2023.01.11INTERVIEW
成長中の中堅・中小企業のコーポレートIT部門(情シス部門)にIT人材を時間貸し。自分で働く会社やプロジェクトを選ぶ“シェアード社員”とは
ユナイトアンドグロウ株式会社
代表取締役社長 須田 騎一朗(すだ きいちろう)様(写真右)
インソーシング事業本部 第2事業部 大川 直希(おおかわ なおき)様(写真左)
ミッションに「中堅・中小企業を強くする。働き方を革新する。」を掲げ、日本の99%を占める中小企業を助け、そこで働く人を元気にしたいという志の下、事業を展開するユナイトアンドグロウ株式会社。その志の実現のためには情報システムの活用が重要だとし、中堅・中小企業のコーポレートIT部門(情報システム部門)の課題を“シェアード社員”という取り組みを通じて解決しています。自社の正社員として雇用したIT人材を、派遣契約ではなく準委任契約で企業に送り出し、タイムシェア(時間貸し)できることからきめ細やかにクライアントの課題を解決できると、年々、同社のサービスを利用する企業が増えています。また、どのクライアントのどんな案件を担当するかはスタッフが立候補して決めるというのも特徴の一つ。一人が複数のクライアントの案件を担当する新しい働き方とも言えます。今回は同社の代表取締役社長である須田さんに、“シェアード社員”についてお伺いした他、実際に“シェアード社員”として働く大川さんにお話を伺いました。
(須田)当初からそのような構想があったわけではなく、顧客ニーズやこちらの事情を考えていくうちに生まれました。
会社を立ち上げた時から企業の情報システム部門について問題意識を持ち続けていました。さまざまな会社に情報システム部門はあるものの、花形とはなかなか言えないということです。例えばメーカーであれば、その会社の商品を販売する営業や、商品の企画開発などは憧れる人が多いかもしれませんが、販売管理システムなど社内のITシステムを扱う情報システム部門は目立ちません。
しかし、絶対に誰かが担わなければならない仕事ですし、会社の課題を解決しつつ現場で有効に使われるものにしなければならないので、経営者・現場双方の話を聞いて最適なシステムを構築するという非常に頭を使う仕事とも言えます。そのため、あらゆることに関心を持つプロデューサーのような役割でもあり、本来は非常に優秀な社員をそこに割り当てないとなりません。加えて、そんな大事なポジションでありながらも情報システム部門で働いている本人に、重要な仕事を担っているという意識が薄いことも散見され、この現状を何とかしたいと感じていました。
優秀な社員を割り当てたいし、何より働く社員が面白いと感じながら仕事をしてもらいたい。そうした問題意識から当社を立ち上げるに至りました。
―そのような問題意識を持つようになったのはなぜでしょうか
(須田)1つは20代の頃に私も情報システム部門で仕事をした経験があるからです。もう1つはユナイトアンドグロウよりも前に別の会社を経営しており、しっかりとした人を情報システム部門に割り当てなければ会社経営がうまくいかないことを痛感したためです。
色々な方法で優秀なIT人材を探していましたがなかなか見つけることができず、最終的には何とか人材を確保することができたものの、中小企業は同じような悩みを抱えているんだろうな、と身をもって経験しました。
―創業当時からシェアード社員に取り組まれていたのでしょうか
(須田)いいえ。最初はフリーランスの方を集め、ネットワークをつくり案件に割り当てていくという事業を推進していましたが、やっていくうちにこれはうまくいかないなと分かってきました。当時、フリーランスの方とも議論をしたり、案件を紹介したりといった取り組みをしていましたが、組織に属したくないからフリーランスになっているのであって、そうした方々に仕事をお願いしてもうまくいかないケースが多々発生していました。
先ほどの通り、情報システム部門は会社のプロデューサーとして、組織の課題を発見し解決していく役割を担います。だからこそ、所属する組織への意識や関心がなければならないのですが、フリーランスの方は非常に優れた方もいれば、組織への関心を高く持てない方もいて、差が激しかったのです。そこで、創業2年目で正社員として雇用するシェアード社員の取り組みが始まりました。組織に関心を持てる人、もしくは持てるような仕組みを作り、案件に割り当てていこうとなっていったのです。
とはいえ、中堅・中小企業に対して強い意識を持てて、情報システム部門を担えるような優秀な人材を集めるのは難しいことです。それでもやり続けていきましたが、最初はなかなか収益を上げることもできず苦戦が続きました。
―成長軌道に乗る転機となったタイミングはいつだったのでしょう
(須田)特定のタイミングがあったわけではなく、「絶対に世の中で必要となる」と信じてやり続けていった結果、少しずつ支持を集めることができたと思っています。情報システム部門のエンジニアは仕事として最高の職業の一つだと考えていましたし、やる気あるエンジニアが中小企業に行けば必ず役に立つことができるとも考えていました。
(須田)クライアントにとっては、そもそも各企業で情報システム部門の社員を雇用し、最適な評価制度やキャリアプランを形成するのは難しいことです。また、ナレッジや経験のあるエンジニアが業務を担当するので生産性も上がりますし、経営の状況に合わせてスタッフの交代や増員も柔軟にできます。準委任契約のため契約時間に対して課金されることから、その範囲内であれば業務範囲を限定せずに仕事も依頼できます。また、一つの案件にチームで対応するので複数人でその案件の情報を共有し、安定的に継続して業務を任せることもできます。
働き手にとっては、当社1社に所属しながら、複数の企業の中で働くことができるので幅広い経験を積むことができます。また、会社から事細かに指示を出すわけではないので、自分で働き方や働く時間もプランニングすることができますし、企業に深く入り込み情報システム部門を担当するのでITスキルだけではなく、ビジネススキルを磨くこともできます。
また、たまたま社会や働く人の意識の変化とシェアード社員の働き方がマッチするようになったように思います。一つの会社で同じ仕事をやり続けるのではなく、転職や副業などを通じていろいろな経験やスキルを身に付けたいという人は増えていますし、何よりその方が楽しいと思います。総合的にスキルを身に付けられるというのも、働き手への価値なのだと思います。
ただし、こうした価値は最初から必ずしも提供できていたわけではありません。私たちが信じていることに共感してくれる仲間を集めたいと思った時に、私たちにはどんなところに強みがあるのか、どんな状態が理想なのかを考えていき、徐々に実現できるようになっていったのです。
―自分で働き方や働く時間をコーディネートできる分、自身のやりたいことやキャリアについて、主体的に考え続ける必要はありそうですね
(須田)考え続けられるような職場を作ることができればきっと楽しいものだと思い、経営を続けています。また、「キャリア設計」などという大層なことでなくとも、目の前の仕事や役割をこなしていくことで少しずつ楽しいことは見つかると思います。ある領域の専門性を磨いた方が生き生きと働けると言うなら、その専門性を突き詰めていけばいいのだと思います。
―どの案件に関わるか立候補して選ぶということも特徴的ですが、主体的に自分のキャリアを形成することを狙いとしているのでしょうか
(須田)結果としてそのような面もありますが、当初は自分で自分の仕事を探す、自分の余った時間は自分の努力で埋めて欲しいという考えでスタートしました。かつては案件にかかわるスタッフを差配する担当もいましたが、スキルや希望、クライアントとのマッチングなどを考えると非常に難しいもので、立候補する仕組みに変更しました。
もちろん、自分から動く性格の人ばかりではなく、指示を受けてから動く人もいます。そうした人でも自身のスキルをきちんと生かせるように周りで支える必要はあると考えています。また、一つの案件に複数人が担当することから、チームとして最も機能するためにはどうすれば良いのか、周囲に関心を持ち続けることも大切だと考えて制度を作っています。
もとより、重要ながらも注目されにくい仕事を通じて中堅・中小企業の助けになる事業です。時間が余っているスタッフが多くなってしまっては、赤字となってしまいます。また、働き方が多様になり、労働人口も減っている現代社会において、さまざまな工夫をして行った結果、当社にとって適した解決策の一つがシェアード社員や立候補制であったのです。
(須田)人によって水準は異なります。既にたくさんの勉強をし、スキルのある方であれば社会をどうしていきたいのかということを考えてもらえればと思いますが、そこまで至っていないと思うのであれば、まずは何でも良いから目の前のことに取り組めばいいと思います。そして、その水準をどうやって見極めるかは自分自身にしか分かりません。だからこそ、時には内観というか、自分自身を見つめ直す必要があると思います。
また、入社式などでも伝えていることですが、夢や意志をもって何かを成し遂げようとしても、若い内は経験もないので失敗するものです。ただ、その失敗の量によって成長できるので、失敗を怖がらないで欲しいですね。いろいろな失敗経験がなければ次のステップには進めないのです。わざと失敗するわけにはいきませんが、経験を積めて良かった、と思って欲しいです。
学生時代まではほとんどの方が答えのある世界で生きてきたことと思います。それは問題をたくさん解いて正解を出すほど褒められ、偏差値が上がるというものでした。その体験が強く身に染みてしまっている方もいるかもしれませんが、そうした感覚を脱することで失敗経験も積めるようになり、充実した社会人生活を送ることができるようになると思います。
(大川)新卒で人材教育系のコンサル会社に入社し、5年間で営業と社長秘書、情報システム部門など様々な職種を経験しました。そこで情報システム部門の仕事が面白いと感じ、もっとITの専門知識を深めたいとの思いから、中小企業ではなく大企業のプログラマーとしてのキャリアを進みたいと考え、2社目にエンジニア派遣の会社でITエンジニアを選びました。
3,000人規模の企業のプロジェクトに参加し、プログラマーとして派遣されていましたが、手を動かす時間はあまりなく、それよりも「そもそもITで解決できる課題とは何か」ということを考えたり、「経理部門で困っているらしいから話を聞いてきて」といったようなことが多く、プログラマーとしての仕事にはあまり携わることができませんでした。ただ、その仕事が自分には向いていると感じ、職種を変えようと思ったのです。
また、大企業で働いてみて分かったことは、1社目のような中小企業の距離の近さが自分には合っているということでした。中小企業で、情報システム部門の仕事でもう一度仕事を探そうと考えて転職活動をする中で出会ったのがユナイトアンドグロウでした。
―入社の決め手や、他の会社と比べたときに良いと感じたのはどんな点だったのでしょうか
(大川)シェアード社員の取り組みなどは選考を受けたときから聞いていたのですが、率直に感動したんです。
1社目で情報システム部門の仕事を担当していた際、「この仕事は本当にこのままでいいのだろうか」「もっと良い方法があるんじゃないか」と思うことが多かったのですが、なかなか相談ができる人がいませんでした。
中小企業では「ちょっとITに詳しいから」とか「他の部門で活躍できなかったから」とか、場合によっては「若いから」という理由で情報システム部門に割り当てられることもあるのですが、私の場合、先輩や上司もIT人材というわけでもなく、情報システム部門の仕事の重要性を深く理解しているわけでもありませんでした。そのため、自分の成果に対してきちんとフィードバックを受けることもできず、常に70点くらいの仕事をしている感覚になり、違和感を覚えるようになっていったのです。
そのような環境なので、会社の評価制度などにも納得感が得られず、評価されたとしても「本当に自分はスキルアップできているのだろうか」と疑念に思ってしまい、自信を持つことができませんでした。
一方でユナイトアンドグロウは、社員のほとんどが情報システム部門で働いており、いろいろな経験を積んでいるためさまざまな話を聞くことができますし、社内SNSで質問をすれば必ず誰かが返答してくれます。ナレッジが溜まり、共有できる場があることも魅力でした。また、評価制度についてもしっかりと整えられており、自分がどのようにすればステップアップできるのか明確だったため、この会社に入社したいと強く思うようになりました。
(大川)ギャップはありませんでした。働くクライアント先によって状況は違うと思っていたので、あまり働くイメージを持たずに入社したということもあるかもしれません。
印象的だったのは想像以上に自由な環境だったということです。業務に関連する事務作業も一般の会社に比べると少なく、稼働していない時間など空き時間に課題が出ることもありません。自分で参加したい案件を探したり、他の人と情報交換できるというのはここまで自由なことなのかと思いました。
―シェアード社員として働いてみて、この働き方はどんな人に向いていると感じますか
(大川)普通より短い期間でコーポレートエンジニアという働き方を経験し、成長したいという人には特に向いていると思います。1社目で3年間、情報システム部門専任で働いた経験があるからこそ、この会社にいればもっと早くにいろいろな経験が積めると実感しています。
また、多くの会社で色々な経験を積むことができます。普通の会社であれば、ある程度会社の仕組みを理解して人間関係も構築して初めて取り組むようなことにすぐに参加することができますし、転職の必要なく複数社で働く経験が積めることは貴重なことです。
―自身で案件を選べるという中で、大川さんはどのような基準で選ばれているのでしょうか
(大川)経験したことがない案件を選ぶというアプローチと、自分の能力を一番に活かせる案件を選ぼうというアプローチがあり、どれを優先するかは人それぞれですが、私は後者で選ぶようにしています。自分が役に立てるところであれば、ぜひ参加したいと思っています。
―さまざまなお話を聞かせていただきありがとうございます。明確な基準をもって案件を選んだり、進路を決められた大川さんですが、一方でなかなかやりたいことや、自分なりの基準が見つからない方もいるかもしれません。最後に読者にメッセージをお願いできますか
(大川)1社目から2社目の転職のきっかけはやったことのない事は分からないから挑戦しようというものでした。情報システム部門での仕事が楽しいのか、ITそのものが楽しいのか分からなかったので、2社目はプログラマーをやってみたいと思い選びました。
そうしたいろいろな経験を積むうちに、自分の好き嫌いが見えてきました。ユナイトアンドグロウは短い期間でたくさんの経験が積める場で、今でも「こういう職場は働きやすい」「こういう人と働くと学びになる」など新しい発見の連続です。
そんな風にまずは気になったことにチャレンジしてみると、きっと自分なりの判断基準が見つかってくるのではないでしょうか。
ユナイトアンドグロウ株式会社
2005年2月23日設立。中堅・中小企業(社員数50名から1,000名の成長企業)の情報システム部門の人材不足を、タイムシェアサービス「シェアード社員」によって解決。多くの企業に選ばれ売上を拡大しており、2019年に東証マザーズ市場に上場(2022年東証グロース市場に変更)。180人のシェアード社員が東京都内を中心に約230社で活躍している。
代表取締役社長 須田 騎一朗(すだ きいちろう)様(写真右)
インソーシング事業本部 第2事業部 大川 直希(おおかわ なおき)様(写真左)
ミッションに「中堅・中小企業を強くする。働き方を革新する。」を掲げ、日本の99%を占める中小企業を助け、そこで働く人を元気にしたいという志の下、事業を展開するユナイトアンドグロウ株式会社。その志の実現のためには情報システムの活用が重要だとし、中堅・中小企業のコーポレートIT部門(情報システム部門)の課題を“シェアード社員”という取り組みを通じて解決しています。自社の正社員として雇用したIT人材を、派遣契約ではなく準委任契約で企業に送り出し、タイムシェア(時間貸し)できることからきめ細やかにクライアントの課題を解決できると、年々、同社のサービスを利用する企業が増えています。また、どのクライアントのどんな案件を担当するかはスタッフが立候補して決めるというのも特徴の一つ。一人が複数のクライアントの案件を担当する新しい働き方とも言えます。今回は同社の代表取締役社長である須田さんに、“シェアード社員”についてお伺いした他、実際に“シェアード社員”として働く大川さんにお話を伺いました。
会社にとって中核となる情報システム部門の課題を解決したい。シェアード社員が生まれるまで
―まずは須田さんにお話を伺います。シェアード社員はどのような背景で始められたのでしょうか(須田)当初からそのような構想があったわけではなく、顧客ニーズやこちらの事情を考えていくうちに生まれました。
会社を立ち上げた時から企業の情報システム部門について問題意識を持ち続けていました。さまざまな会社に情報システム部門はあるものの、花形とはなかなか言えないということです。例えばメーカーであれば、その会社の商品を販売する営業や、商品の企画開発などは憧れる人が多いかもしれませんが、販売管理システムなど社内のITシステムを扱う情報システム部門は目立ちません。
しかし、絶対に誰かが担わなければならない仕事ですし、会社の課題を解決しつつ現場で有効に使われるものにしなければならないので、経営者・現場双方の話を聞いて最適なシステムを構築するという非常に頭を使う仕事とも言えます。そのため、あらゆることに関心を持つプロデューサーのような役割でもあり、本来は非常に優秀な社員をそこに割り当てないとなりません。加えて、そんな大事なポジションでありながらも情報システム部門で働いている本人に、重要な仕事を担っているという意識が薄いことも散見され、この現状を何とかしたいと感じていました。
優秀な社員を割り当てたいし、何より働く社員が面白いと感じながら仕事をしてもらいたい。そうした問題意識から当社を立ち上げるに至りました。
―そのような問題意識を持つようになったのはなぜでしょうか
(須田)1つは20代の頃に私も情報システム部門で仕事をした経験があるからです。もう1つはユナイトアンドグロウよりも前に別の会社を経営しており、しっかりとした人を情報システム部門に割り当てなければ会社経営がうまくいかないことを痛感したためです。
色々な方法で優秀なIT人材を探していましたがなかなか見つけることができず、最終的には何とか人材を確保することができたものの、中小企業は同じような悩みを抱えているんだろうな、と身をもって経験しました。
―創業当時からシェアード社員に取り組まれていたのでしょうか
(須田)いいえ。最初はフリーランスの方を集め、ネットワークをつくり案件に割り当てていくという事業を推進していましたが、やっていくうちにこれはうまくいかないなと分かってきました。当時、フリーランスの方とも議論をしたり、案件を紹介したりといった取り組みをしていましたが、組織に属したくないからフリーランスになっているのであって、そうした方々に仕事をお願いしてもうまくいかないケースが多々発生していました。
先ほどの通り、情報システム部門は会社のプロデューサーとして、組織の課題を発見し解決していく役割を担います。だからこそ、所属する組織への意識や関心がなければならないのですが、フリーランスの方は非常に優れた方もいれば、組織への関心を高く持てない方もいて、差が激しかったのです。そこで、創業2年目で正社員として雇用するシェアード社員の取り組みが始まりました。組織に関心を持てる人、もしくは持てるような仕組みを作り、案件に割り当てていこうとなっていったのです。
とはいえ、中堅・中小企業に対して強い意識を持てて、情報システム部門を担えるような優秀な人材を集めるのは難しいことです。それでもやり続けていきましたが、最初はなかなか収益を上げることもできず苦戦が続きました。
―成長軌道に乗る転機となったタイミングはいつだったのでしょう
(須田)特定のタイミングがあったわけではなく、「絶対に世の中で必要となる」と信じてやり続けていった結果、少しずつ支持を集めることができたと思っています。情報システム部門のエンジニアは仕事として最高の職業の一つだと考えていましたし、やる気あるエンジニアが中小企業に行けば必ず役に立つことができるとも考えていました。
理想に向かっていくことで提供できるようになったシェアード社員の価値
―シェアード社員という働き方を通じ、クライアント・働き手にはそれぞれどんな価値を提供できるのでしょう(須田)クライアントにとっては、そもそも各企業で情報システム部門の社員を雇用し、最適な評価制度やキャリアプランを形成するのは難しいことです。また、ナレッジや経験のあるエンジニアが業務を担当するので生産性も上がりますし、経営の状況に合わせてスタッフの交代や増員も柔軟にできます。準委任契約のため契約時間に対して課金されることから、その範囲内であれば業務範囲を限定せずに仕事も依頼できます。また、一つの案件にチームで対応するので複数人でその案件の情報を共有し、安定的に継続して業務を任せることもできます。
働き手にとっては、当社1社に所属しながら、複数の企業の中で働くことができるので幅広い経験を積むことができます。また、会社から事細かに指示を出すわけではないので、自分で働き方や働く時間もプランニングすることができますし、企業に深く入り込み情報システム部門を担当するのでITスキルだけではなく、ビジネススキルを磨くこともできます。
また、たまたま社会や働く人の意識の変化とシェアード社員の働き方がマッチするようになったように思います。一つの会社で同じ仕事をやり続けるのではなく、転職や副業などを通じていろいろな経験やスキルを身に付けたいという人は増えていますし、何よりその方が楽しいと思います。総合的にスキルを身に付けられるというのも、働き手への価値なのだと思います。
ただし、こうした価値は最初から必ずしも提供できていたわけではありません。私たちが信じていることに共感してくれる仲間を集めたいと思った時に、私たちにはどんなところに強みがあるのか、どんな状態が理想なのかを考えていき、徐々に実現できるようになっていったのです。
―自分で働き方や働く時間をコーディネートできる分、自身のやりたいことやキャリアについて、主体的に考え続ける必要はありそうですね
(須田)考え続けられるような職場を作ることができればきっと楽しいものだと思い、経営を続けています。また、「キャリア設計」などという大層なことでなくとも、目の前の仕事や役割をこなしていくことで少しずつ楽しいことは見つかると思います。ある領域の専門性を磨いた方が生き生きと働けると言うなら、その専門性を突き詰めていけばいいのだと思います。
―どの案件に関わるか立候補して選ぶということも特徴的ですが、主体的に自分のキャリアを形成することを狙いとしているのでしょうか
(須田)結果としてそのような面もありますが、当初は自分で自分の仕事を探す、自分の余った時間は自分の努力で埋めて欲しいという考えでスタートしました。かつては案件にかかわるスタッフを差配する担当もいましたが、スキルや希望、クライアントとのマッチングなどを考えると非常に難しいもので、立候補する仕組みに変更しました。
もちろん、自分から動く性格の人ばかりではなく、指示を受けてから動く人もいます。そうした人でも自身のスキルをきちんと生かせるように周りで支える必要はあると考えています。また、一つの案件に複数人が担当することから、チームとして最も機能するためにはどうすれば良いのか、周囲に関心を持ち続けることも大切だと考えて制度を作っています。
もとより、重要ながらも注目されにくい仕事を通じて中堅・中小企業の助けになる事業です。時間が余っているスタッフが多くなってしまっては、赤字となってしまいます。また、働き方が多様になり、労働人口も減っている現代社会において、さまざまな工夫をして行った結果、当社にとって適した解決策の一つがシェアード社員や立候補制であったのです。
失敗は当たり前。失敗して良かったと思ってほしい
―ここまでお話いただきありがとうございます。最後に、働き手が自ら自分にあった働き方を選ぶうえで、大切となる考え方や姿勢はどのようなことだと考えられているのか、読者へのメッセージをお願いします(須田)人によって水準は異なります。既にたくさんの勉強をし、スキルのある方であれば社会をどうしていきたいのかということを考えてもらえればと思いますが、そこまで至っていないと思うのであれば、まずは何でも良いから目の前のことに取り組めばいいと思います。そして、その水準をどうやって見極めるかは自分自身にしか分かりません。だからこそ、時には内観というか、自分自身を見つめ直す必要があると思います。
また、入社式などでも伝えていることですが、夢や意志をもって何かを成し遂げようとしても、若い内は経験もないので失敗するものです。ただ、その失敗の量によって成長できるので、失敗を怖がらないで欲しいですね。いろいろな失敗経験がなければ次のステップには進めないのです。わざと失敗するわけにはいきませんが、経験を積めて良かった、と思って欲しいです。
学生時代まではほとんどの方が答えのある世界で生きてきたことと思います。それは問題をたくさん解いて正解を出すほど褒められ、偏差値が上がるというものでした。その体験が強く身に染みてしまっている方もいるかもしれませんが、そうした感覚を脱することで失敗経験も積めるようになり、充実した社会人生活を送ることができるようになると思います。
情報システム部門でキャリアを積みたい。ユナイトアンドグロウへの転職理由
―それでは、ここからは大川さんにお話を伺います。まずはこれまでのご経歴や、転職先としてユナイトアンドグロウを選ばれた理由について教えてください(大川)新卒で人材教育系のコンサル会社に入社し、5年間で営業と社長秘書、情報システム部門など様々な職種を経験しました。そこで情報システム部門の仕事が面白いと感じ、もっとITの専門知識を深めたいとの思いから、中小企業ではなく大企業のプログラマーとしてのキャリアを進みたいと考え、2社目にエンジニア派遣の会社でITエンジニアを選びました。
3,000人規模の企業のプロジェクトに参加し、プログラマーとして派遣されていましたが、手を動かす時間はあまりなく、それよりも「そもそもITで解決できる課題とは何か」ということを考えたり、「経理部門で困っているらしいから話を聞いてきて」といったようなことが多く、プログラマーとしての仕事にはあまり携わることができませんでした。ただ、その仕事が自分には向いていると感じ、職種を変えようと思ったのです。
また、大企業で働いてみて分かったことは、1社目のような中小企業の距離の近さが自分には合っているということでした。中小企業で、情報システム部門の仕事でもう一度仕事を探そうと考えて転職活動をする中で出会ったのがユナイトアンドグロウでした。
―入社の決め手や、他の会社と比べたときに良いと感じたのはどんな点だったのでしょうか
(大川)シェアード社員の取り組みなどは選考を受けたときから聞いていたのですが、率直に感動したんです。
1社目で情報システム部門の仕事を担当していた際、「この仕事は本当にこのままでいいのだろうか」「もっと良い方法があるんじゃないか」と思うことが多かったのですが、なかなか相談ができる人がいませんでした。
中小企業では「ちょっとITに詳しいから」とか「他の部門で活躍できなかったから」とか、場合によっては「若いから」という理由で情報システム部門に割り当てられることもあるのですが、私の場合、先輩や上司もIT人材というわけでもなく、情報システム部門の仕事の重要性を深く理解しているわけでもありませんでした。そのため、自分の成果に対してきちんとフィードバックを受けることもできず、常に70点くらいの仕事をしている感覚になり、違和感を覚えるようになっていったのです。
そのような環境なので、会社の評価制度などにも納得感が得られず、評価されたとしても「本当に自分はスキルアップできているのだろうか」と疑念に思ってしまい、自信を持つことができませんでした。
一方でユナイトアンドグロウは、社員のほとんどが情報システム部門で働いており、いろいろな経験を積んでいるためさまざまな話を聞くことができますし、社内SNSで質問をすれば必ず誰かが返答してくれます。ナレッジが溜まり、共有できる場があることも魅力でした。また、評価制度についてもしっかりと整えられており、自分がどのようにすればステップアップできるのか明確だったため、この会社に入社したいと強く思うようになりました。
自分のものさしをもってより早く成長したい、そんな人に向いた働き方
―実際にシェアード社員として働かれてみての感想や、入社前後でのギャップなどがあれば教えてください(大川)ギャップはありませんでした。働くクライアント先によって状況は違うと思っていたので、あまり働くイメージを持たずに入社したということもあるかもしれません。
印象的だったのは想像以上に自由な環境だったということです。業務に関連する事務作業も一般の会社に比べると少なく、稼働していない時間など空き時間に課題が出ることもありません。自分で参加したい案件を探したり、他の人と情報交換できるというのはここまで自由なことなのかと思いました。
―シェアード社員として働いてみて、この働き方はどんな人に向いていると感じますか
(大川)普通より短い期間でコーポレートエンジニアという働き方を経験し、成長したいという人には特に向いていると思います。1社目で3年間、情報システム部門専任で働いた経験があるからこそ、この会社にいればもっと早くにいろいろな経験が積めると実感しています。
また、多くの会社で色々な経験を積むことができます。普通の会社であれば、ある程度会社の仕組みを理解して人間関係も構築して初めて取り組むようなことにすぐに参加することができますし、転職の必要なく複数社で働く経験が積めることは貴重なことです。
―自身で案件を選べるという中で、大川さんはどのような基準で選ばれているのでしょうか
(大川)経験したことがない案件を選ぶというアプローチと、自分の能力を一番に活かせる案件を選ぼうというアプローチがあり、どれを優先するかは人それぞれですが、私は後者で選ぶようにしています。自分が役に立てるところであれば、ぜひ参加したいと思っています。
―さまざまなお話を聞かせていただきありがとうございます。明確な基準をもって案件を選んだり、進路を決められた大川さんですが、一方でなかなかやりたいことや、自分なりの基準が見つからない方もいるかもしれません。最後に読者にメッセージをお願いできますか
(大川)1社目から2社目の転職のきっかけはやったことのない事は分からないから挑戦しようというものでした。情報システム部門での仕事が楽しいのか、ITそのものが楽しいのか分からなかったので、2社目はプログラマーをやってみたいと思い選びました。
そうしたいろいろな経験を積むうちに、自分の好き嫌いが見えてきました。ユナイトアンドグロウは短い期間でたくさんの経験が積める場で、今でも「こういう職場は働きやすい」「こういう人と働くと学びになる」など新しい発見の連続です。
そんな風にまずは気になったことにチャレンジしてみると、きっと自分なりの判断基準が見つかってくるのではないでしょうか。
ユナイトアンドグロウ株式会社
2005年2月23日設立。中堅・中小企業(社員数50名から1,000名の成長企業)の情報システム部門の人材不足を、タイムシェアサービス「シェアード社員」によって解決。多くの企業に選ばれ売上を拡大しており、2019年に東証マザーズ市場に上場(2022年東証グロース市場に変更)。180人のシェアード社員が東京都内を中心に約230社で活躍している。