2023.01.25INTERVIEW
入社直後に部署を立ち上げた20代。追い求めた新しい形のカスタマーサクセスとは
20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
イーストフィールズ株式会社
クライアント サービス
カスタマー サクセス リード
小笠原 芽(おがさわら めい)様
組織とフリーランスをつなぐマッチングサービス「Pro Connect(プロコネクト)」を運営するイーストフィールズ株式会社。ビジネスや経営に課題のある企業に対し、元大手企業役員や戦略コンサルタント、Webマーケターなど高い専門性をもつプロフェッショナルフリーランスを繋ぐプラットフォームサービスを展開しています。多くの企業、フリーランスに支持され2018年の創業以来、売上高は10億円を突破し、年平均3倍以上で事業成長を実現する成長企業です。今回お話をお伺いした小笠原さんは、20代でありながら同社のカスタマーサクセス部門を2021年10月の入社直後に立ち上げられました。これまでのご経歴や小笠原さんの考えるカスタマーサクセスのあり方、これから実現したいビジョンなどについてお話いただきました。
青森県の出身で上京して東京デザイン専門学校に入学し、空間デザインの学科に所属していました。そこでCADの勉強をし、それを使える仕事を探そうということで1社目にパッケージデザイナーとして働き始めました。
ただ、昔からテレビ業界に強く興味をもっていたんです。高校の進路相談でもテレビ業界に進みたいと先生に話をしたことがあったのですが、「そんな夢のようなことを言っても無理だ」と言われてしまい、専門学校に進むことにしました。
実は就職活動でもADを募集している会社に応募し、お声がけいただけたこともあったのですが、「学校を辞めてでもすぐに来て欲しい」と言われてしまい、さすがに学校は卒業したかったのでお断りしたんです。
―憧れを捨てきれずに、テレビ番組の制作会社に転職されたということでしょうか
そうなんです。学生時代のアルバイトで知り合った方から数年越しにお声がけいただいて、「もしまだ興味があったらやってみないか」と言われ、若い体力のあるうちに挑戦してみようと思って転職しました。
―憧れのテレビ業界から次はリクルートで「ホットペッパービューティー」の営業職に転職されたのはなぜでしょう
「テレビの裏側を自分の目で見たい」という憧れから転職しましたが、ADから入社し、ディレクター、プロデューサーとキャリアを歩むことを強く希望していたわけではありませんでした。大変な業界でもありましたし、一度はテレビの世界に進みたいという思いからの転職でしたので、この先のキャリアを考え、やりたいことを見つめ直した結果、リクルートに入社することになったんです。
このとき、転職エージェントに相談し、何に喜びやストレスを感じるのかを細かく分析してもらいました。その結果、人と接し、その人から感謝されるような仕事が一番向いていると思い、その軸で転職活動をしたんです。
―リクルートを選んだのはどんな理由があったのでしょう
実は転職エージェントで大変お世話になったことから、キャリアアドバイザーに魅力を感じていました。ただし、キャリアアドバイザーを目指すためには営業経験が必要だということで営業職を選んだのです。当然、営業経験は全くありませんので研修や育成体制が充実している会社を選ぼうということでリクルートを志望しました。
また、リクルートでは3年半の契約社員期間があるのですが、最終的にはキャリアアドバイザーになるという目標があったので、この期間を終えてからチャレンジしようと思ったのも理由の一つでした。
―そして3年半の契約期間が終了し、イーストフィールズに入社されたのですね
この時も同じく転職エージェントを利用しており、キャリアアドバイザー職の求人を紹介いただきました。その中に当社があったのです。当時は社員数6名でホームページはあるもののどんな会社かさっぱり分からず、不安もありましたが、まずは話を聞いてみようという軽い気持ちで面接を受けにいったんです。実は志望度も高くありませんでした(笑)。
そこから志望度が高まったのは1次面接のことでした。現在の営業マネージャーが面接官だったのですが、自分の苦手としていることや、仕事をしているうえで嫌だったことも正直に言えるような雰囲気だったんです。他社の面接では、どうしても自分を良く見せようとか、これまでの失敗を隠そうとして自分を装ってしまい、お互いのことを知る面接だというのに営業をしているような感覚でした。その感覚がイーストフィールズでは全くなかったですし、一緒に課題や悩みを解決してくれるような人だと感じ、第一志望の会社になったんです。
いえ、当時は企業とフリーランスの仲介となるポジションだけの募集でしたし、キャリアアドバイザーをやりたかったのでその仕事を希望していました。入社1ヵ月前の入社前面談の際にカスタマーサクセスの部署を立ち上げる話を聞かされたんです。
もともと転職エージェントの方からもカスタマーサクセスやカスタマーサポートといった仕事があることや、適性があるとも言われていたので関心をもっていましたが、その仕事に携われる上、部署の立ち上げまで経験できるチャンスはなかなか巡り合えないと思い、自分から希望してチャレンジすることにしたんです。
―イーストフィールズ株式会社のカスタマーサクセス部門はどんな役割を担っているのでしょうか
当社の「Pro Connect」というサービスは、登録しているフリーランスの方と企業の案件をマッチングさせるというものですが、私たちのカスタマーサクセスはフリーランス側を担当しています。アサイン後に定期的に状況のヒアリングなども行い、フリーランスの方が働きやすい環境づくりをサポートしています。現在は常時100名ほどのフリーランスが案件に参画しており、私がリーダーとなって2名のメンバーが所属していますが、1名あたり約50名のフリーランスの方を担当しています。
そもそも部署を立ち上げようとなった時には、フリーランスの方を10~20名ほど毎月コンスタントにアサインできる状況でした。売上は増えていたものの、アサイン後のサポートには注力することができていなかったので、案件の契約期間が終わるとフリーランスの方の中には「Pro Connect」を利用しなくなってしまうということもありました。
それはフリーランスの方を大事にできていないということですし、代表は「フリーランス・企業、すべてのステークホルダーにとって、最適な働き方を実現する」という想いで会社を創業していましたので、この現状を改善する必要があったのです。
―「Pro Connect」を利用する企業側ではなく、フリーランス側のサポートをするというのは特徴的ですね
部署を立ち上げる時からフリーランス側に立ったカスタマーサクセスをしようと考えていました。リクルートでの営業時代、ホットペッパービューティーを個人店に提案するという仕事をしていましたが、掲載して終わりではなく、SNSを活用した宣伝をアドバイスするなど、売上拡大のための伴走支援をしていました。
そうした経験から個人側のサポートをしたいという思いは強く持っており、フリーランスの成功を実現したいと考えるようになりました。
―案件のアサインからその後までをサポートされるということですが、具体的にはどのような内容なのでしょう
まず、「Pro Connect」に登録されたフリーランスの方と面談し、サービスの内容を説明しつつ希望する条件や案件についてヒアリングしていきます。その後、その内容や人柄などからどのクライアントが合いそうかを判断し、案件を紹介していきます。
企業側にどんなフリーランスの方の登録があるのかの案内や、条件面の交渉などはセールスが担当していますが、オファーがでてアサインが決まったタイミングで私たちが引き継ぎます。その後、定期的に電話やオンライン・対面での面談、メールなどでコミュニケーションをとり状況を把握していきます。案件にもよりますが、3ヵ月に1回ほどで契約更新のタイミングとなりますので、その1ヵ月前に継続するか別の案件を選ぶのかの希望をヒアリングします。それまで定期的に状況確認をしているので、良い選択ができるようになっています。
―フリーランスの方の人柄と企業の文化も把握して紹介しているのですね
私たちが企業側と直接コミュニケーションをとることはないのですが、セールス側からの情報を基に判断しています。また、フリーランスの方にも、過去の案件でやりにくかった職場環境なども聞くようにしていますね。カルチャーフィットは非常に大事なポイントです。
私がキャリアアドバイザーをやりたかったこともあって、その要素も含まれるような仕事内容になっていきました(笑)。
部署の立ち上げに挑戦することに迷いは一切なく、むしろ「なんてラッキーなんだろう」と思ってしまったくらいです(笑)。ただ、会社の事業や業界に関しての深い知見もありませんし、一つの部門を立ち上げるような経験もしたことがありませんでしたので、そうした面での不安はすごくありましたね。
昔から新しい環境に飛び込んでみるとか、新しいことに挑戦することに楽しみを覚える性格で、やらずに後悔したくないという気質もあってのことかもしれません。たとえ失敗したとしても、それは一つの経験だし、自信に繋がっていくものだと思うんです。それに、面接時の営業マネージャーも協力してくれるということで安心感もあったのかもしれません。
なお、2021年10月に部署化の話が立ち上がり、12月には部署が発足したので、実質2ヵ月程での立ち上げとなりました。
―不安はすごくあったということですが、立ち上げから軌道に乗せるまでにどんな課題や苦労があったのでしょう
大変だと感じることは今でもたくさんあるのですが、立ち上げのタイミングではまず「カスタマーサクセスとは何か」という仕事理解から始まりました。専門書を読んでみたり、登録しているフリーのコンサルタントの方をお呼びして勉強会をしたりといったことをしていました。
ただ、世間一般のカスタマーサクセスと私がやろうとしていることは異なるということは当初から感じており、なかなか腹落ちしなかったんです。そんな状態で部署が立ち上がり、次は評価制度をつくるという壁にぶち当たりました。この部署が会社の何に貢献しているのか明らかにできなければ評価のしようもないので、目標やKPI・KGIを定める必要があるのですが誰も分からない状態です。作っては壊し、作っては壊しという作業を3回、4回と繰り返していきました。
決めたことがどんどん変わっていくということは面白さもありつつ、ストレスに感じることでもあります。先月決めたことが翌月には変わるというのは、これまでに経験してこなかったことですし、ベンチャー企業ならではだと思います。
―「腹落ちしなかった」ということですが、具体的にどのようなところに違和感があったのでしょうか
先ほどもありましたが、カスタマーサクセスのカスタマーとは企業側を指す場合が多く、フリーランス側のサポートを考えたときに参考となるものが少なかったんです。確かに継続率を高める、解約率を下げるために欧米諸国ではカスタマーサクセスのポジションを各社が重視する傾向にあることなどは分かりましたが、それを「Pro Connect」仕様にするためにお手本となるような事例がありませんでした。
―ある意味、新しいカスタマーサクセスの概念を一から創り上げるということとも思いますが、KPIやKGIはどのようなところに置かれるようになったのでしょう
当初は解約率に置いていました。ただ、契約期間が終了し解約されたフリーランスの方が、再び「Pro Connect」経由で別の案件にアサインされるというケースもあり、解約率だけを見ることには無理があると思ったんです。
そこで現在は売上に置くようにしています。売上を純増させていくことはセールス部門のミッションですが、カスタマーサクセスでは純減額をいかに減らすかということをKGIとしています。毎月、契約が終了する方が一定数いるのですが、その方の中で別の案件にアサインできる方がいればそれは再び売上に繋がりますよね。そのため、いかに解約者を減らすのか、いかに別の案件にアサインできるようにするか、ということを目標に設定しています。
―今後、イーストフィールズのカスタマーサクセスをどのように成長させていくのか、どんな価値を世の中に提供したいかなど、ビジョンがあれば教えてください
カスタマーサクセスという部門が、どうしても営業のサポート役のような見え方で捉えられていて、正直、私も当初はそのように感じているところがありました。ですが、「Pro Connect」のファンを増やすという点で言えば、私たちの役割は非常に大きいものだと感じています。
もしフリーランスの方をサポートしなければ、どんどん離れていく人が増え、たとえ売上が上がったとしても、純減額が大きくなってしまっては意味がありませんし、何より代表の創業時の想いに反することになってしまいます。そのため、まずは会社の中でもこの部署の役割や存在意義が大きいことをしっかりと浸透させていきたいですね。
また、もともとは3人で発足した部署でしたが、異動や転職などもあり、半年ほど一人で部署を運営する時期がありました。私一人でどこまでのことができるのか不安や苦しい時期もありましたが、今は新しいメンバーも採用し、再び3名体制となっています。その新しく入ったメンバーにも、カスタマーサクセスの重要性を実感し、自信としてほしいし、この部署で仕事ができて良かったと思ってもらいたいです。
やはり、とにかく色々な経験をするしかないと思うんです。例えば人と接することが好き、人に感謝されることにやりがいを感じるというのは転職エージェントでの自己分析からわかったことでした。こうしたエージェントでの相談も経験の一つだと思います。自己分析をじっくりする機会は人生でもなかなかないものだと思います。ですが、私の場合はそれで考えが整理できクリアになりました。転職のタイミングだけではなく、どこかで時間を見つけて自己分析をして欲しいと思っています。
また、ADに挑戦し、営業に転職し、こうしてカスタマーサクセスの部署を立ち上げたのも、20代の若い内なら何でもできると思ったからです。不安に感じたり、慎重に判断するタイプの方もいると思いますが、経験なくして自信がつくことはありません。その意味でも、経験を積むことは大切なことなのではないでしょうか。
―小笠原さんの場合、テレビ業界への憧れからすぐにADに挑戦されましたが、そうは言っても転職は大きな決断です。一歩踏み出すためにはどうしたらいいでしょうか
一歩踏み出すことに勇気がいるのはすごく分かります。私の周りにもおなじように躊躇している人がたくさんいます。ただ、たくさん考えることも大事ではあるものの、2~3日考えるのと1ヵ月考えるのと数年にわたって考えるのにそれほど大きな差はないように感じるんです。一度失敗しても戻れるのが20代ですし、30代もそうかもしれません。20代でいられる時間も限られているので、無駄にはしたくないですよね。
それに、自分の人生とか選択を後々振り返った時に、「あぁ、あれをやっておけばよかった」とか「あの時の選択はダサかったな」とか思いたくなくて、将来的に後悔しないようにしようというのを大事に、選択するようにしています。
イーストフィールズ株式会社
2018年10月設立。「仕組みを変え、社会を変え、幸せな人生を増やす」をミッションに掲げ、フリーランスと企業のマッチングをサポートするプラットフォームサービス「Pro Connect」を運営。ベンチャーキャピタルからの資金調達なしに、創業4年で売上10億円突破、年平均3倍以上の成長を実現するなど異例のスピードで事業が伸長。今後は地方創生に寄与すべく地方へのサービス展開も視野に入れている。
クライアント サービス
カスタマー サクセス リード
小笠原 芽(おがさわら めい)様
組織とフリーランスをつなぐマッチングサービス「Pro Connect(プロコネクト)」を運営するイーストフィールズ株式会社。ビジネスや経営に課題のある企業に対し、元大手企業役員や戦略コンサルタント、Webマーケターなど高い専門性をもつプロフェッショナルフリーランスを繋ぐプラットフォームサービスを展開しています。多くの企業、フリーランスに支持され2018年の創業以来、売上高は10億円を突破し、年平均3倍以上で事業成長を実現する成長企業です。今回お話をお伺いした小笠原さんは、20代でありながら同社のカスタマーサクセス部門を2021年10月の入社直後に立ち上げられました。これまでのご経歴や小笠原さんの考えるカスタマーサクセスのあり方、これから実現したいビジョンなどについてお話いただきました。
「やってみたい」を大事に、異業種へ挑戦してきたキャリア
―お菓子や化粧品のパッケージデザイナーや制作会社のアシスタントディレクター(AD)、リクルートでの営業など、様々な仕事を経験されているそうですね。どんな背景でこうした経歴を歩まれたのでしょうか青森県の出身で上京して東京デザイン専門学校に入学し、空間デザインの学科に所属していました。そこでCADの勉強をし、それを使える仕事を探そうということで1社目にパッケージデザイナーとして働き始めました。
ただ、昔からテレビ業界に強く興味をもっていたんです。高校の進路相談でもテレビ業界に進みたいと先生に話をしたことがあったのですが、「そんな夢のようなことを言っても無理だ」と言われてしまい、専門学校に進むことにしました。
実は就職活動でもADを募集している会社に応募し、お声がけいただけたこともあったのですが、「学校を辞めてでもすぐに来て欲しい」と言われてしまい、さすがに学校は卒業したかったのでお断りしたんです。
―憧れを捨てきれずに、テレビ番組の制作会社に転職されたということでしょうか
そうなんです。学生時代のアルバイトで知り合った方から数年越しにお声がけいただいて、「もしまだ興味があったらやってみないか」と言われ、若い体力のあるうちに挑戦してみようと思って転職しました。
―憧れのテレビ業界から次はリクルートで「ホットペッパービューティー」の営業職に転職されたのはなぜでしょう
「テレビの裏側を自分の目で見たい」という憧れから転職しましたが、ADから入社し、ディレクター、プロデューサーとキャリアを歩むことを強く希望していたわけではありませんでした。大変な業界でもありましたし、一度はテレビの世界に進みたいという思いからの転職でしたので、この先のキャリアを考え、やりたいことを見つめ直した結果、リクルートに入社することになったんです。
このとき、転職エージェントに相談し、何に喜びやストレスを感じるのかを細かく分析してもらいました。その結果、人と接し、その人から感謝されるような仕事が一番向いていると思い、その軸で転職活動をしたんです。
―リクルートを選んだのはどんな理由があったのでしょう
実は転職エージェントで大変お世話になったことから、キャリアアドバイザーに魅力を感じていました。ただし、キャリアアドバイザーを目指すためには営業経験が必要だということで営業職を選んだのです。当然、営業経験は全くありませんので研修や育成体制が充実している会社を選ぼうということでリクルートを志望しました。
また、リクルートでは3年半の契約社員期間があるのですが、最終的にはキャリアアドバイザーになるという目標があったので、この期間を終えてからチャレンジしようと思ったのも理由の一つでした。
―そして3年半の契約期間が終了し、イーストフィールズに入社されたのですね
この時も同じく転職エージェントを利用しており、キャリアアドバイザー職の求人を紹介いただきました。その中に当社があったのです。当時は社員数6名でホームページはあるもののどんな会社かさっぱり分からず、不安もありましたが、まずは話を聞いてみようという軽い気持ちで面接を受けにいったんです。実は志望度も高くありませんでした(笑)。
そこから志望度が高まったのは1次面接のことでした。現在の営業マネージャーが面接官だったのですが、自分の苦手としていることや、仕事をしているうえで嫌だったことも正直に言えるような雰囲気だったんです。他社の面接では、どうしても自分を良く見せようとか、これまでの失敗を隠そうとして自分を装ってしまい、お互いのことを知る面接だというのに営業をしているような感覚でした。その感覚がイーストフィールズでは全くなかったですし、一緒に課題や悩みを解決してくれるような人だと感じ、第一志望の会社になったんです。
またとないチャンス。入社直後から新部署立ち上げへ
―入社直後にカスタマーサクセスの部署を立ち上げられていますが、応募した時点でその職種の募集だったのでしょうかいえ、当時は企業とフリーランスの仲介となるポジションだけの募集でしたし、キャリアアドバイザーをやりたかったのでその仕事を希望していました。入社1ヵ月前の入社前面談の際にカスタマーサクセスの部署を立ち上げる話を聞かされたんです。
もともと転職エージェントの方からもカスタマーサクセスやカスタマーサポートといった仕事があることや、適性があるとも言われていたので関心をもっていましたが、その仕事に携われる上、部署の立ち上げまで経験できるチャンスはなかなか巡り合えないと思い、自分から希望してチャレンジすることにしたんです。
―イーストフィールズ株式会社のカスタマーサクセス部門はどんな役割を担っているのでしょうか
当社の「Pro Connect」というサービスは、登録しているフリーランスの方と企業の案件をマッチングさせるというものですが、私たちのカスタマーサクセスはフリーランス側を担当しています。アサイン後に定期的に状況のヒアリングなども行い、フリーランスの方が働きやすい環境づくりをサポートしています。現在は常時100名ほどのフリーランスが案件に参画しており、私がリーダーとなって2名のメンバーが所属していますが、1名あたり約50名のフリーランスの方を担当しています。
そもそも部署を立ち上げようとなった時には、フリーランスの方を10~20名ほど毎月コンスタントにアサインできる状況でした。売上は増えていたものの、アサイン後のサポートには注力することができていなかったので、案件の契約期間が終わるとフリーランスの方の中には「Pro Connect」を利用しなくなってしまうということもありました。
それはフリーランスの方を大事にできていないということですし、代表は「フリーランス・企業、すべてのステークホルダーにとって、最適な働き方を実現する」という想いで会社を創業していましたので、この現状を改善する必要があったのです。
―「Pro Connect」を利用する企業側ではなく、フリーランス側のサポートをするというのは特徴的ですね
部署を立ち上げる時からフリーランス側に立ったカスタマーサクセスをしようと考えていました。リクルートでの営業時代、ホットペッパービューティーを個人店に提案するという仕事をしていましたが、掲載して終わりではなく、SNSを活用した宣伝をアドバイスするなど、売上拡大のための伴走支援をしていました。
そうした経験から個人側のサポートをしたいという思いは強く持っており、フリーランスの成功を実現したいと考えるようになりました。
―案件のアサインからその後までをサポートされるということですが、具体的にはどのような内容なのでしょう
まず、「Pro Connect」に登録されたフリーランスの方と面談し、サービスの内容を説明しつつ希望する条件や案件についてヒアリングしていきます。その後、その内容や人柄などからどのクライアントが合いそうかを判断し、案件を紹介していきます。
企業側にどんなフリーランスの方の登録があるのかの案内や、条件面の交渉などはセールスが担当していますが、オファーがでてアサインが決まったタイミングで私たちが引き継ぎます。その後、定期的に電話やオンライン・対面での面談、メールなどでコミュニケーションをとり状況を把握していきます。案件にもよりますが、3ヵ月に1回ほどで契約更新のタイミングとなりますので、その1ヵ月前に継続するか別の案件を選ぶのかの希望をヒアリングします。それまで定期的に状況確認をしているので、良い選択ができるようになっています。
―フリーランスの方の人柄と企業の文化も把握して紹介しているのですね
私たちが企業側と直接コミュニケーションをとることはないのですが、セールス側からの情報を基に判断しています。また、フリーランスの方にも、過去の案件でやりにくかった職場環境なども聞くようにしていますね。カルチャーフィットは非常に大事なポイントです。
私がキャリアアドバイザーをやりたかったこともあって、その要素も含まれるような仕事内容になっていきました(笑)。
迷いはないが、不安は大きい。独自のカスタマーサクセスを形成するまで
―それにしても、応募時点では話もなかった部署の立ち上げに、転職してすぐ携わるというのは大変だったのではないでしょうか部署の立ち上げに挑戦することに迷いは一切なく、むしろ「なんてラッキーなんだろう」と思ってしまったくらいです(笑)。ただ、会社の事業や業界に関しての深い知見もありませんし、一つの部門を立ち上げるような経験もしたことがありませんでしたので、そうした面での不安はすごくありましたね。
昔から新しい環境に飛び込んでみるとか、新しいことに挑戦することに楽しみを覚える性格で、やらずに後悔したくないという気質もあってのことかもしれません。たとえ失敗したとしても、それは一つの経験だし、自信に繋がっていくものだと思うんです。それに、面接時の営業マネージャーも協力してくれるということで安心感もあったのかもしれません。
なお、2021年10月に部署化の話が立ち上がり、12月には部署が発足したので、実質2ヵ月程での立ち上げとなりました。
―不安はすごくあったということですが、立ち上げから軌道に乗せるまでにどんな課題や苦労があったのでしょう
大変だと感じることは今でもたくさんあるのですが、立ち上げのタイミングではまず「カスタマーサクセスとは何か」という仕事理解から始まりました。専門書を読んでみたり、登録しているフリーのコンサルタントの方をお呼びして勉強会をしたりといったことをしていました。
ただ、世間一般のカスタマーサクセスと私がやろうとしていることは異なるということは当初から感じており、なかなか腹落ちしなかったんです。そんな状態で部署が立ち上がり、次は評価制度をつくるという壁にぶち当たりました。この部署が会社の何に貢献しているのか明らかにできなければ評価のしようもないので、目標やKPI・KGIを定める必要があるのですが誰も分からない状態です。作っては壊し、作っては壊しという作業を3回、4回と繰り返していきました。
決めたことがどんどん変わっていくということは面白さもありつつ、ストレスに感じることでもあります。先月決めたことが翌月には変わるというのは、これまでに経験してこなかったことですし、ベンチャー企業ならではだと思います。
―「腹落ちしなかった」ということですが、具体的にどのようなところに違和感があったのでしょうか
先ほどもありましたが、カスタマーサクセスのカスタマーとは企業側を指す場合が多く、フリーランス側のサポートを考えたときに参考となるものが少なかったんです。確かに継続率を高める、解約率を下げるために欧米諸国ではカスタマーサクセスのポジションを各社が重視する傾向にあることなどは分かりましたが、それを「Pro Connect」仕様にするためにお手本となるような事例がありませんでした。
―ある意味、新しいカスタマーサクセスの概念を一から創り上げるということとも思いますが、KPIやKGIはどのようなところに置かれるようになったのでしょう
当初は解約率に置いていました。ただ、契約期間が終了し解約されたフリーランスの方が、再び「Pro Connect」経由で別の案件にアサインされるというケースもあり、解約率だけを見ることには無理があると思ったんです。
そこで現在は売上に置くようにしています。売上を純増させていくことはセールス部門のミッションですが、カスタマーサクセスでは純減額をいかに減らすかということをKGIとしています。毎月、契約が終了する方が一定数いるのですが、その方の中で別の案件にアサインできる方がいればそれは再び売上に繋がりますよね。そのため、いかに解約者を減らすのか、いかに別の案件にアサインできるようにするか、ということを目標に設定しています。
―今後、イーストフィールズのカスタマーサクセスをどのように成長させていくのか、どんな価値を世の中に提供したいかなど、ビジョンがあれば教えてください
カスタマーサクセスという部門が、どうしても営業のサポート役のような見え方で捉えられていて、正直、私も当初はそのように感じているところがありました。ですが、「Pro Connect」のファンを増やすという点で言えば、私たちの役割は非常に大きいものだと感じています。
もしフリーランスの方をサポートしなければ、どんどん離れていく人が増え、たとえ売上が上がったとしても、純減額が大きくなってしまっては意味がありませんし、何より代表の創業時の想いに反することになってしまいます。そのため、まずは会社の中でもこの部署の役割や存在意義が大きいことをしっかりと浸透させていきたいですね。
また、もともとは3人で発足した部署でしたが、異動や転職などもあり、半年ほど一人で部署を運営する時期がありました。私一人でどこまでのことができるのか不安や苦しい時期もありましたが、今は新しいメンバーも採用し、再び3名体制となっています。その新しく入ったメンバーにも、カスタマーサクセスの重要性を実感し、自信としてほしいし、この部署で仕事ができて良かったと思ってもらいたいです。
時間には限りがあるし、20代は何度でもやり直せる
―ここまで様々なお話を聞かせていただきありがとうございます。最後に、小笠原さんのように自分のやりたいことや軸を見つけ、転職など新しいことに挑戦したい20代の読者に向けてメッセージをお願いしますやはり、とにかく色々な経験をするしかないと思うんです。例えば人と接することが好き、人に感謝されることにやりがいを感じるというのは転職エージェントでの自己分析からわかったことでした。こうしたエージェントでの相談も経験の一つだと思います。自己分析をじっくりする機会は人生でもなかなかないものだと思います。ですが、私の場合はそれで考えが整理できクリアになりました。転職のタイミングだけではなく、どこかで時間を見つけて自己分析をして欲しいと思っています。
また、ADに挑戦し、営業に転職し、こうしてカスタマーサクセスの部署を立ち上げたのも、20代の若い内なら何でもできると思ったからです。不安に感じたり、慎重に判断するタイプの方もいると思いますが、経験なくして自信がつくことはありません。その意味でも、経験を積むことは大切なことなのではないでしょうか。
―小笠原さんの場合、テレビ業界への憧れからすぐにADに挑戦されましたが、そうは言っても転職は大きな決断です。一歩踏み出すためにはどうしたらいいでしょうか
一歩踏み出すことに勇気がいるのはすごく分かります。私の周りにもおなじように躊躇している人がたくさんいます。ただ、たくさん考えることも大事ではあるものの、2~3日考えるのと1ヵ月考えるのと数年にわたって考えるのにそれほど大きな差はないように感じるんです。一度失敗しても戻れるのが20代ですし、30代もそうかもしれません。20代でいられる時間も限られているので、無駄にはしたくないですよね。
それに、自分の人生とか選択を後々振り返った時に、「あぁ、あれをやっておけばよかった」とか「あの時の選択はダサかったな」とか思いたくなくて、将来的に後悔しないようにしようというのを大事に、選択するようにしています。
イーストフィールズ株式会社
2018年10月設立。「仕組みを変え、社会を変え、幸せな人生を増やす」をミッションに掲げ、フリーランスと企業のマッチングをサポートするプラットフォームサービス「Pro Connect」を運営。ベンチャーキャピタルからの資金調達なしに、創業4年で売上10億円突破、年平均3倍以上の成長を実現するなど異例のスピードで事業が伸長。今後は地方創生に寄与すべく地方へのサービス展開も視野に入れている。