2022.12.14INTERVIEW
決断経験を積ませ、若手社員の能力を開花させる。サイバーエージェントの成長を支える「YMCA」に迫る
20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
株式会社AI Shift
代表取締役社長 米山 結人(よねやま ゆうと)様
1998年創立以降、6,000名を超える社員数を擁する会社に成長しているサイバーエージェント。その内の約4割を20代が占め、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」のパーパスの通り、ABEMA(旧称AbemaTV)をはじめ革新的なサービスを世に届けています。今回は、若手社員の活躍が目覚ましいサイバーエージェントで、全社横断型の若手育成プロジェクト「YMCA」の理事であり、子会社の株式会社AI Shiftで代表取締役を務める米山さんにお話を伺いました。YMCAの狙いや内容はもちろん、20代で活躍される米山さんの仕事観、読者へのメッセージなどもお話いただきました。
大学時代に様々なスタートアップやベンチャー企業で働いており、その中で新規事業の立ち上げや経営に興味を持つようになり、自分も挑戦したいと思うようになりました。そこで就職活動ではそうしたチャンスにあふれ、若いころからチャレンジできる会社を探し、いくつか出会った企業の中で一番自分に響いた会社がサイバーエージェントだったんです。
―どんなところが米山さんに響いた点だったのでしょう
近年では代表の藤田がABEMAに大きく投資をし、トップ自ら新しい事業に挑戦しているように、社員のチャレンジを推奨し、承認をしてくれる環境・文化がある点でした。それに加え、若手社員でもチャレンジできる機会が非常に多いことも響きました。
―そもそも学生時代からスタートアップやベンチャーで働こうと思われたのはどんな理由からなのでしょうか
たまたま大学時代に藤田の「渋谷ではたらく社長の告白」という本を読んでいたんです(笑)。そこから経営者や事業家に憧れを持つようになりました。また、経営学部に在籍していましたが講義を受けるだけではその憧れに近づけているような実感がなく、そこからインターンシップで働くようになりました。
―現在は株式会社AI Shiftの代表取締役でいらっしゃいますが、どんな経緯で代表に就任したのでしょうか
入社1年目(2016年)の12月ごろから開始したチャットボットの事業がスタートとなっています。3年ほど経った2019年に、たまたま藤田と話をする機会があり、AI領域という可能性のある事業であることから子会社化し、社長として事業をやってみないかと声をかけられて会社設立に至りました。
―AI Shiftとしてはどのような事業を展開されているのですか
「対話型AI」を開発し、BtoB事業として様々な企業にプロダクトを提供しています。チャットボットやボイスボットを開発し、多くの企業に提供することで、人だからこそ提供できる価値や、人にしかできない仕事により多くの時間を割けるような人がすべきことに集中できる世の中を実現したいと考えています。
まず、「YMCA」という名称ですが、「Young Man CyberAgent(ヤングマンサイバーエジェント)」の頭文字をとっています(笑)。20代社員のトップラインの引き上げを目的にスタートしました。2016年の発足ですので現在は7期目です。毎年4月にプロジェクトが始まり、翌年3月に終了します。運営メンバーは発足当初は10名程度でしたが、今では50名以上で運営しています。理事や運営に携わるメンバーは毎年代わりますが、その理事の下で活動内容をブラッシュアップしています。
なお、運営メンバーは理事と副理事がリーダーとなる社員を選んだ後、その年のYMCAの施策に合わせて最適なメンバーをリーダーから提案を受けて決定しています。
―「YMCA」発足の背景を教えてください
来年3月で創業から25年を迎えるサイバーエージェントですが、従業員数は正社員で6,000名を超え、有期雇用の社員を含めると1万名を超える大きな組織に成長しました。組織が大きくなる一方で、若手社員の活躍が見えづらくなったり、強みである若手のモチベーションの高さを維持しづらくなったり、役員との距離が遠くなり優秀な若手社員を発掘しづらくなったといった課題が見えてきました。そうした課題を解決し、若手社員のトップライン引き上げを実現するために発足しました。
―具体的にはどんな活動をされているのでしょう
活動内容は非常に多岐にわたっています。発足時から続いている取り組みもあれば、今年からの施策もありますが、代表的なものをご紹介したいと思います。特にここ数年力を入れているのが、「BREAK8(ブレイクエイト)」という取り組みです。
これは次世代幹部候補の“発掘”と“覚醒”を目的とし、各事業部で活躍している入社4年目までの若手社員を推薦形式で18名ほど選出し、年間を通して育成していくというプロジェクトです。私自身も※BREAK8の1期目に参加していました。(※当時の名称は、YM18)
具体的には月1回のプロジェクトで、役員が考えたテーマに対し18名の若手社員で考えて一人ずつアウトプットするという内容になっています。それに対し、役員が点数をつけてフィードバックしていき、年度末に年間のランキングを発表するようになっているのです。
―役員が出すテーマとはどんなものがあるのでしょうか
内容は様々です。例えば「今後のキャリアプラン」、「自部署の3年後の経営戦略」、「ABEMAの改善案」、「10年後のサイバーエージェントの理想像」など、お題の内容は多岐にわたります。これらのお題を通して、これまで以上に自分自身と会社を理解し、双方のビジョンをリンクしてもらえるような内容にしています。
―役員から指導を受けられるとなると、学びも大きそうですね
私も1期生として参加していましたが、本当にたくさんの学びがありました。特に普段の仕事では考えることのないレベルの高さや時間軸の内容をアウトプットする必要があったため、自ずと視点や視野が広がったと感じています。そして、この視点の高さを若手の頃から持つことがどれほど重要なのか、今になってよくわかります。
また、役員との距離が縮まることも学習機会として重要です。テーマに関して様々な質問もできますし、コロナ禍でもオンラインの懇親会もあるのでフランクに会話でき、より関係性を深めることができます。どういった想いで会社を経営しているのか、どれくらい難しい仕事にチャレンジしているのか、そういったことが分かります。そうすると、今の自分と役員との差を肌で感じられ、その乖離を埋めるためにどんな行動をすればいいのかも見えてきます。
―6,000名を超える社員の内、約4割が20代社員という中で、どのように選出しているのでしょう
個人的には大きく3つのポイントがあると考えています。まず1つ目に今の仕事で成果を上げているということ。2つ目に自分の部署やチームに貢献するような新しいチャレンジに取り組んでいること。そして3つ目に既に全社視点を持っていること。過去に選出された方を見るとそのような傾向があるように思います。特に1つ目の成果を上げていることは大前提だと思います。自分の本業においてきちんとミッションを達成していなければ、そもそも推薦される可能性は低いですし、何よりメンバーに選出されたとしてもやり遂げることはできないと思います。
このポイントはYMCA全てに共通することですが、BREAK8に限っては事業部の人事から推薦が上がってきた後に、近しい社員からも評価を聞くなどして慎重に選出を行っています。
―BREAK8はじめ、YMCAが取り組んでいる施策に選ばれた社員の皆さんはどのような反応でしょうか
ほとんどの社員が「やりたいです!」というポジティブな反応を示していますし、それだけ期待されていることが分かるので、非常に喜んでくれています。また、これまでに選ばれた先輩社員が子会社の社長や執行役員になるなど、YMCAを通してチャンスをつかんでいる事例も数多くあります。それを目の当たりにしていますので、前向きに捉えてくれていますね。
―BREAK8以外のプログラムにはどんなものがあるのでしょうか
その他の取り組みとしては「ピカログ」というものがあります。BREAK8はトップラインを引き上げる取り組みですが、ピカログは各部署で活躍する若手社員を発掘する取り組みです。
3ヶ月に1度、全社員から周囲で活躍している若手社員の推薦を募り、その中から10名ほどを選出し、毎回参加社員を決めています。一人ひとりに「MY IR」というものを作成してもらい、自分の過去・現在・未来を、藤田を含めた役員の前で発表する取り組みとなっています。
周囲から活躍を認められている社員の人物性、現在取り組んでいる仕事とその成果、この先挑戦してみたいことを役員の前で発表できるので、これまで経営陣との接触機会が少なかったとしても、ピカログで自分をアピールすることができます。
この取り組みにおいては、自分の人となりは勿論、これから挑戦したいことを役員に認知してもらえるということが大きなポイントです。過去には新規事業を立ち上げる際に、「この間のピカログで発表していた社員がやりたがっていたね」という話が上がり、抜擢されるということがありました。
―その他で代表的な取り組みがあれば教えてください
発足初期から続いている取り組みのひとつとして「YMCAあした会議」があります。サイバーエージェント全社の取り組みとして、「あした会議」というサイバーエージェントの“あした(未来)”に繋がる新規事業や課題解決の方法を提案、決議する会議があり、その若手版が「YMCAあした会議」です。「あした会議」では、チームリーダーを務める役員がドラフトで選出された社員とチームを組み、代表の藤田が審査をしてその得点を競います。
「YMCAあした会議」も同じように藤田が審査員となりますが、4年目以下からリーダーが選ばれ、そのリーダーが同じように4年目以下の社員をドラフトし、会社の課題解決や組織活性化に資する施策を提案するようになっています。決議されたものについては責任をもって実行していくことがセットになっており、そこにはYMCAが伴走するようになっています。なお、ピカログをはじめYMCA取り組む施策の多くが、この「YMCAあした会議」を通じて、若手社員から立案されたものです。
理事は前任の理事が後継を指名する形で選ばれます。2年目くらいからYMCAに携わってきたことに加え、前期では副理事をしていましたので選んでいただきました。
―その年ごとに新しい取り組みをされているそうですが、米山さんはどんなことに取り組まれているのでしょうか
6期目からYMCAのスローガンとして「若手を、楽しもう。」を掲げています。サイバーエージェントの会社としてのスローガン「会社を、楽しもう。」ともリンクさせ、挑戦する若手社員が生き生きと働ける状態を作っていこうと考えています。
その上で7期目としては「抜擢」をよりアップデートしていこうと思っています。組織の規模が年々大きくなるにつれて抜擢されている若手社員が見えづらくなっているという課題が起きています。実際には様々な場面で若手社員が抜擢されて活躍していたり、マネージャーに昇進している数が増えているにもかかわらず、目立たなくなっているのです。
そこで、もっと見える化を進めるために、関係者と様々なディスカッションをしています。抜擢された方にインタビューして発信をするということはもちろん、そもそもマネージャーに昇進している若手が年々増えている事実すら知らない人もいる現状がありますので、定期的な情報収集・発信とともに、抜擢された後にどんな風に活躍しているのかということもオープンにしていきたいと思っています。
サイバーエージェントでは「決断経験を積ませる」というワードが社内で飛び交っています。自分自身で決断をすると、その結果が成功であれ失敗であれ、必ず結果として返ってくるため、そこから得られる学びは非常に多いものとなります。
決断をすることは、その時点では成否が分からないのでリスクもありますが、自分で決断すると、成功させないといけないという責任が生じます。そうすると、あらゆることを自分事化して認識できるようになり、当事者意識の輪が広がっていくのです。
さらに、その責任感は、今の自分以上の能力を発揮させることにも繋がります。その事業にもっと詳しくなるための勉強や、色々な人を巻き込む努力、自分のスキルアップに励む必要が出てくるからです。もちろん、結果が出た後の内省も大切です。失敗の結果に終わったとしても何が原因で、何をすれば良かったのかを考えることで新たな気づきも得られます。
サイバーエージェントでは、こうした抜擢→決断→失敗→学習というサイクルが全社に浸透しており、自ら決断することが良いことだというカルチャーが形成されていますし、実際に役員はもちろん先輩・上司もそのプロセスで成長してきています。
―そうした機会が与えられるだけではなく、自らそうした機会に飛び込むこともあるのでしょうか
その通りです。与えられた目標だけをクリアしていても、なぜその目標が立てられたのか判然としないこともあると思いますし、背景が分からなければ目標達成した先に何が得られるのか分からないこともあると思います。一方で、自分で決めればその結果にも納得いきますし、目標の意義を理解していれば、努力を重ねるエネルギーになると思うのです。
―ここまで様々なお話を聞かせていただきありがとうございます。決断することによって責任感が生じるとのことですが、常に成功に向けて意識し挑戦し続けることは並大抵のことではないと思います。どのようにすればその姿勢を保ち続けることができるのか、20代の読者へのメッセージをお願いします
役員との対話の中で、自分自身も含めて意識していることが3つあります。1つは常に高い目標を掲げることです。これが一番大事であり、一番難しいことです。結局、掲げた目標以上のことを実現することはできませんし、結果として達成できなかったとしても、9割達成できればそれはそれで大きな成果になると思っています。
また、大きな目標を持ち掲げることは、多くの人を動かす力も持っています。その目標が持つ意義を明確に伝えることで、自分よりも優秀な人をそのプロジェクトに巻き込むことができると思います。
2つ目はスキルよりも成果にこだわるということです。特に若い内は自分のスキルをどのようにして身に付けるのかということに意識が向きがちです。それよりも今の自分の状況で成果を最大化するにはどうすべきかにこだわることが大切です。仮にスキルが足りないと感じるのであれば、何のスキルが必要なのかを明確にし、成果の出る確率の高いスキルを身に付けるべきです。場合によっては、自分が身に付けなくとも協力者を見つければ良いケースもあるかもしれません。闇雲にスキルを身に付けることが目的になってしまいせっかく時間をかけても成果に結びつかないことが最ももったいないと思います。
そして3つ目は自分の強みを認識し、そこで勝負するということです。当社の役員は個性派揃いだと思いますが、自分の強みをよく理解し、伸ばし、生かすことで会社に貢献するという視点に立っているからこそだと思います。強みというのは言い換えると、他人と比べて少ない努力・労力で成果を上げられるものです。相対的に自分の強みが何かを発見し、それを武器にすることが重要だと思います。
株式会社サイバーエージェント
1998年3月18日設立。2021年に制定したパーパス「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」のもと自ら変化し続け、多様な事業を通じて新たな価値を生み出すとともに独自のカルチャーを形成し、持続的な成長を続けている。現在は、ABEMAに代表されるメディア事業の他、インターネット広告、ゲーム、スタートアップ(新規事業)、AI、DXと幅広い事業を展開。
代表取締役社長 米山 結人(よねやま ゆうと)様
1998年創立以降、6,000名を超える社員数を擁する会社に成長しているサイバーエージェント。その内の約4割を20代が占め、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」のパーパスの通り、ABEMA(旧称AbemaTV)をはじめ革新的なサービスを世に届けています。今回は、若手社員の活躍が目覚ましいサイバーエージェントで、全社横断型の若手育成プロジェクト「YMCA」の理事であり、子会社の株式会社AI Shiftで代表取締役を務める米山さんにお話を伺いました。YMCAの狙いや内容はもちろん、20代で活躍される米山さんの仕事観、読者へのメッセージなどもお話いただきました。
新規事業の立ち上げや経営を担いたい。その想いでサイバーエージェントへ
―はじめに米山さんのご経歴について伺います。サイバーエージェントにはどのような経緯で入社されたのでしょうか大学時代に様々なスタートアップやベンチャー企業で働いており、その中で新規事業の立ち上げや経営に興味を持つようになり、自分も挑戦したいと思うようになりました。そこで就職活動ではそうしたチャンスにあふれ、若いころからチャレンジできる会社を探し、いくつか出会った企業の中で一番自分に響いた会社がサイバーエージェントだったんです。
―どんなところが米山さんに響いた点だったのでしょう
近年では代表の藤田がABEMAに大きく投資をし、トップ自ら新しい事業に挑戦しているように、社員のチャレンジを推奨し、承認をしてくれる環境・文化がある点でした。それに加え、若手社員でもチャレンジできる機会が非常に多いことも響きました。
―そもそも学生時代からスタートアップやベンチャーで働こうと思われたのはどんな理由からなのでしょうか
たまたま大学時代に藤田の「渋谷ではたらく社長の告白」という本を読んでいたんです(笑)。そこから経営者や事業家に憧れを持つようになりました。また、経営学部に在籍していましたが講義を受けるだけではその憧れに近づけているような実感がなく、そこからインターンシップで働くようになりました。
―現在は株式会社AI Shiftの代表取締役でいらっしゃいますが、どんな経緯で代表に就任したのでしょうか
入社1年目(2016年)の12月ごろから開始したチャットボットの事業がスタートとなっています。3年ほど経った2019年に、たまたま藤田と話をする機会があり、AI領域という可能性のある事業であることから子会社化し、社長として事業をやってみないかと声をかけられて会社設立に至りました。
―AI Shiftとしてはどのような事業を展開されているのですか
「対話型AI」を開発し、BtoB事業として様々な企業にプロダクトを提供しています。チャットボットやボイスボットを開発し、多くの企業に提供することで、人だからこそ提供できる価値や、人にしかできない仕事により多くの時間を割けるような人がすべきことに集中できる世の中を実現したいと考えています。
優秀な若手社員の発掘とトップラインの引き上げ。若手育成プロジェクト「YMCA」とは
―サイバーエージェント全社横断型の若手育成プロジェクト「YMCA」の理事としても活躍されていますが、そもそも「YMCA」とはどのような取り組みなのでしょうかまず、「YMCA」という名称ですが、「Young Man CyberAgent(ヤングマンサイバーエジェント)」の頭文字をとっています(笑)。20代社員のトップラインの引き上げを目的にスタートしました。2016年の発足ですので現在は7期目です。毎年4月にプロジェクトが始まり、翌年3月に終了します。運営メンバーは発足当初は10名程度でしたが、今では50名以上で運営しています。理事や運営に携わるメンバーは毎年代わりますが、その理事の下で活動内容をブラッシュアップしています。
なお、運営メンバーは理事と副理事がリーダーとなる社員を選んだ後、その年のYMCAの施策に合わせて最適なメンバーをリーダーから提案を受けて決定しています。
―「YMCA」発足の背景を教えてください
来年3月で創業から25年を迎えるサイバーエージェントですが、従業員数は正社員で6,000名を超え、有期雇用の社員を含めると1万名を超える大きな組織に成長しました。組織が大きくなる一方で、若手社員の活躍が見えづらくなったり、強みである若手のモチベーションの高さを維持しづらくなったり、役員との距離が遠くなり優秀な若手社員を発掘しづらくなったといった課題が見えてきました。そうした課題を解決し、若手社員のトップライン引き上げを実現するために発足しました。
―具体的にはどんな活動をされているのでしょう
活動内容は非常に多岐にわたっています。発足時から続いている取り組みもあれば、今年からの施策もありますが、代表的なものをご紹介したいと思います。特にここ数年力を入れているのが、「BREAK8(ブレイクエイト)」という取り組みです。
これは次世代幹部候補の“発掘”と“覚醒”を目的とし、各事業部で活躍している入社4年目までの若手社員を推薦形式で18名ほど選出し、年間を通して育成していくというプロジェクトです。私自身も※BREAK8の1期目に参加していました。(※当時の名称は、YM18)
具体的には月1回のプロジェクトで、役員が考えたテーマに対し18名の若手社員で考えて一人ずつアウトプットするという内容になっています。それに対し、役員が点数をつけてフィードバックしていき、年度末に年間のランキングを発表するようになっているのです。
―役員が出すテーマとはどんなものがあるのでしょうか
内容は様々です。例えば「今後のキャリアプラン」、「自部署の3年後の経営戦略」、「ABEMAの改善案」、「10年後のサイバーエージェントの理想像」など、お題の内容は多岐にわたります。これらのお題を通して、これまで以上に自分自身と会社を理解し、双方のビジョンをリンクしてもらえるような内容にしています。
―役員から指導を受けられるとなると、学びも大きそうですね
私も1期生として参加していましたが、本当にたくさんの学びがありました。特に普段の仕事では考えることのないレベルの高さや時間軸の内容をアウトプットする必要があったため、自ずと視点や視野が広がったと感じています。そして、この視点の高さを若手の頃から持つことがどれほど重要なのか、今になってよくわかります。
また、役員との距離が縮まることも学習機会として重要です。テーマに関して様々な質問もできますし、コロナ禍でもオンラインの懇親会もあるのでフランクに会話でき、より関係性を深めることができます。どういった想いで会社を経営しているのか、どれくらい難しい仕事にチャレンジしているのか、そういったことが分かります。そうすると、今の自分と役員との差を肌で感じられ、その乖離を埋めるためにどんな行動をすればいいのかも見えてきます。
―6,000名を超える社員の内、約4割が20代社員という中で、どのように選出しているのでしょう
個人的には大きく3つのポイントがあると考えています。まず1つ目に今の仕事で成果を上げているということ。2つ目に自分の部署やチームに貢献するような新しいチャレンジに取り組んでいること。そして3つ目に既に全社視点を持っていること。過去に選出された方を見るとそのような傾向があるように思います。特に1つ目の成果を上げていることは大前提だと思います。自分の本業においてきちんとミッションを達成していなければ、そもそも推薦される可能性は低いですし、何よりメンバーに選出されたとしてもやり遂げることはできないと思います。
このポイントはYMCA全てに共通することですが、BREAK8に限っては事業部の人事から推薦が上がってきた後に、近しい社員からも評価を聞くなどして慎重に選出を行っています。
―BREAK8はじめ、YMCAが取り組んでいる施策に選ばれた社員の皆さんはどのような反応でしょうか
ほとんどの社員が「やりたいです!」というポジティブな反応を示していますし、それだけ期待されていることが分かるので、非常に喜んでくれています。また、これまでに選ばれた先輩社員が子会社の社長や執行役員になるなど、YMCAを通してチャンスをつかんでいる事例も数多くあります。それを目の当たりにしていますので、前向きに捉えてくれていますね。
―BREAK8以外のプログラムにはどんなものがあるのでしょうか
その他の取り組みとしては「ピカログ」というものがあります。BREAK8はトップラインを引き上げる取り組みですが、ピカログは各部署で活躍する若手社員を発掘する取り組みです。
3ヶ月に1度、全社員から周囲で活躍している若手社員の推薦を募り、その中から10名ほどを選出し、毎回参加社員を決めています。一人ひとりに「MY IR」というものを作成してもらい、自分の過去・現在・未来を、藤田を含めた役員の前で発表する取り組みとなっています。
周囲から活躍を認められている社員の人物性、現在取り組んでいる仕事とその成果、この先挑戦してみたいことを役員の前で発表できるので、これまで経営陣との接触機会が少なかったとしても、ピカログで自分をアピールすることができます。
この取り組みにおいては、自分の人となりは勿論、これから挑戦したいことを役員に認知してもらえるということが大きなポイントです。過去には新規事業を立ち上げる際に、「この間のピカログで発表していた社員がやりたがっていたね」という話が上がり、抜擢されるということがありました。
―その他で代表的な取り組みがあれば教えてください
発足初期から続いている取り組みのひとつとして「YMCAあした会議」があります。サイバーエージェント全社の取り組みとして、「あした会議」というサイバーエージェントの“あした(未来)”に繋がる新規事業や課題解決の方法を提案、決議する会議があり、その若手版が「YMCAあした会議」です。「あした会議」では、チームリーダーを務める役員がドラフトで選出された社員とチームを組み、代表の藤田が審査をしてその得点を競います。
「YMCAあした会議」も同じように藤田が審査員となりますが、4年目以下からリーダーが選ばれ、そのリーダーが同じように4年目以下の社員をドラフトし、会社の課題解決や組織活性化に資する施策を提案するようになっています。決議されたものについては責任をもって実行していくことがセットになっており、そこにはYMCAが伴走するようになっています。なお、ピカログをはじめYMCA取り組む施策の多くが、この「YMCAあした会議」を通じて、若手社員から立案されたものです。
「抜擢」をテーマに。7期目YMCAの目指すもの
―米山さんは7期目の理事としてYMCAを運営されていますが、そもそもどのような経緯で理事に就任されたのでしょう理事は前任の理事が後継を指名する形で選ばれます。2年目くらいからYMCAに携わってきたことに加え、前期では副理事をしていましたので選んでいただきました。
―その年ごとに新しい取り組みをされているそうですが、米山さんはどんなことに取り組まれているのでしょうか
6期目からYMCAのスローガンとして「若手を、楽しもう。」を掲げています。サイバーエージェントの会社としてのスローガン「会社を、楽しもう。」ともリンクさせ、挑戦する若手社員が生き生きと働ける状態を作っていこうと考えています。
その上で7期目としては「抜擢」をよりアップデートしていこうと思っています。組織の規模が年々大きくなるにつれて抜擢されている若手社員が見えづらくなっているという課題が起きています。実際には様々な場面で若手社員が抜擢されて活躍していたり、マネージャーに昇進している数が増えているにもかかわらず、目立たなくなっているのです。
そこで、もっと見える化を進めるために、関係者と様々なディスカッションをしています。抜擢された方にインタビューして発信をするということはもちろん、そもそもマネージャーに昇進している若手が年々増えている事実すら知らない人もいる現状がありますので、定期的な情報収集・発信とともに、抜擢された後にどんな風に活躍しているのかということもオープンにしていきたいと思っています。
決断することの責任と、成し遂げるために必要なこと
―若い内から自分で決断をする機会に溢れている会社だと思いますが、そうした経験でキャリア形成にどんなメリットがあるのでしょうかサイバーエージェントでは「決断経験を積ませる」というワードが社内で飛び交っています。自分自身で決断をすると、その結果が成功であれ失敗であれ、必ず結果として返ってくるため、そこから得られる学びは非常に多いものとなります。
決断をすることは、その時点では成否が分からないのでリスクもありますが、自分で決断すると、成功させないといけないという責任が生じます。そうすると、あらゆることを自分事化して認識できるようになり、当事者意識の輪が広がっていくのです。
さらに、その責任感は、今の自分以上の能力を発揮させることにも繋がります。その事業にもっと詳しくなるための勉強や、色々な人を巻き込む努力、自分のスキルアップに励む必要が出てくるからです。もちろん、結果が出た後の内省も大切です。失敗の結果に終わったとしても何が原因で、何をすれば良かったのかを考えることで新たな気づきも得られます。
サイバーエージェントでは、こうした抜擢→決断→失敗→学習というサイクルが全社に浸透しており、自ら決断することが良いことだというカルチャーが形成されていますし、実際に役員はもちろん先輩・上司もそのプロセスで成長してきています。
―そうした機会が与えられるだけではなく、自らそうした機会に飛び込むこともあるのでしょうか
その通りです。与えられた目標だけをクリアしていても、なぜその目標が立てられたのか判然としないこともあると思いますし、背景が分からなければ目標達成した先に何が得られるのか分からないこともあると思います。一方で、自分で決めればその結果にも納得いきますし、目標の意義を理解していれば、努力を重ねるエネルギーになると思うのです。
―ここまで様々なお話を聞かせていただきありがとうございます。決断することによって責任感が生じるとのことですが、常に成功に向けて意識し挑戦し続けることは並大抵のことではないと思います。どのようにすればその姿勢を保ち続けることができるのか、20代の読者へのメッセージをお願いします
役員との対話の中で、自分自身も含めて意識していることが3つあります。1つは常に高い目標を掲げることです。これが一番大事であり、一番難しいことです。結局、掲げた目標以上のことを実現することはできませんし、結果として達成できなかったとしても、9割達成できればそれはそれで大きな成果になると思っています。
また、大きな目標を持ち掲げることは、多くの人を動かす力も持っています。その目標が持つ意義を明確に伝えることで、自分よりも優秀な人をそのプロジェクトに巻き込むことができると思います。
2つ目はスキルよりも成果にこだわるということです。特に若い内は自分のスキルをどのようにして身に付けるのかということに意識が向きがちです。それよりも今の自分の状況で成果を最大化するにはどうすべきかにこだわることが大切です。仮にスキルが足りないと感じるのであれば、何のスキルが必要なのかを明確にし、成果の出る確率の高いスキルを身に付けるべきです。場合によっては、自分が身に付けなくとも協力者を見つければ良いケースもあるかもしれません。闇雲にスキルを身に付けることが目的になってしまいせっかく時間をかけても成果に結びつかないことが最ももったいないと思います。
そして3つ目は自分の強みを認識し、そこで勝負するということです。当社の役員は個性派揃いだと思いますが、自分の強みをよく理解し、伸ばし、生かすことで会社に貢献するという視点に立っているからこそだと思います。強みというのは言い換えると、他人と比べて少ない努力・労力で成果を上げられるものです。相対的に自分の強みが何かを発見し、それを武器にすることが重要だと思います。
株式会社サイバーエージェント
1998年3月18日設立。2021年に制定したパーパス「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」のもと自ら変化し続け、多様な事業を通じて新たな価値を生み出すとともに独自のカルチャーを形成し、持続的な成長を続けている。現在は、ABEMAに代表されるメディア事業の他、インターネット広告、ゲーム、スタートアップ(新規事業)、AI、DXと幅広い事業を展開。