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2022.02.16INTERVIEW

新入社員は入社後標準2年で店長へ——第二創業期を掲げる良品計画の“店舗で育つ人材育成”から学ぶマネジメント力の磨き方

株式会社良品計画 人事総務部 組織・人材開発課 澤部 佳奈(さわべ かな)様

「無印良品(MUJI)」の小売店舗・商品開発から製造・販売まで手掛ける良品計画。2021年7月には中期経営計画を発表し、「第二創業」を掲げ新たなスタートを切った同社で、主に新卒採用を担当する人事総務部の澤部さんにお話を伺いました。良品計画が見据える未来と、その未来を担う若手人材に求めることとは。

 

店舗でのマネジメント経験を経て、学生時代の夢を実現

—澤部さんは2013年に新卒で入社されたとのことですが、現在までのご経歴を伺えますか

入社後はまず、神奈川県にある複合商業施設内の無印良品の店舗に配属されました。その後、3つの店舗を経て、2017年に神奈川県にある大型ショッピングセンター内の店舗で店長職へ。そこからさらに3店舗で店長職としてマネジメントを経験しました。
2020年9月に人事総務部 組織・人材開発課に配属となり、現在は主に新卒採用業務を担当しています。


—良品計画へ入社するきっかけはどのようなものだったのでしょう

入社理由は大きく2つあります。1つは、早期からマネジメントを経験できる環境に魅力を感じたためです。良品計画では、まず店舗業務を経験し、早くから店長職として責任あるポジションを任せたいと考えています。もともと学生時代からリーダーとして人をまとめる経験を多くしており、組織運営にも関心がありました。学生時代にはマスコミ系サークルのリーダーポジションやゼミナール連合の立ち上げなどにも進んで手を挙げるなど、メンバーの士気を高めながら、何か一つのことを達成することに興味があったのだと思います。

もう1つは、人と接しながら商品・サービスのマッチングを支援するような働き方ができると考えたためです。もともと就活時は小売業ではなく、人材業界を中心に見ていました。友人同士を紹介することで、交友関係が広がっていくことに喜びを感じたことから、自分が関わることで相手のキャリア形成に貢献する仕事ができれば、と思うようになりました。
ただ、人材業界で触れ合うのは学生や求職者がメイン。理想の働き方を考える中で、特定の層だけなく、不特定多数のお客様と触れ合い、求められている商品・サービスをご紹介する方が自分に合っているのではないかという思いの方が強くなっていきました。
そんな時に良品計画の選考に参加して、「早期にマネジメントを経験できる環境」と「求めている働き方」の両方がつながったんです。ここでなら理想のかたちを実現できると考え、入社を決めました。


―無印良品といえば、豊かな商品ラインナップや、そこに通底するビジョンが特徴だと思います。そうした理念に共感を覚えて志望される方が多いのかなと思っていたのですが、澤部さんは少し違ったのですね。

正直に申し上げると、入社するまでは自社商品に対する根強いファンではなかったんです(笑)。私の場合は、まず働き方や環境が志望するきっかけでしたね。ただ、意外と私以外の新卒入社社員でも、小売業は当社しか受けていなかったという人もいて驚いたことを覚えています。業界という括りに縛られず、自分のやりたい事が何なのかを考えて、広い視野で就職活動をしていくと、より自己実現が出来る企業に出会えるのではないかと思います。
当社では「キャリア宣言」というかたちで半期に一度、自分の目指すキャリアや実現したいことを申告する制度があります。私もその制度を利用して、現部署への異動希望を出しました。
店長として店舗運営やマネジメント業務を経験し、現在は人事としてもともと志望していた人材のマッチングに携われているのは、少し大げさですが夢が叶ったという感じです。


利益と社会貢献性を、同じ温度感で追及する

―そうしたキャリアの一歩目にあるのが店舗ということですね。採用サイトでも「すべての起点は店舗にある」と掲げておられます。それだけ店舗での経験を重視されるのはなぜなのでしょう

私たちは店舗を、物を買う場所としてだけではなく、人や地域と繋がるコミュニティセンターのような場所としても運営していきたいと考えています。2020年7月には当社の中期経営計画で二つの使命を公表しました。

一つ目の使命である「誠実な品質と倫理的な意味」を備えながら、「誰もが手に取りやすい適正な価格」で提供すること。これは一般的に小売業を生業とする企業の根幹ともいえます。そして二つ目の使命が、「地域のコミュニティセンター」として、「地域課題に取り組み、地域への良いインパクト」を実現することです。
商品・サービスを提供する場所でありながら、地域のコミュニティセンターの役割を担い、地域活性にも貢献する。この二つの使命を実現させていくことが、私たちのミッションです。そして重要なのは、この二つを同じ温度感で追求していくということです。
私たちの取り組みは、商いと切り離された慈善活動ではなく、かといって利益だけを目的した事業活動でもありません。その両方を実現していくための場として店舗があるのだと捉えています。
お客様や地域の生活者の役に立ち、その結果として売上や利益に還元されていく。そうやって良い循環を生んでいきながら、長期的な企業価値の向上に努めていくことを目指しています。


―なるほど。郊外への出店が加速すれば、無印良品の打ち出す「感じ良い暮らし」が今後、都市部だけではなく全国で営めるようになりますね

はい。その「感じ良い」は、「豊かさ」を私たちなりに言い換えた言葉です。物質的または量的な豊かさではなく、「ちょうどいい」を良しとするような精神的な豊かさを示しています。
無印良品は創業当初から「実質本位のものづくり」を大事にしてきました。商品本来の質に関係のない無駄を省き、本当に必要な部分をかたちにすれば、もの本来の適正な価格で売り出すことができる。そうした飾らないものづくりの姿勢が、創業当初から続く無印良品のアイデンティティなのだと考えています。
これまでは都市部を中心に店舗展開してきた流れがあったのですが、現在は全国津々浦々でさらに出店を拡大し、日本に限らず地球規模での「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指しています。


店舗は、「周りを巻き込み成果を上げる」スキルが獲得できる場所

― そうした出店戦略を支えるためにも人材の育成は欠かせません。良品計画は入社後標準2年で店長職を任せるというスピード感で成長を目指す仕組みづくりをされています。早期から若手に責任あるポジションを与えようとする意図を教えてください

当社には「3年目店長プロジェクト」という、店長に必要なスキル、スタンスを身につけるための1年間の育成プログラムがあります。入社後標準2年で店長職を任せたいとはいえ、成長スピードは当然、本人の能力や意欲によっても異なります。2年経ったら店長になれる訳ではなく、2年というのを一つの目安としながら、それぞれの成長速度に合わせた育成を心掛けています。今は入社後1年半で店長として活躍している人も増えてきています。

いずれにせよそこには、早期から店舗経営者という立場を通じて「周りを巻き込んで成果を上げる」マネジメントスキルを身につけてほしいという考えがあります。店長は店舗の経営者であり、最終責任者です。毎日立場の異なる多くの人と接し、さまざまな判断を下しながら成果を上げるという経験からは、実に多くのことが学べます。そこで身につけたスキルは、店長職を継続する場合も、私のように別のキャリアを歩む場合でも、必ずその後の成長を大きく後押しするものになると考えています。

もともと「失敗を恐れない」という風土もあります。先輩方に何かを相談した際も「まずはやってみよう」という言葉が頻繁に返ってきます。失敗を顧みず、挑戦する姿勢を大事にするという風土が全体にあり、それを支えてくれる雰囲気があるので、臆することなくチャレンジできているという声は社内でもよく聴きます。そうした環境だからこそ、店舗経営についても、ベテランに任せるより、少々経験が浅かったとしても意欲のある若手にこそ任せるという仕組みにもつながっているのかなと思います。


―そうした社風について、このたびの新社長就任にともなって変化を感じられる部分もありますか

そうですね。今回新たに「第二創業期」と銘打ってから、そうした姿勢がよりいっそう加速しているなと思います。当社では今後、20代での執行役員登用の可能性もあるキャリアパスを考えており、新たな取り組みも意欲ある若手にどんどん任せていきたいという気風が強まってきているのを感じます。


―より主体的に動く姿勢が求められているのですね。そうしたスキルや視点を養うためには、どのようなことに意識すればよいでしょうか

当社に限ったことではないと思うのですが、20代などの若手のうちに身につけてほしいことは大きく3点あります。
まずは「行動力」です。主体性をもって動き、意志をもって「やる」と決めたことをちゃんと実行するということです。
2つ目が「思考力」です。例えば店舗を例に挙げると、お客様からご愛顧いただいた結果として現れる売上という数字上での成果を管理し、それらを分析して課題を発見するための思考力も重要になってくると思います。
3つ目は「協働力」です。周囲を巻き込み協業して仕事を進めるためには、自分の意見やしてほしいことを正しく相手に伝え、相手の意見にも耳を傾けて真意を正確にとらえなければなりません。
そしてこの3つの力はそれぞれ独立しているのではなく、互いに作用し合いながら日々高められていくようなものだと思います。


“らしさ”を知ってもらうまでの難しさとやりがい

―そうした力の習得をサポートしながら、会社の理念を浸透させていくのは大変ではないですか

私たちの場合、理念の浸透については、そこまで難しいことではないと思っています。というのも、当社に入社する方の多くは、すでに無印良品の掲げるビジョンやコンセプトに共感してくれている方が非常に多いと感じるためです。そのため、入社後に大きな齟齬を感じたことはありません。
ただ、初めて当社を知った学生の方と話すときは、やはり難しさを感じます。当社の製品・サービスはいずれも、ビジョンやバリューにもとづいて商品化されており、明確に理念が先行して存在しています。しかし、その理念の意味するところを言葉で伝えるのは簡単ではありません。
説明会ではそれを学生の方々に対し話すのですが、伝えたいことが伝わり切らなかったり、違うニュアンスでとらえられてしまったりもしばしば。そうした反応を持ち帰っては、社内で共有し、「どのようにするのが最適な伝え方なのか」と話し合いをするなど、日々改善を続けています。

そうした難しさは、社外のパートナーの方と仕事する時にも感じます。例えば、当社では商品や店舗の様子を見せる際に「整然さ」を重視するようにしているのですが、採用サイトの掲載用にパートナー会社様に選定いただいた写真は、その「整然さ」が感じられないものばかりだった、ということがありました。写真一つとっても、無印良品としてどうあるべきか、私たちは感覚的に理解できるのですが、そうした“らしさ”を社外の方に理解していただくのは思いのほか難しいのだなと、その時気づかされましたね。


―強い理念を打ち立てている企業ということは広く知られている一方で、その理念からくる“らしさ”まで理解してもらうことはやはり難しいのですね

そうなんです。ただ、そうした課題を前にしたときはいつも「どうすれば解決できるだろう」と考えるようにしていますね。
どんな逆境にあっても前向きに考えられるのは、新たな挑戦をしている人たちが周囲にたくさんいるということと関係していると思います。店長として店舗で活躍する社員や、私のように別のキャリアを選ぶ社員もいれば、海外へ活躍の場所を求める社員もいます。そうした挑戦を目の当たりにするたび、「いくつになっても挑戦だな」と日々奮い立たされます。


社会の役に立つというスケールの大きな「目的」を大事にできる人と働きたい

―そうした挑戦の姿勢をもとに「第二創業」という新たなフェーズを迎えられました。その「創業メンバー」の募集を通年採用で実施されるとのことですが、背景にはどのような想いがあるのでしょうか

当社は2021年9月から通年採用を開始しています。一番にはやはり我々のビジョンや使命に共感していただける方に、いつでも会いたいという想いがあります。
今まで新卒採用においては、一括採用というかたちで期間を区切って採用活動を行っていたのですが、それでは当然出会える人に限りが出てしまいます。
学生側の多くも私たちと同様、限られた期間の中で企業と出会い、キャリアを選択しなければいけない。それは正直、かなり難しいことだと、私自身も就職活動を通じて感じていました。
ご自身のキャリアの選択はご自身のタイミングで行っていただきたいですし、私たちもそのような方々にお応えできるよう、率先して新しい採用活動に挑戦していきたいと思っています。


― なるほど。第二創業にまつわるビジョンには「郊外での出店戦略」もあり、2024年までに年間100店舗純増のペースを目指されています。これは言い換えると、1年で100名の店長を育成する必要があるということになりますが、その人材を獲得する狙いもあるのでしょうか

そうですね。やはり中期経営計画でも掲げている「地域密着型の事業モデル」を実現させるためには全国で店舗出店を加速させ、「地域への土着化」を進めていく必要があります。その分、必要な人員を獲得し、各店舗の経営者として育て上げていかなければなりません。

私たちの目指す「感じ良い暮らしと社会の実現」は決して簡単なものではありません。しかし、それに向かって様々なハードルを越えていくのもまた一つの挑戦だと考えています。
高いハードルを下から見上げるとつい怯んでしまうかもしれません。しかし、視点を変えると、なにをどのような手順で進めればよいかなど具体的な解決法が見いだせると思います。そうした「バックキャスト思考」、つまり現在から未来を考えるのではなく、「未来のあるべき姿」からそこへどのように到達するかという考え方が、社内でも浸透するようになってきました。未来から現在すべきことを逆算しながら、関わっている全員がスピード感をもって進めていく。そうすれば目指すビジョンに近づいていくスピードも速くなっていくのではないかと考えています。


―そのように採用活動を進め、最終的に一緒に働きたい人材とはどのような方なのでしょうか

まず前提として、社会や人の役に立ちたいという志のある方を求めています。そしてその実現のために、商いやサービスの提供をしたいと考える方と働きたいと考えています。初めに社会や人の役に立ちたいという想いがあり、それを実現する手法として商品やサービスがある。その順番が逆ではないという点が重要ですね。
逆に手段ありき、つまり小売業で働きたいという地点からスタートしてしまうと、目標が狭まってしまいます。そうではなく、社会の役に立つというスケールの大きな目的から始めれば、その後の行動やアイデアの幅もずっと広がっていくのではないかと思います。私たちも「無印良品」事業のほかに、「MUJI HOTEL」で宿泊事業や「Café&Meal MUJI」で飲食事業もやっていたりと、多様な事業を展開しています。それは目的=理念にもとづいていれば、手段=小売業に縛られる必要はないと考えているからだと思います。
初めに目標を高く持っておくと、実現できる幅もすごく広がっていく。良品計画は、社会や人の役に立つという志を強く、高く持ちながら、手段にとらわれることなくビジョンを実現していける方々に入社いただき、活躍してほしいと考えています。

株式会社良品計画
日々のくらしを支える「無印良品」の小売店舗・商品開発から製造・販売まで手掛ける。現在、国内外に1000店舗以上を展開。近年では、中山間地などを中心に地域住民との交流を図ることを目的とした無印良品の商品の「移動販売」、プラスチックごみの低減を図るため、給水サービスや自分で詰められるボトルを販売する「水プロジェクト」など、「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指し幅広い取り組みを推進している。
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