエティ豊かな動画を「タイパ」よく楽しめます。
また、YouTubeが提供する「YouTubeショート(Shorts)」では、通常の動画のワンシーンを抜粋した「切り抜き動画」が人気です。元動画のおもしろいポイントが切り抜かれているので、その他の冗長なシーンを見る必要がありません。
また、切り抜き動画が元動画のおもしろさを保証するので、「この動画がつまらなかったら時間の無駄になるかも・・・」ということを恐れずに元動画を楽しむことができます。「お試し動画」の役割を果たす点でも、切り抜き動画は「タイパ」が高いといえます。
◆音楽も「短さ」がトレンドに?
音楽チャートのランキング上位を見てみると、イントロの短い楽曲が並んでいます。実はこれも「タイパ」がもたらした現象の一つ。サブスクリプション制の音楽配信サービスだと、ユーザーは「聴きたい曲だけ、聴きたい箇所だけ」という楽しみ方が可能。そのため、歌い出しまでが長い楽曲はスキップされやすくなったそうです。
そして、最近上がっているのが「音楽はサビだけ聴きたい」という声。若い世代は楽曲を聴く行為そのものよりも、人気楽曲を把握することを目的としていることが一因です。その影響は「聴く」だけでなく「歌う」にも。カラオケ店の中には、人気楽曲のサビだけを抜粋した別バージョンを配信する店舗があるようです。
◆時短も栄養補給も叶える「完全栄養食」
完全栄養食とは、1食分に「1日に必要な栄養素の3分の1」がすべて含まれている食品を指します。これは、厚生労働省が年齢や性別ごとに必要な栄養素を設定した「日本人の食事摂取基準」をもとにしています。
パンやドリンク、カップ麺など手軽に飲食できるものが多く、ビジネスパーソンを中心に人気が高まっています。栄養素を考えながら食品を選んだり、どんな食品を買うか迷ったりする手間暇を省くことができるため、食事の「タイパ」が格段と向上。購入方法も各社ECサイトやコンビニなど多彩で便利です。
◆まだまだいっぱい! 高「タイパ」商品
「タイパ」の影響はこれだけにとどまりません。例えば、ライフスタイルの変化が色濃く表れやすい「家電」にも「タイパ」の波が。ロボット掃除機や食器洗い乾燥機、洗濯乾燥機など、スイッチひとつで家事が完了する商品や、外出先からや帰宅途中でも操作ができる「スマート家電」が人気です。時間効率が大幅にアップすることで、これまで家事に追われていた時間を休息や趣味などに充てられるようになったという声が聞かれます。
他にも、話題のニュースやトピックスが簡単に解説されている「まとめ動画」や、本の内容を読み上げる音声を聴くことで「ながら読書」ができる「オーディオブック」など、あらゆる分野で「時短」「ながら」がキーワードとなっています。社会のさまざまな側面で「タイパ」意識が高まっていることがうかがえますね。
新型コロナウイルスの流行を境に、就活にもオンライン化の波が到来。多くの企業が説明会やインターンシップなどをオンラインで実施するようになり、就活のあり方が大きく変化しました。
株式会社学情が2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に行った「タイムパフォーマンス」に関する調査によると、就職活動準備において「タイパ」や効率を「意識する」「どちらかと言えば意識する」と回答したのは全体の55.7%にのぼります。
「タイパ」を具体的に意識していることとして、学生からは以下のような声が聞かれました。
「タイパ」においては、「かかる時間」だけでなく、「かけた時間に見合う情報や成果を得られるか」が意識されていることがわかりますね。
また、オンライン化によって、移動や宿泊にかかる時間も少なくなっています。スケジュールが立てやすくなったほか、一日に複数社の説明会や選考に参加できるようになり、就活の「タイパ」は従来と比べて向上しているようです。
◆「タイパ」視点でキャリアを計画する
新卒での就活でも、転職やその先を見据えてファーストキャリアを選ぶ人が増えていますが、これはまさに「タイパ」に基づいたキャリア観といえます。
例えば「将来的に起業したい」という目標を持ちながら、まずはスタートアップ企業やベンチャー企業に入社するという人がいます。こうした企業は、専門性の高い業務や経営・事業運営、バックオフィス業務など、若いうちから幅広い仕事ができる傾向にあるからです。長い研修があり、じっくりとスキルを高める企業と比べると、同じ時間でより「タイパ」よく起業に必要なスキルを身につけることができます。
また、いわゆるホワイト企業でも転職を視野に入れる人は少なくないとか。転職がもはや当たり前となっている現代、自分の会社以外でも通用する人材でありたいと考える人の増加が背景にあるようです。「スキルアップできない環境は若いうちに見切りをつける」という価値観にも、与えられた時間を有益に使いたいという「タイパ」思考が見られますね。
単なる時短に留まらず、かけた時間に対する成果を重視する「タイパ」。自身にとって「タイパ」が良いかどうかを判断するには、自分の軸を持つことが大切です。
必要な情報を選び取るリテラシーを、そして自分の判断軸を養うためにも、時には「タイパ」を度外視して、生の情報に触れたり、現地に訪れたりと、自分で「体験」してみることも意識してみてはいかがでしょうか。
- 再生速度を1.5倍速や2倍速にする
- 退屈なシーンは10秒スキップ
- 動画を流しながら仕事や勉強、家事をする
これらはいずれも「タイパ」を意識した行動です。
「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略であり、かけた時間に対する効果や満足度がどの程度なのかを考える際に使われる言葉です。ただ時間を節約するのではなく、かけた時間に対する成果に重点を置いています。
今回は「タイパ」という言葉が生まれた背景から、生活や仕事に与えている影響まで、詳しく見ていきましょう。
「タイパ」という言葉が生まれた背景
そもそも「タイパ」はZ世代(1990年代後半から2010年代半ばまでに生まれた世代)の行動から生まれた言葉といわれています。例えば、インターネットで調べ物をするとき、検索エンジンやSNSの検索機能などを使うと思います。そんなとき皆さんは、検索結果画面に表示される情報すべてにアクセスしているでしょうか?
きっと無意識のうちに、ほしい情報が手に入りそうなページや記事、投稿などを取捨選択しているのではないかと思います。すべてに目を通していたら膨大な時間も労力もかかってしまいますよね。
幼い頃から身近にインターネットがあり、大量の情報に囲まれて育ったZ世代。このような情報の取捨選択には、他の世代と比べて長けているといえるでしょう。そして、その根底にある「効率よく情報を手に入れたい」「時間を無駄にするのが嫌だ」という考え方こそ、まさしく「タイパ」という言葉が使われるようになった理由の一つなのです。
「タイパ」重視で変化する社会
若年層に見られた時間効率の考え方は、しだいに幅広い世代へと波及。「タイパ」の高い商品やサービスなどの需要が高まるようになりました。ここではその代表例をご紹介します。◆1分以内のショート動画が人気
動画投稿サイト「TikTok」やInstagramの「リール(Reels)」には、スキマ時間で見られる1分以内の短い動画が多く投稿されています。少し視聴してみてつまらなくても、画面をスワイプすればスキップ可能。バラエティ豊かな動画を「タイパ」よく楽しめます。
また、YouTubeが提供する「YouTubeショート(Shorts)」では、通常の動画のワンシーンを抜粋した「切り抜き動画」が人気です。元動画のおもしろいポイントが切り抜かれているので、その他の冗長なシーンを見る必要がありません。
また、切り抜き動画が元動画のおもしろさを保証するので、「この動画がつまらなかったら時間の無駄になるかも・・・」ということを恐れずに元動画を楽しむことができます。「お試し動画」の役割を果たす点でも、切り抜き動画は「タイパ」が高いといえます。
◆音楽も「短さ」がトレンドに?
音楽チャートのランキング上位を見てみると、イントロの短い楽曲が並んでいます。実はこれも「タイパ」がもたらした現象の一つ。サブスクリプション制の音楽配信サービスだと、ユーザーは「聴きたい曲だけ、聴きたい箇所だけ」という楽しみ方が可能。そのため、歌い出しまでが長い楽曲はスキップされやすくなったそうです。
そして、最近上がっているのが「音楽はサビだけ聴きたい」という声。若い世代は楽曲を聴く行為そのものよりも、人気楽曲を把握することを目的としていることが一因です。その影響は「聴く」だけでなく「歌う」にも。カラオケ店の中には、人気楽曲のサビだけを抜粋した別バージョンを配信する店舗があるようです。
◆時短も栄養補給も叶える「完全栄養食」
完全栄養食とは、1食分に「1日に必要な栄養素の3分の1」がすべて含まれている食品を指します。これは、厚生労働省が年齢や性別ごとに必要な栄養素を設定した「日本人の食事摂取基準」をもとにしています。
パンやドリンク、カップ麺など手軽に飲食できるものが多く、ビジネスパーソンを中心に人気が高まっています。栄養素を考えながら食品を選んだり、どんな食品を買うか迷ったりする手間暇を省くことができるため、食事の「タイパ」が格段と向上。購入方法も各社ECサイトやコンビニなど多彩で便利です。
◆まだまだいっぱい! 高「タイパ」商品
「タイパ」の影響はこれだけにとどまりません。例えば、ライフスタイルの変化が色濃く表れやすい「家電」にも「タイパ」の波が。ロボット掃除機や食器洗い乾燥機、洗濯乾燥機など、スイッチひとつで家事が完了する商品や、外出先からや帰宅途中でも操作ができる「スマート家電」が人気です。時間効率が大幅にアップすることで、これまで家事に追われていた時間を休息や趣味などに充てられるようになったという声が聞かれます。
他にも、話題のニュースやトピックスが簡単に解説されている「まとめ動画」や、本の内容を読み上げる音声を聴くことで「ながら読書」ができる「オーディオブック」など、あらゆる分野で「時短」「ながら」がキーワードとなっています。社会のさまざまな側面で「タイパ」意識が高まっていることがうかがえますね。
「タイパ」の影響は、就活やキャリア形成にも
◆就活でも意識される「タイパ」新型コロナウイルスの流行を境に、就活にもオンライン化の波が到来。多くの企業が説明会やインターンシップなどをオンラインで実施するようになり、就活のあり方が大きく変化しました。
株式会社学情が2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に行った「タイムパフォーマンス」に関する調査によると、就職活動準備において「タイパ」や効率を「意識する」「どちらかと言えば意識する」と回答したのは全体の55.7%にのぼります。
「タイパ」を具体的に意識していることとして、学生からは以下のような声が聞かれました。
- アプリを有効活用する
- 一度に複数の企業の話を聞けるイベントを活用する
- より質の高い情報を得るために、自分の目で確かめる
- イベントは、話を聞きたい企業が3社以上出展していたら参加
- 話を聞くだけのセミナーではなく、仕事が体験できるインターンシップに参加
「タイパ」においては、「かかる時間」だけでなく、「かけた時間に見合う情報や成果を得られるか」が意識されていることがわかりますね。
また、オンライン化によって、移動や宿泊にかかる時間も少なくなっています。スケジュールが立てやすくなったほか、一日に複数社の説明会や選考に参加できるようになり、就活の「タイパ」は従来と比べて向上しているようです。
◆「タイパ」視点でキャリアを計画する
新卒での就活でも、転職やその先を見据えてファーストキャリアを選ぶ人が増えていますが、これはまさに「タイパ」に基づいたキャリア観といえます。
例えば「将来的に起業したい」という目標を持ちながら、まずはスタートアップ企業やベンチャー企業に入社するという人がいます。こうした企業は、専門性の高い業務や経営・事業運営、バックオフィス業務など、若いうちから幅広い仕事ができる傾向にあるからです。長い研修があり、じっくりとスキルを高める企業と比べると、同じ時間でより「タイパ」よく起業に必要なスキルを身につけることができます。
また、いわゆるホワイト企業でも転職を視野に入れる人は少なくないとか。転職がもはや当たり前となっている現代、自分の会社以外でも通用する人材でありたいと考える人の増加が背景にあるようです。「スキルアップできない環境は若いうちに見切りをつける」という価値観にも、与えられた時間を有益に使いたいという「タイパ」思考が見られますね。
「タイパ」を考えて、より有意義な生活を
「タイパ」という言葉は聞いたことがなくても、知らないうちに「タイパ」を意識して行動していた、なんて方も少なくないと思います。単なる時短に留まらず、かけた時間に対する成果を重視する「タイパ」。自身にとって「タイパ」が良いかどうかを判断するには、自分の軸を持つことが大切です。
必要な情報を選び取るリテラシーを、そして自分の判断軸を養うためにも、時には「タイパ」を度外視して、生の情報に触れたり、現地に訪れたりと、自分で「体験」してみることも意識してみてはいかがでしょうか。