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2021.10.20INTERVIEW

ベンチャー企業が勝ち上がっていくカギは「広報」だ。ベンチャー広報・代表のキャリアが体現する「100万分の1の希少性」。

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
株式会社ベンチャー広報  代表取締役 野澤 直人(のざわ なおひと) 様

業界でも珍しいスタートアップやベンチャー企業を専門にしたPR会社として、これまでに400社以上の広報支援活動を手掛けてきたベンチャー広報。「PR会社は大手企業だけのものではない」という視点に立ち、社会性と成長力を兼ね備えた企業を発掘し、その価値を世の中に伝えることを企業理念にしています。今回はベンチャー広報の代表取締役でもある野澤さんにお話を伺いました。自身のこれまでのご経歴や、ベンチャー企業への広報支援のプロフェッショナルの立場から、キャリアを築く上でのヒントや、広報に求められる役割について迫っていきます。


~プロフィール~
大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、当時無名だった海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ毎年100~140件のマスコミ露出を実現。5年で売上10倍という同社の急成長に貢献する。
2010年に日本では珍しいベンチャー企業・スタートアップ専門のPR会社として株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。講演・講師実績も多数。2014年より名証セントレックス上場のIT企業・株式会社ガイアックスの執行役を兼務。

 

やりたいことに夢中で取り組んで身に着けた広報担当としての力。そのキャリア遍歴とは。

―まずはこれまでのご経歴について伺いたいと思います。新卒での就職活動から、自らの手でベンチャー広報を立上げるまで、どのような経験を積まれてきたのでしょうか

新卒での就職活動では経営コンサルティングを手掛けるベンチャー会社の営業職として入社をしました。当時としては珍しく、就職活動をしているときから「いつかは自分の手で会社経営をしたい」と考えていた学生で、起業して経営者になるために修行が出来る環境を求めての入社でしたね。明治大学・政治経済学部を卒業していますが、同級生の多くは都市銀行や商社への就職ばかり。その中でベンチャー企業やスタートアップを希望する私は随分変わり者だったと思います。

なぜベンチャー企業の営業職を選んだのかと言うと、起業家や経営者にとって最も大事な能力が「営業力」であるからです。そうであるなら、経営課題の解決策を提案する経営コンサルティングを手掛ける会社なら、営業力とともに経営についての知識も身に着くと見込んだのです。

その後、3年間にわたってその会社で営業職を経験し、出版社の編集職に転職します。20代の半ばであれば誰しもが通る道かもしれませんが、この頃は将来のキャリアに迷走気味でした。

営業を3年間続けたけれども、ずっとモノやサービスを売るだけで、「本当にやりたい事って何だっけ?」と立ち止まって考えました。そこで子どもの頃に漫画家になりたかったことを思い出したのですが、今から漫画家になることは流石にできないので、それなら雑誌をつくるようなクリエイティブな仕事をしようと思ってマスコミの世界に飛び込みました。

また、営業時代の経験として、どんなに頑張っても売れない商品がある中で、テレビに取り上げられたことをきっかけに、ヒット商品になるケースなどを見たときに、マスコミが持つ力の大きさを感じ、この業界で仕事をしてみたいと思ったことも転職の背景にはありました。

そして、ビジネス誌の編集者として、誌面の企画、取材、編集までを担当していました。月刊誌だったもので、毎月、自分の手掛けた雑誌が店頭に並ぶことにやりがいや楽しさを感じていたものです。

編集業をやっていると、色々なPR会社から自社製品やサービスの取材依頼が引っ切り無しに来るもので、中には電話営業をかけられたこともありました。

マスコミに取り上げられた商品は飛ぶように売れていくことを目の当たりにしていたのです。世の中はマスコミが動かしているとばかり思ってきましたが、「裏側に操る者がいたのか!」「これは一体何なのだ!」と衝撃的でしたね。

そしてまた3年ほどして、広報の仕事に携わることになりました。偶然、知り合いのベンチャー企業の代表に「上場を目指しているから手伝ってほしい」と声をかけられての転職です。

そこで7~8年ほど広報担当として在籍したのですが、転職した当時は、従業員数20名、売上高2億円程度の会社でしたが、5年間で従業員数200名、売上高20億円の企業に成長しました。この成長の背景にあったものこそ「広報」だったのです。

「広報」というと大企業のものと思われる方も多いかもしれません。ですが20名程度の会社であっても、きちんとした広報を手掛けることでこれほど短期間に、5倍もの成長に結び付けることができます。この経験から、ベンチャー企業こそ広報が重要だという気づきに繋がりました。

一方で本屋においてある広報に関してのノウハウ本も、広報担当者向けのセミナーも、すべて大企業向けです。私はここでの経験を通じ、中堅・中小企業、ベンチャー、スタートアップでも広報を成功させるノウハウを身に着けることが出来ました。小さな企業でもマスコミに取材してもらうことで、価値あることを広めることが出来るはずですし、会社も大きく成長させることができるものです。

そうした思いを持って、38歳のときにベンチャー広報を立ち上げました。
 



―なぜ、学生時代から起業をしたいと考えられたのでしょうか

主に三つの理由があってのことでした。

一つ目に、大企業の歯車になることが嫌だったことです。私の父親は町工場の社長で、経営を担っていました。その姿を見て、たとえ小さな会社であってもトップに立ちたいという思いを持っていました。

二つ目に、大企業で働くことのリスクをうっすらと感じ始めていたことです。友人の中には大手銀行に入行して喜んでいる人もいました。確かに銀行のブランドはあるでしょうが、そこで働く人にブランド力があるとは思えず、自分自身に価値を付けないといけないと考えていました。

そして三つ目ですが、これは戦略的というか少し打算的な考えです。たとえ大手金融機関や商社に就職したとしても、幹部へ出世できる人の多くは旧帝大の出身者や、せいぜい私立大でも早慶上智クラスの出身者の場合が多いので、明治大学を卒業した自分としては出世しにくいのではと考えていました。東京大学出身であれば、銀行に入っていたかもしれませんね。

―起業を考えられて新卒ではベンチャー企業に入社されました。その後は子どもの頃の夢から出版社に転職されています。しかし、最終的にはご自身で起業されていますが、「起業する」という野心はこの間、ずっと持ち続けられたのでしょうか

その時その時、やりたいことというのは色々あるものです。確かにマスコミに行きたいと思った時期もありましたが、一貫して起業をしたいという思いは持ち続けていましたね。

今は違うと考えていますが、当時は起業をしたのであれば、生涯その会社を経営し続けなければいけないものだと考えており、だからこそ、本当にやりたいことを見つけるまでは起業しないようにしていました。ベンチャー広報を立ち上げたのは、独自のポジションであるこの事業であれば一生続けていけると思ってのことです。

―本当にやりたいことを見つけるまで起業しない、というのは印象的です。一方で、最近は自分のやりたいことが分からない、見つからないという方もいます。そこまで強い思いを持てる背景には何があるのでしょうか

私の場合はちょっと特殊な事情があってのことかもしれません。実は20代前半に難病を患ってしまい、医者から「もうすぐ死ぬかもしれない」と言われたことがありました。肺の病気だったのですが、世界的に症例が少なく、治療方法も確立していなかったような状況でした。

医者から言われたことはタバコを止めるようにということだけで、止めたとしても症状が悪化するかもしれないと言われました。「これまでダラダラと生きてきたけれど、ここで死んでしまうのか」と考えたとき、もちろんこれで死にたくはなかったし、やりたいことをやり切って後悔のない人生にしたいと考えたのです。


弱者を強者にするロマンがベンチャー企業の広報にはある。広報を武器に大企業に勝つには。

―ベンチャー広報を立ち上げられましたが、大手企業とは違う、中堅・中小、ベンチャー、スタートアップの広報ならではの面白さはどこにあるのでしょうか

星野 仙一さんが阪神タイガースの監督を引き受けた際の「弱者を強者にするっていうこんなロマンはないね」という言葉が大好きなのですよね。巨人キラーと呼ばれ阪神を優勝に導いた他、弱小球団であった東北楽天ゴールデンイーグルスを日本一にしたことの面白さや、やりがい。個人的にはこれと似たものだと感じています。

大企業は強者の部類に入ると思いますが、そうではない弱者であるベンチャー企業をどうやって勝たせていくのか、その戦略を練り、実行していくことが本当に面白いですね。そして、広報はその「武器」になるものです。

―広報が「武器」になるとは、どのような意味でしょうか

中堅・中小、ベンチャー、スタートアップの広報は「マスコミ広報」です。大企業はお金さえ払えば広告を出すことが出来ますが、そうはいきません。お金をかけずに、CMを流さずに自社をPRするためにはマスコミに報道してもらうことです。そして、戦略的な広報があればそれを実現することが出来ます。だから、広報が「武器」になるのです。

―一方でその武器を手にしても生かせない企業もあると思います。独自の技術を持つ中小企業や、独自のサービスを持つベンチャー企業は良いですが、そうではない会社もありそうです

その通りです。世界に誇る技術を持つ会社もあれば、失礼ながらPRするところが何もない会社もあります。私たちが支援するのはその中間にあるポテンシャルのある会社です。

独自の技術や目新しいサービスを持つ会社であれば、黙っていてもマスコミは取材します。一方で、実は良いものを持っているのに埋もれてしまっている会社は、それをうまくPRしなければ取材されません。

私たちはそうしたポテンシャルのある会社を磨き、取材される会社にしていくことを支援していきます。

当然、PRするところのない会社からの依頼はお断りすることもあります。
 


―ポテンシャルのある会社を磨くには具体的にどのような方法をとるのでしょうか

会社そのものなのか、商品なのか、サービスなのか、会社によって魅力が隠れているところは様々です。私たちはマスコミの視点をもった第三者としてその魅力を見つけていきます。それはマスコミが取材したくなるようなものでなければなりませんが、マスコミの気持ちのわかる広報でなければ見つけることはできません。

―PR活動においてパワーを持つのは、やはりマスコミなのでしょうか。近年ではSNSも無視できないように思います

メディアの力はマスメディアからソーシャルメディアへ徐々にシフトしていっていますし、在り様も変わっています。新聞はデジタル化が進み、雑誌コンテンツはInstagramに、テレビはYouTube、報道関連はFacebookやTwitterでもチェックできるようになっています。ソーシャルメディアの力は非常に大きくなっていますね。

たしかにマスメディアの力は、まだまだ大きいものですが、これからはソーシャルメディアを通じたPRも広報としては身に付けなければならない知識ですね。


「足」と「手」と「頭」。三つ揃って初めて本物の広報に。夢中で仕事をしたから100万分の1の希少性ある人材になれた。


―20代の求職者の方にも広報の仕事に興味を持たれている方もいると思います。求められるスキルは何でしょうか 

やはり今はSNSを駆使した広報についての知識を持つことが重要だと思います。一例を挙げると、プログラミングスクール「テックキャンプ」の代表を務める「マコなり社長」のYouTubeはチャンネル登録数100万人を超えています。まさに最先端の広報で、これが少しずつスタンダードになっていくのだと思います。

また、いつの時代も必要な普遍的なスキルとしては、主に三つあり、それぞれ「足」と「手」と「頭」に置き換えることができます。

一つ目は「足」である「コミュニケーション能力」です。そもそも、広報活動そのものが受け手とのコミュニケーション活動ではあるのですが、マスコミ広報をするにあたって、コミュニケーションは必要不可欠です。フットワーク軽く、色々なメディア関係者に会うことも大事な広報活動の一環となります。

二つ目に「手」である「ライティング能力」です。プレスリリースを出すにしても目を引く文章を書けるライディング能力がなければなりません。また、ソーシャルメディアを通じた広報においてはFacebookとTwitterとでトンマナが異なるわけで、そうしたことを踏まえてライティングが出来なければなりません。

そして三つ目に「頭」にあたる「戦略を立てる能力」です。どのような戦略を練って広報を実施するのかは非常に重要です。広報の本質的な役割は経営課題の解決にあります。マーケティングの知識や広報に関しての表面的な知識を持っていたとしても、そもそも経営のことを理解していなければ効果的な広報はできません。

これらの三つの能力が必要になりますが、実はそのような人はなかなかいないのが実情です。

―まさにこの三つの能力をこれまでのキャリアで培ってこられたということですね 

リクルート出身で公立学校の校長を務められた藤原 和博さんという方がいます。藤原さんは「100分の1×100分の1×100分の1=100万分の1の希少性」というキャリアの考え方をされています。

ある分野の仕事で100人に1人の希少性を持ち、次の分野で100人に1人の希少性を持ち、そしてまた次の分野で100人に1人の希少性を持つことが出来れば、100万人に一人の希少性を持つ人材となれるという考え方です。

新卒で入社した会社で経営のことを理解し、出版社ではマスコミのことを理解し、そしてベンチャー企業で広報の知識を身に付けました。スティーブ・ジョブズの「Connecting The Dots」ではないですが、結果としてこれまでのキャリアで広報担当として必要な力を身に付けられたように思います。

この読者である20代の方に伝えたいことは、「努力は夢中には勝てない」と言うことです。「この仕事は将来に役立つことだから嫌でも頑張ろう」と思って努力をしたとしても、夢中でその仕事に取り組んでいる人には負けるものです。

だからこそ、私はやりたいこと以外はやらない生き方をしてきました。夢中になれることだけを見つけて、それに取り組んでほしいと思いますね。
 


―読者の中にはベンチャー広報に興味を持って、採用選考に応募される方もいるかもしれませんが、採用ページに「フリーランスと会社員のいいところどりができる会社」とありました。フルリモートワークなどにも取り組まれています。背景にはどのような意図があるのでしょうか 

これは合理的に考えただけのことです。社長も楽、社員も楽、会社だって儲かる、その三方良しを実現できるのが、「フリーランスと会社員のいいとこどりができる会社」なのだと思ってのことです。

満員電車に揺られて出社をすることは面倒なことですし、通勤に片道1時間かかるとすれば1日2時間、1週間で10時間はかかります。それは1日分の労働時間と同じですよね。そんな無駄なことをするなら、その分仕事をしてほしいと思ってのことです。そもそもPR会社ですから出社が必要な仕事でもありません。

そしてオフィスもないので家賃もかかりません。これもコストカットに繋がり、会社が儲かりますよね。

それから当社ではマネジメントはしていません。会議も原則しません。全員で集まる会議も1ヵ月に1回ほど、それもオンラインで実施します。自分のミッションさえ達成してくれれば自由で良いという考えなので、どこでどのような仕事をしていても特に気にしません。

マネジメントをしないということは、上司にとっても部下にとってもコストカットになります。

―マネジメントをしないというのは画期的ですが、ついつい仕事をしない社員も出てきそうに思ってしまいました

社員数が20名の会社です。スタッフとはコミュニケーションツールを使ってこまめにコミュニケーションを取るようにしていますので、すぐに相談できる環境はつくっています。

また、企業の広報としてPRを担う私たちはプロフェッショナルです。担当する企業の広報を、いわば個人事業主のような形で請け負い、ミッションを達成しなければなりません。そうした集団だからこそ、あまり心配はしていませんね。

そもそも、普通の会社でこのようなことが出来ないのは、社長の器が小さいからではないかと思っています。社員に任せず管理を徹底するのは、部下のためを思っているのではなく、自分の保身に過ぎません。

社員を任せて信じればいいのです。うまくいけばその社員の手柄ですし、失敗をすれば社長が謝ればいい。そもそも優秀な社員ほど、こまめに進捗を確認されてはやる気を失うものです。会議も同様で、その分、仕事をさせたらいいのだと思います。

 




株式会社ベンチャー広報
2010年創業。業界でも珍しい中堅・中小、ベンチャー、スタートアップ企業を専門にしたPR会社として、これまでに400社以上の広報支援の実績を持つ。「ベンチャー企業こそ知名度を上げるために広報の力が必要にもかかわらず、従来のPR会社の契約料金は高すぎる」という問題意識の下、社会性・成長力を兼ね備えた未上場企業を発掘し、その価値を世の中に伝え続けてきた。そのノウハウを活かし、現在は広報担当育成のためのオンラインサロンやセミナーなども開催している。

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この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.

1991年12月生まれ。
新卒で大手新聞社に入社。記者として取材・記事の執筆を経験後、Webサービスを手掛ける企業に転職。約20名のメンバーのマネジメントの傍ら、Webサイトの開発・サイトの集客プロモーション・取材やライティングを幅広く担当。20代の働き方研究所では、企業へのインタビュー取材・取材記事執筆を担っている。
#カスタマーサクセス #コンテンツディレクション #イベントプロモーション #仕事終わりの晩酌が日課

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