2023.05.17INTERVIEW
多様な人材が活躍し、より自律的に、自分らしい働き方の実現を目指す。MIXIマーブルワークスタイルに迫る
株式会社MIXI
次世代エンターテインメント事業本部
TIPSTAR開発部
システム2グループ
マネージャー
萩原 涼介(はぎはら りょうすけ)様
労務部
労務企画グループ
西 花菜(にし はな)様
※所属部署・役職はいずれも取材時点のものとなります。
ソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」や、ひっぱりハンティングRPG「モンスターストライク」、競輪やオートレースの映像配信やネット投票を基本無料で楽しめる「TIPSTAR」など、様々なサービスを手掛ける株式会社MIXI。同社では新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2020年3月から全社的にリモートワークを導入していましたが、同年7月よりコロナ禍以降を見据えた新しい働き方として「マーブルワークスタイル」を試験的に始動させ、2022年4月より正式に制度化されました。これにより、部署ごとに最適な出社回数を選択できるようになったほか、フルリモートワークが可能となり、12時までに出社可能な範囲で日本全国どこにでも居住可能な働き方を実現しています。今回は同社・労務部の西さんに制度設計の背景や狙いを、そして制度を利用している萩原さんには、制度を利用しての働き方の変化に加え、フルリモートという環境でチームをどのようにマネジメントしているのかについてお話をうかがいました。
【マーブルワークスタイルとは】
2020年7月より試験運用が始まり、2022年4月に正式に制度化されたリモートワークとオフィスワークを融合した新しい働き方。従業員の多様なライフスタイルや価値観を大切にしつつ、生産性を上げることを目的としています。部署ごとに出社回数が選択でき、フルリモートワークも可能としています。また、従来は通勤可能範囲内での居住を基本としていましたが、日本全国に拡大。それに伴い、出社の際の交通手段も飛行機や新幹線にも広げています。2023年4月には制度を拡充し、一定期間好きな場所で働ける「マーブルロケーション」、フルフレックスの試験導入、自身や家族の体調不良時に利用できる「ケア休暇」、失効する有給休暇を上限40日積み立てられる「リザーブ休暇」の取得事由の拡大などを相次いで導入しています。
(西)MIXIには2018年の4月に中途入社しています。前職でも労務分野の業務を担当していましたが、より幅広い知識を身に付けたいという想いで転職しました。2019年に「働き方改革」が社会的に大きなテーマとなると、当社でも働き方改革に関するプロジェクトが立ち上がり、参加させていただきました。
当初は育児や介護などで時短勤務をしている社員の働き方の改善に着手しました。例えば、時短勤務になった場合にもフレキシブルに就業できる時短フレックス制の導入などに取り組みました。そして、2019年の夏ごろからリモートワークについても本格的に検証を始めたのですが、いざスタートしようとしたタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大という事態に直面したのです。
―そこから「マーブルワークスタイル」が出来上がっていったのですね。この制度はどんなことを狙いに作られたのでしょうか
(西)柔軟な働き方を実現するため、リモートワークとオフィスワークのどちらか一方ではなく、融合させることで、もっともパフォーマンスを高められるように制度設計をしました。これは個人の働き方だけにフォーカスしたものではなく、チームの働き方という視点ももって作られていることもポイントです。仕事の成果は個人だけではなく、チームが機能することで最大化されます。そこで、「自分にとって最適な働き方」ということだけではなく「チームにとって最適な働き方」が何かを考えていけるようにしました。
なお、リモートワークかオフィスワークか、どちらかに寄る会社もありますが、MIXIはどちらにも良さがあると感じています。それぞれの良いところを見出して、個人・チームが自律的に働き方をコーディネートしてもらいたいという思いも持っています。
そして、「マーブルワークスタイル」は2020年7月から試験的にスタートし、2022年4月に正式制度化しましたが、これまでの間にも適宜ブラッシュアップを続けています。そのため、現在が完成形であるとは考えていません。今後も柔軟な働き方に向けた取り組みを続けつつ、成果をきちんと出せる仕組みを考えていきたいと思っています。
―2020年の新型コロナウイルス感染拡大を皮切りとして、リモートワークは広まっていった印象ですが、MIXIではそれよりも前に取り組まれていたのですね
(西)2019年の時点でリモートワークは多様な人材が活躍する上で有効な手段であると考えていました。もっとも、当初は育児や介護などの特定の事由のある社員を想定していましたが、コロナ禍で全社一斉にリモートワークをせざるを得ない状況となりました。
本当にリモートワークでうまく仕事が進むのか、最初は不安に思う社員もいたと思いますが、やってみると「意外と良いよね」「そんなに業務に支障が出ないね」という声も上がってきました。そうした社員の声をアンケートから見ていましたので、コロナ禍に限った働き方ではなく、MIXI社の新しい働き方としようということで、「マーブルワークスタイル」に進化していったのです。
―「マーブルワークスタイル」ならではのポイントなどはありますか
(西)リモートワークとオフィスワークの融合とお伝えしましたが、まさにここがポイントになると思います。どちらにも良さがあるなかで、個人都合や会社指示でどちらかの働き方しか選べないということではなく、最も効率的な働き方はどれなのか、選択肢を提示しています。
そうした考えがベースとなって様々な取り決めをしており、例えば居住地については12時までに出社できる範囲と定めています。居住地の自由を掲げている中で、どうしても急な案件などで出社して打合せしないといけないこともありますが、そうした場合でも対応できるように制度設計しています。
それにオフィスワークの方が効率的に対応できる仕事もありますので、フルリモートで働けるといってもオフィスを縮小するという選択はとりません。
―リモートワークとオフィスワークのそれぞれの良さは、どういったものであると考えていますか
(西)まずリモートワークの良さは通勤時間削減に伴う時間の効率化という面があると思います。また、プライベートとの両立もしやすい働き方です。それに業務内容によっては、誰からも話しかけられない環境で黙々と進めた方が効率的である場合もありますよね。
一方でオフィスワークの良さはコラボレーション(協働)にあると思います。オンラインではどうしてもタイムラグが生まれてしまったり、ちょっとコミュニケーションをとりたいけどメールやチャットを打つのが面倒ということがあると思いますが、顔を合わせてコミュニケーションがとれる環境であれば、そうしたことはありません。また、相手の様子も分かりますのでコミュニケーションをとるにあたっても壁を感じることもないと思います。
(西)ある部署は毎週火曜日を出社日にするといった曜日固定制であったり、また別の部署は基本的にはフルリモートではあるものの月の出社回数が決まっていたりと様々ですが、それぞれのチームの状況に応じて出社回数を決めています。
また、業務上、出社頻度が低くても問題のない場合は「コミュニケーションを深くとる必要があるかどうか」を軸に決めている部署もあります。例えば新入社員が入社した部署は出社頻度を上げて会話する機会を設けていますし、ベテランの社員が多い場合にはそこまで増やす必要はないと判断し、月に1回の懇親会で顔を合わせるといったこともありますね。
当初は全社で出社日を決めようと考えたこともありましたが、各部署にヒアリングをすると必要とする出社頻度はバラバラでした。つまり、一律で出社頻度を定めることでプラスに働く部署もあれば、マイナスに働く部署もあるので、そこで部署別に設定することにしました。
―正社員だけではなく、アルバイトの方まで制度対象としていることも驚きです
(西)アルバイトや契約社員といった雇用形態で制度を決めるのではなく、その個人の業務やステータスに応じて出社頻度を決めるべきだと思っています。部門長が一人ひとりをみてリモートワークがいいのかオフィスワークが良いのかを決めるということも、自律に繋がると考えています。
―「マーブルワークスタイル」を導入したことによって、どのような効果がもたらされているのでしょうか
(西)社員一人ひとりが「個人の自律」を意識するようになったと感じています。オフィスワークが中心の時は、出社をするだけで仕事をしているように感じていた人もいたかもしれませんが、リモートワークが織り交ざることで個人の成果やどのようなアウトプットをしたのかという点が顕著に見えてくるようになりましたし、それが評価軸になっていきました。
そのため、より一人ひとりの責任や自律が求められるようになったのです。「マーブルワークスタイル」が導入されたからと言って、決して楽に働けるようになったというわけではありません。会社としてもそのメッセージはしっかりと発信する必要があると感じており、色々なコミュニケーション施策によって社員に少しずつ浸透させていっています。
―現在の内容が完成形ではないとお話いただきました。「マーブルワークスタイル」を今後どのように発展させていきたいとお考えでしょうか
(西)制度の根底には「多様な人材が活躍できるようにしたい」という想いが込められており、それが最終的な目的です。様々なライフスタイルや価値観を持っている人が、働く時間、働く場所などで制約されることなく、より成果を上げるためにはどうすれば良いのかということを考え続けています。
一例を挙げると、4月からは事前申請制で1ヵ月ほどの期間を限定して、旅行先や実家といった第三の場所で働ける「マーブルロケーション」を導入します。働く場所に選択肢を増やすということです。また、働く時間については、コアタイムのないフルフレックス制を試験的に導入します。コアタイムがないことが当社に合うのかどうかは分かりませんが、様々な取り組みを通じて、多様な人材の活躍を後押ししていきたいですね。
(西)「マーブルワークスタイル」の導入以前から1on1を大切にする文化が根付いていました。人によっては週1~2回の頻度で上司と面談し、そこで成果の上げ方について一緒に考えています。そうした機会が多いことが、個人の自律や成果を上げるために役立っていると考えています。
また、コロナ禍になってから「よろず相談窓口」というものを開設しました。自分の健康やキャリアのことなど、時には直属の上司に相談しにくいこともあると思いますが、人事部が相談に乗ることで個々の悩みや課題を解決に導く手助けをしていくことを目的としています。
―読者の中にはなかなか自分のことを吐きだす場がない方もいるかもしれません
(西)1on1や「よろず相談窓口」は自分の悩みや問題意識をアウトプットする場です。自らの言葉にすることで自分自身を客観的に捉えることができますので、たとえ所属している会社にそうした制度がなかったとしても、同僚に話をしてみたり、上司に相談してみたりといったことはできるかもしれません。
ただし「自分らしく働く」ことは大切ですが、だからといって「自分らしく働かせてください!」と権利を主張するだけでは実現できません。大切なことは働き方の選択肢を増やすためにどんな自律的な行動をとり、周囲に信頼してもらえるかにあると思います。それによって、「自分らしく働く」ということがどういうことなのかが見えてくると思うので、その人にあった働き方を見つけて欲しいですね。
―介護や育児といった事情や「地元で働きたい」といった明確な意思のない場合、いざ、働き方の選択肢が増えたときに、どんな基準で「自分らしい働き方」を見つけたらいいのでしょう
(西)特別な事情や明確な意思がなかったとしても、例えば自分が一番リフレッシュできる方法から探ってみるということも一つの方法です。ここ数年にわたって働き方を考えていくと、プライベートの時間での発見や気づきが仕事のパフォーマンスに大きく影響することも分かってきました。そのため、「働き方」だけでなく「休み方」も大事だと考えています。
人生において仕事は一部分にすぎません。MIXIでは社員に充実した生活を送ってもらえるようにすることで、結果として仕事のパフォーマンスが向上し、会社の業績が上がっていくと考えて、自分らしい、自律的な働き方の実現を後押ししていきたいと思っています。
―ここからは「マーブルワークスタイル」の制度を実際に活用している萩原さんにお話を伺います。まずは簡単にご経歴を教えてください
(萩原)高等専門学校でプログラミングなどを専攻していました。就職先を探すにあたって、まずは企業のインターンシップに参加したいと思い、イベントで出会ったのがMIXIでした。インターンシップは1ヵ月半ほどのプログラムでしたが、サービスの開発業務にも携わることができ、学生にもこんなに裁量を与えてくれるのかと感激しました。また、コミュニケーションも取りやすい方も多く、そうした社員の人柄の良さもあって、2018年に新卒で入社しました。
入社後はサロンスタッフ予約アプリ「minimo(ミニモ)」を担当し、サーバサイドエンジニアとして業務をスタートしました。ただ、サーバサイドの領域にとどまらず、チーム内にある課題の抽出・解決や、カスタマーサポートチームが使っている社内向け管理システムの改修、リスティング広告を出稿する際のキーワード選定に携わるなど、開発から運用までサービスづくり全般の業務を担当していました。
そして2020年6月から「TIPSTAR」というプロダクトをつくっている部署に異動しました。技術者としてのスキルをもっと高めたいという想いからで、当時も今も先端の技術を駆使していたり、社内でもスキルの高いエンジニアが参加しているというのを聞いてのことでした。そこでも、まずはサーバサイドエンジニアの業務からスタートし、システム2グループを立ち上げ2021年4月からマネージャーに着任しました。サービスの安定稼働やデータ基盤を整えるといった業務を主に担っています。
―入社当初は「マーブルワークスタイル」の導入前でしたが、どのような働き方や生活を送っていたのでしょうか
(萩原)MIXIに入社したタイミングで上京し、会社の近くで一人暮らしをしていました。毎朝出社し、当時はコアタイムが10時からのフレックス勤務だったため、10時には出社して業務に臨んでいました。朝のMTGを実施し、同僚と話をしながら仕事を進め、ランチを食べて・・・といった毎日でしたね。基本的に19時まで勤務していましたが、時には早めに退社して気分転換に散歩したり、といったこともありました。
現在は福岡に移住していますが、それまでは自分の生活の中心は仕事だったと思います。仕事が好きだということもありますが、寝ても覚めても仕事のことを考えていましたし、気分転換に散歩をしている時も頭のどこかでは仕事のことを考えていました。
―そして新型コロナウイルス感染拡大に伴って、リモートワークがスタートしたんですね
(萩原)当初は色々なことにストレスを感じていました。狭い部屋で朝を迎え、目が覚めたらそのまま仕事し、昼食時もそのまま仕事し、周りの目もないことから夜も際限なく仕事をしていました。それに、食事の自炊をする気が起きないときには宅配サービスを使っていたのでお金がかかることにもストレスを感じていましたね。それまでも仕事中心の生活だったとはいえ、オフィスとの行き来がなくなったことで切り換えができなくなっていたんです。また、ずっと家にいることで体重が増えるといった健康面にも影響を及ぼすようになり、これもまたストレスに繋がっていきました。
それに加えて対面で人と話す機会も失われてしまった寂しさもあり、振り返ると当時の自分のコンディションは非常に不安定なものだったように思います。
(萩原)「マーブルワークスタイル」導入の前から広い部屋に住みたいという思いがあって、当初はつくばに住むことも考えていました。実際に現地への下見までしていましたね。そんなときに「日本各地、どこに住んでも良いですよ」と会社に言われ、それであれば首都圏にこだわる必要もないと考えたんです。地元が田舎だったこともあり、東京に慣れきれないというか、せわしく生活をするのではなく、落ち着いた環境で暮らしたいと思ったんです。それに、仕事中心のままリモートワークをしていたことが大きなストレスにもなっていたので、もう少し自分の好きなことに取り組んでも良いのではないかとも思いました。
実は福岡は地元ではなく、縁もゆかりもないところです。ただ、学生時代に何度か行ったことがあったのと、食事も美味しいところですので、選びました。ただ、スパッと決断したのではなく、周囲から「まだ福岡行かないの?」と言われ続けて移住を決めたんです(笑)
―そうは言っても大きな決断ですよね
(萩原)「大きな決断」というほどでもないと思っています。福岡と言っても博多や天神にも近いエリアなので生活にも便利です。それに、東京にいたときに東京でなければできないことをしていたわけでもありませんでした。会社があるからという理由だけで東京に住んでいたので、むしろ自分が住みたいと思う福岡の方がしっくりきましたね。
―仕事中心の考え方から転換していったということですが、どんなことがきっかけとなったのでしょう
(萩原)マネージャーに就く前後のタイミングで、自分自身の仕事の責任の重さを感じることが増えてきました。その責任だけを抱えて生活していては、いつか自分は潰れてしまうと思ったんです。また、「自分には仕事しかない」ということに焦りも感じていました。仕事だけでは世界は広がらないですし、今後、自分らしく生きるために無理やりにでも環境を変えないといけないと考えました。
―その後、生活・仕事の両面においてどのような変化が起きたのでしょうか
(萩原)どちらも見違えるほど変わりました。生活面ではとにかく食事が美味しくなりましたね(笑)ただ、これはバカにはできないことで、地元のスーパーに売っている食材が美味しく、しかも安いというのは生活の質も上がって仕事のパフォーマンスの向上にもつながったように思います。それに、そんな日常のことがチーム内での雑談のネタにもなっています。
仕事面においても、私生活が満たされて気分転換がうまくできるようになった分、パフォーマンスが上がりましたし、やりたいことがあると、そのためにきちんと時間を決めて集中して仕事に取り組むようになったので、時間あたりの生産性も上がっていきました。
また、プロジェクトの細かな進行状況や、誰が何をしたのかといったことを見える化し、一元管理する必要があります。オフィスで仕事していたころは、会話する中でなんとなく把握していた面もありましたが、一人ひとりの働きが目に見えるようになったので、チーム全体がパフォーマンスを発揮することを意識するようになったと思います。
(萩原)出社回数を決める議論もありましたが、エンジニアという仕事柄、自宅での方が働きやすい環境をつくれるという意見が多かったのです。その方がパフォーマンス向上に繋がるのであれば無理に出社させる理由もありません。もちろん、最初からうまくいくというものではありませんでした。「この人は忙しそうだけど、本当に忙しいのか分からないし、話しかけにくいよね」といったコミュニケーションが円滑にとれないこともありました。
ただ、そうした一つ一つを組織の課題として捉え、解決していくことを通じていくことで、フルリモートでもチーム全体を把握できるようになりました。うまくマネジメントしながらパフォーマンスの高い状態をつくるという目的を達成することができたんです。
―コミュニケーションがとりにくいという課題をどのように解決されたのでしょうか。また、メンバーとの意思疎通ではどんな工夫をされているのでしょうか
(萩原)オフィスに出社していたころのミーティングは、何か課題があるときに行うものでしたが、それを改めました。定例開催の形式とし、テーマを決めて話し合うミーティングと、毎週末に雑談ベースで行う振り返りミーティングを実施することにしたんです。
特に振り返りミーティングは効果的で、仕事についてはもちろんですが、「最近ジムを契約した」とか「足をねん挫した」とかそういう他愛のないことも話し始めるようになったんですよね(笑)。そんな風に、徐々に仕事以外のこともお互いに自己開示をするようになっていきました。もともとメンバー間の仲が良かったので、Slackなどでも頻繁に会話をしていましたが、より一層、深いコミュニケ-ションをとることができるようになったと思います。
―ここまでお話いただきありがとうございました。最後に、フルリモートの環境で働き、マネジメントをしている萩原さんの視点から、成果を上げる働き方を実現するために必要なこととは何か、お考えを聞かせてください
(萩原)マネジメントの観点でいうと、セルフケアが重要だと思っています。自分自身が健康に働けるように各人が意識するようにならないと、やはり働き続けることはできません。お互いに顔を直接見ることができないからこそ、一層大事になるポイントじゃないかと思っています。
また、仕事以外で自分が本当に取り組んでみたいことを見つけることも大切です。仕事だけで幸せになれる人がいるならばそれでも良いと思いますが、何か夢中にあることがないと続かないものです。ストレス発散のためでもありますが、自分の人生を充実したものとするためには、仕事と自分が夢中になれることのバランスをうまく調整する必要があって、それができることが「マーブルワークスタイル」が目指している、自律した働き方なのではないかと思いますね。
株式会社MIXI
1999年6月3日設立。「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスに掲げ、大胆な発想で「スポーツ」「デジタルエンターテインメント」「ライフスタイル」の各領域で様々なサービスを展開。楽しく、ワクワクするようなコンテンツと、それを通じて仲間や家族とエモーション(感情)を分かち合う「心もつなぐ」場と機会を創造し続けている。
次世代エンターテインメント事業本部
TIPSTAR開発部
システム2グループ
マネージャー
萩原 涼介(はぎはら りょうすけ)様
労務部
労務企画グループ
西 花菜(にし はな)様
※所属部署・役職はいずれも取材時点のものとなります。
ソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」や、ひっぱりハンティングRPG「モンスターストライク」、競輪やオートレースの映像配信やネット投票を基本無料で楽しめる「TIPSTAR」など、様々なサービスを手掛ける株式会社MIXI。同社では新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2020年3月から全社的にリモートワークを導入していましたが、同年7月よりコロナ禍以降を見据えた新しい働き方として「マーブルワークスタイル」を試験的に始動させ、2022年4月より正式に制度化されました。これにより、部署ごとに最適な出社回数を選択できるようになったほか、フルリモートワークが可能となり、12時までに出社可能な範囲で日本全国どこにでも居住可能な働き方を実現しています。今回は同社・労務部の西さんに制度設計の背景や狙いを、そして制度を利用している萩原さんには、制度を利用しての働き方の変化に加え、フルリモートという環境でチームをどのようにマネジメントしているのかについてお話をうかがいました。
【マーブルワークスタイルとは】
2020年7月より試験運用が始まり、2022年4月に正式に制度化されたリモートワークとオフィスワークを融合した新しい働き方。従業員の多様なライフスタイルや価値観を大切にしつつ、生産性を上げることを目的としています。部署ごとに出社回数が選択でき、フルリモートワークも可能としています。また、従来は通勤可能範囲内での居住を基本としていましたが、日本全国に拡大。それに伴い、出社の際の交通手段も飛行機や新幹線にも広げています。2023年4月には制度を拡充し、一定期間好きな場所で働ける「マーブルロケーション」、フルフレックスの試験導入、自身や家族の体調不良時に利用できる「ケア休暇」、失効する有給休暇を上限40日積み立てられる「リザーブ休暇」の取得事由の拡大などを相次いで導入しています。
個人・チームの自律的な働き方を促す「マーブルワークスタイル」
―西さんは労務部で「マーブルワークスタイル」の制度設計・運用などをされているそうですね。まずはどのような経歴で現在のお仕事を担当されるようになったのか教えてください(西)MIXIには2018年の4月に中途入社しています。前職でも労務分野の業務を担当していましたが、より幅広い知識を身に付けたいという想いで転職しました。2019年に「働き方改革」が社会的に大きなテーマとなると、当社でも働き方改革に関するプロジェクトが立ち上がり、参加させていただきました。
当初は育児や介護などで時短勤務をしている社員の働き方の改善に着手しました。例えば、時短勤務になった場合にもフレキシブルに就業できる時短フレックス制の導入などに取り組みました。そして、2019年の夏ごろからリモートワークについても本格的に検証を始めたのですが、いざスタートしようとしたタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大という事態に直面したのです。
―そこから「マーブルワークスタイル」が出来上がっていったのですね。この制度はどんなことを狙いに作られたのでしょうか
(西)柔軟な働き方を実現するため、リモートワークとオフィスワークのどちらか一方ではなく、融合させることで、もっともパフォーマンスを高められるように制度設計をしました。これは個人の働き方だけにフォーカスしたものではなく、チームの働き方という視点ももって作られていることもポイントです。仕事の成果は個人だけではなく、チームが機能することで最大化されます。そこで、「自分にとって最適な働き方」ということだけではなく「チームにとって最適な働き方」が何かを考えていけるようにしました。
なお、リモートワークかオフィスワークか、どちらかに寄る会社もありますが、MIXIはどちらにも良さがあると感じています。それぞれの良いところを見出して、個人・チームが自律的に働き方をコーディネートしてもらいたいという思いも持っています。
そして、「マーブルワークスタイル」は2020年7月から試験的にスタートし、2022年4月に正式制度化しましたが、これまでの間にも適宜ブラッシュアップを続けています。そのため、現在が完成形であるとは考えていません。今後も柔軟な働き方に向けた取り組みを続けつつ、成果をきちんと出せる仕組みを考えていきたいと思っています。
―2020年の新型コロナウイルス感染拡大を皮切りとして、リモートワークは広まっていった印象ですが、MIXIではそれよりも前に取り組まれていたのですね
(西)2019年の時点でリモートワークは多様な人材が活躍する上で有効な手段であると考えていました。もっとも、当初は育児や介護などの特定の事由のある社員を想定していましたが、コロナ禍で全社一斉にリモートワークをせざるを得ない状況となりました。
本当にリモートワークでうまく仕事が進むのか、最初は不安に思う社員もいたと思いますが、やってみると「意外と良いよね」「そんなに業務に支障が出ないね」という声も上がってきました。そうした社員の声をアンケートから見ていましたので、コロナ禍に限った働き方ではなく、MIXI社の新しい働き方としようということで、「マーブルワークスタイル」に進化していったのです。
―「マーブルワークスタイル」ならではのポイントなどはありますか
(西)リモートワークとオフィスワークの融合とお伝えしましたが、まさにここがポイントになると思います。どちらにも良さがあるなかで、個人都合や会社指示でどちらかの働き方しか選べないということではなく、最も効率的な働き方はどれなのか、選択肢を提示しています。
そうした考えがベースとなって様々な取り決めをしており、例えば居住地については12時までに出社できる範囲と定めています。居住地の自由を掲げている中で、どうしても急な案件などで出社して打合せしないといけないこともありますが、そうした場合でも対応できるように制度設計しています。
それにオフィスワークの方が効率的に対応できる仕事もありますので、フルリモートで働けるといってもオフィスを縮小するという選択はとりません。
―リモートワークとオフィスワークのそれぞれの良さは、どういったものであると考えていますか
(西)まずリモートワークの良さは通勤時間削減に伴う時間の効率化という面があると思います。また、プライベートとの両立もしやすい働き方です。それに業務内容によっては、誰からも話しかけられない環境で黙々と進めた方が効率的である場合もありますよね。
一方でオフィスワークの良さはコラボレーション(協働)にあると思います。オンラインではどうしてもタイムラグが生まれてしまったり、ちょっとコミュニケーションをとりたいけどメールやチャットを打つのが面倒ということがあると思いますが、顔を合わせてコミュニケーションがとれる環境であれば、そうしたことはありません。また、相手の様子も分かりますのでコミュニケーションをとるにあたっても壁を感じることもないと思います。
多様な人材が活躍し続けられるように、常にブラッシュアップを続けていく
―リモートワークを導入している企業の中には全社的に出社日のルールを統一することもありますが、部署別に出社回数が設定できるのも特徴的ですね(西)ある部署は毎週火曜日を出社日にするといった曜日固定制であったり、また別の部署は基本的にはフルリモートではあるものの月の出社回数が決まっていたりと様々ですが、それぞれのチームの状況に応じて出社回数を決めています。
また、業務上、出社頻度が低くても問題のない場合は「コミュニケーションを深くとる必要があるかどうか」を軸に決めている部署もあります。例えば新入社員が入社した部署は出社頻度を上げて会話する機会を設けていますし、ベテランの社員が多い場合にはそこまで増やす必要はないと判断し、月に1回の懇親会で顔を合わせるといったこともありますね。
当初は全社で出社日を決めようと考えたこともありましたが、各部署にヒアリングをすると必要とする出社頻度はバラバラでした。つまり、一律で出社頻度を定めることでプラスに働く部署もあれば、マイナスに働く部署もあるので、そこで部署別に設定することにしました。
―正社員だけではなく、アルバイトの方まで制度対象としていることも驚きです
(西)アルバイトや契約社員といった雇用形態で制度を決めるのではなく、その個人の業務やステータスに応じて出社頻度を決めるべきだと思っています。部門長が一人ひとりをみてリモートワークがいいのかオフィスワークが良いのかを決めるということも、自律に繋がると考えています。
―「マーブルワークスタイル」を導入したことによって、どのような効果がもたらされているのでしょうか
(西)社員一人ひとりが「個人の自律」を意識するようになったと感じています。オフィスワークが中心の時は、出社をするだけで仕事をしているように感じていた人もいたかもしれませんが、リモートワークが織り交ざることで個人の成果やどのようなアウトプットをしたのかという点が顕著に見えてくるようになりましたし、それが評価軸になっていきました。
そのため、より一人ひとりの責任や自律が求められるようになったのです。「マーブルワークスタイル」が導入されたからと言って、決して楽に働けるようになったというわけではありません。会社としてもそのメッセージはしっかりと発信する必要があると感じており、色々なコミュニケーション施策によって社員に少しずつ浸透させていっています。
―現在の内容が完成形ではないとお話いただきました。「マーブルワークスタイル」を今後どのように発展させていきたいとお考えでしょうか
(西)制度の根底には「多様な人材が活躍できるようにしたい」という想いが込められており、それが最終的な目的です。様々なライフスタイルや価値観を持っている人が、働く時間、働く場所などで制約されることなく、より成果を上げるためにはどうすれば良いのかということを考え続けています。
一例を挙げると、4月からは事前申請制で1ヵ月ほどの期間を限定して、旅行先や実家といった第三の場所で働ける「マーブルロケーション」を導入します。働く場所に選択肢を増やすということです。また、働く時間については、コアタイムのないフルフレックス制を試験的に導入します。コアタイムがないことが当社に合うのかどうかは分かりませんが、様々な取り組みを通じて、多様な人材の活躍を後押ししていきたいですね。
自分の想いをアウトプットし、選択肢を増やすための行動を起こすことが第一歩
―「マーブルワークスタイル」によって個人の自律や成果をより求められるようになったそうですが、それを根付かせるために会社として取り組んでいることがあれば教えてください(西)「マーブルワークスタイル」の導入以前から1on1を大切にする文化が根付いていました。人によっては週1~2回の頻度で上司と面談し、そこで成果の上げ方について一緒に考えています。そうした機会が多いことが、個人の自律や成果を上げるために役立っていると考えています。
また、コロナ禍になってから「よろず相談窓口」というものを開設しました。自分の健康やキャリアのことなど、時には直属の上司に相談しにくいこともあると思いますが、人事部が相談に乗ることで個々の悩みや課題を解決に導く手助けをしていくことを目的としています。
―読者の中にはなかなか自分のことを吐きだす場がない方もいるかもしれません
(西)1on1や「よろず相談窓口」は自分の悩みや問題意識をアウトプットする場です。自らの言葉にすることで自分自身を客観的に捉えることができますので、たとえ所属している会社にそうした制度がなかったとしても、同僚に話をしてみたり、上司に相談してみたりといったことはできるかもしれません。
ただし「自分らしく働く」ことは大切ですが、だからといって「自分らしく働かせてください!」と権利を主張するだけでは実現できません。大切なことは働き方の選択肢を増やすためにどんな自律的な行動をとり、周囲に信頼してもらえるかにあると思います。それによって、「自分らしく働く」ということがどういうことなのかが見えてくると思うので、その人にあった働き方を見つけて欲しいですね。
―介護や育児といった事情や「地元で働きたい」といった明確な意思のない場合、いざ、働き方の選択肢が増えたときに、どんな基準で「自分らしい働き方」を見つけたらいいのでしょう
(西)特別な事情や明確な意思がなかったとしても、例えば自分が一番リフレッシュできる方法から探ってみるということも一つの方法です。ここ数年にわたって働き方を考えていくと、プライベートの時間での発見や気づきが仕事のパフォーマンスに大きく影響することも分かってきました。そのため、「働き方」だけでなく「休み方」も大事だと考えています。
人生において仕事は一部分にすぎません。MIXIでは社員に充実した生活を送ってもらえるようにすることで、結果として仕事のパフォーマンスが向上し、会社の業績が上がっていくと考えて、自分らしい、自律的な働き方の実現を後押ししていきたいと思っています。
仕事中心の生活とストレスフルなリモートワーク開始当初の生活
―ここからは「マーブルワークスタイル」の制度を実際に活用している萩原さんにお話を伺います。まずは簡単にご経歴を教えてください(萩原)高等専門学校でプログラミングなどを専攻していました。就職先を探すにあたって、まずは企業のインターンシップに参加したいと思い、イベントで出会ったのがMIXIでした。インターンシップは1ヵ月半ほどのプログラムでしたが、サービスの開発業務にも携わることができ、学生にもこんなに裁量を与えてくれるのかと感激しました。また、コミュニケーションも取りやすい方も多く、そうした社員の人柄の良さもあって、2018年に新卒で入社しました。
入社後はサロンスタッフ予約アプリ「minimo(ミニモ)」を担当し、サーバサイドエンジニアとして業務をスタートしました。ただ、サーバサイドの領域にとどまらず、チーム内にある課題の抽出・解決や、カスタマーサポートチームが使っている社内向け管理システムの改修、リスティング広告を出稿する際のキーワード選定に携わるなど、開発から運用までサービスづくり全般の業務を担当していました。
そして2020年6月から「TIPSTAR」というプロダクトをつくっている部署に異動しました。技術者としてのスキルをもっと高めたいという想いからで、当時も今も先端の技術を駆使していたり、社内でもスキルの高いエンジニアが参加しているというのを聞いてのことでした。そこでも、まずはサーバサイドエンジニアの業務からスタートし、システム2グループを立ち上げ2021年4月からマネージャーに着任しました。サービスの安定稼働やデータ基盤を整えるといった業務を主に担っています。
―入社当初は「マーブルワークスタイル」の導入前でしたが、どのような働き方や生活を送っていたのでしょうか
(萩原)MIXIに入社したタイミングで上京し、会社の近くで一人暮らしをしていました。毎朝出社し、当時はコアタイムが10時からのフレックス勤務だったため、10時には出社して業務に臨んでいました。朝のMTGを実施し、同僚と話をしながら仕事を進め、ランチを食べて・・・といった毎日でしたね。基本的に19時まで勤務していましたが、時には早めに退社して気分転換に散歩したり、といったこともありました。
現在は福岡に移住していますが、それまでは自分の生活の中心は仕事だったと思います。仕事が好きだということもありますが、寝ても覚めても仕事のことを考えていましたし、気分転換に散歩をしている時も頭のどこかでは仕事のことを考えていました。
―そして新型コロナウイルス感染拡大に伴って、リモートワークがスタートしたんですね
(萩原)当初は色々なことにストレスを感じていました。狭い部屋で朝を迎え、目が覚めたらそのまま仕事し、昼食時もそのまま仕事し、周りの目もないことから夜も際限なく仕事をしていました。それに、食事の自炊をする気が起きないときには宅配サービスを使っていたのでお金がかかることにもストレスを感じていましたね。それまでも仕事中心の生活だったとはいえ、オフィスとの行き来がなくなったことで切り換えができなくなっていたんです。また、ずっと家にいることで体重が増えるといった健康面にも影響を及ぼすようになり、これもまたストレスに繋がっていきました。
それに加えて対面で人と話す機会も失われてしまった寂しさもあり、振り返ると当時の自分のコンディションは非常に不安定なものだったように思います。
「マーブルワークスタイル」が働くことへの向き合い方を変えた
―そうした中で「マーブルワークスタイル」がスタートし、福岡に移住されたそうですね(萩原)「マーブルワークスタイル」導入の前から広い部屋に住みたいという思いがあって、当初はつくばに住むことも考えていました。実際に現地への下見までしていましたね。そんなときに「日本各地、どこに住んでも良いですよ」と会社に言われ、それであれば首都圏にこだわる必要もないと考えたんです。地元が田舎だったこともあり、東京に慣れきれないというか、せわしく生活をするのではなく、落ち着いた環境で暮らしたいと思ったんです。それに、仕事中心のままリモートワークをしていたことが大きなストレスにもなっていたので、もう少し自分の好きなことに取り組んでも良いのではないかとも思いました。
実は福岡は地元ではなく、縁もゆかりもないところです。ただ、学生時代に何度か行ったことがあったのと、食事も美味しいところですので、選びました。ただ、スパッと決断したのではなく、周囲から「まだ福岡行かないの?」と言われ続けて移住を決めたんです(笑)
―そうは言っても大きな決断ですよね
(萩原)「大きな決断」というほどでもないと思っています。福岡と言っても博多や天神にも近いエリアなので生活にも便利です。それに、東京にいたときに東京でなければできないことをしていたわけでもありませんでした。会社があるからという理由だけで東京に住んでいたので、むしろ自分が住みたいと思う福岡の方がしっくりきましたね。
―仕事中心の考え方から転換していったということですが、どんなことがきっかけとなったのでしょう
(萩原)マネージャーに就く前後のタイミングで、自分自身の仕事の責任の重さを感じることが増えてきました。その責任だけを抱えて生活していては、いつか自分は潰れてしまうと思ったんです。また、「自分には仕事しかない」ということに焦りも感じていました。仕事だけでは世界は広がらないですし、今後、自分らしく生きるために無理やりにでも環境を変えないといけないと考えました。
―その後、生活・仕事の両面においてどのような変化が起きたのでしょうか
(萩原)どちらも見違えるほど変わりました。生活面ではとにかく食事が美味しくなりましたね(笑)ただ、これはバカにはできないことで、地元のスーパーに売っている食材が美味しく、しかも安いというのは生活の質も上がって仕事のパフォーマンスの向上にもつながったように思います。それに、そんな日常のことがチーム内での雑談のネタにもなっています。
仕事面においても、私生活が満たされて気分転換がうまくできるようになった分、パフォーマンスが上がりましたし、やりたいことがあると、そのためにきちんと時間を決めて集中して仕事に取り組むようになったので、時間あたりの生産性も上がっていきました。
また、プロジェクトの細かな進行状況や、誰が何をしたのかといったことを見える化し、一元管理する必要があります。オフィスで仕事していたころは、会話する中でなんとなく把握していた面もありましたが、一人ひとりの働きが目に見えるようになったので、チーム全体がパフォーマンスを発揮することを意識するようになったと思います。
パフォーマンス最大化とコミュニケーションの円滑化。マネージャーとして意識したこと
―萩原さんのチームでは出社回数を設定せず、フルリモートでの働き方を選ばれているそうですね(萩原)出社回数を決める議論もありましたが、エンジニアという仕事柄、自宅での方が働きやすい環境をつくれるという意見が多かったのです。その方がパフォーマンス向上に繋がるのであれば無理に出社させる理由もありません。もちろん、最初からうまくいくというものではありませんでした。「この人は忙しそうだけど、本当に忙しいのか分からないし、話しかけにくいよね」といったコミュニケーションが円滑にとれないこともありました。
ただ、そうした一つ一つを組織の課題として捉え、解決していくことを通じていくことで、フルリモートでもチーム全体を把握できるようになりました。うまくマネジメントしながらパフォーマンスの高い状態をつくるという目的を達成することができたんです。
―コミュニケーションがとりにくいという課題をどのように解決されたのでしょうか。また、メンバーとの意思疎通ではどんな工夫をされているのでしょうか
(萩原)オフィスに出社していたころのミーティングは、何か課題があるときに行うものでしたが、それを改めました。定例開催の形式とし、テーマを決めて話し合うミーティングと、毎週末に雑談ベースで行う振り返りミーティングを実施することにしたんです。
特に振り返りミーティングは効果的で、仕事についてはもちろんですが、「最近ジムを契約した」とか「足をねん挫した」とかそういう他愛のないことも話し始めるようになったんですよね(笑)。そんな風に、徐々に仕事以外のこともお互いに自己開示をするようになっていきました。もともとメンバー間の仲が良かったので、Slackなどでも頻繁に会話をしていましたが、より一層、深いコミュニケ-ションをとることができるようになったと思います。
―ここまでお話いただきありがとうございました。最後に、フルリモートの環境で働き、マネジメントをしている萩原さんの視点から、成果を上げる働き方を実現するために必要なこととは何か、お考えを聞かせてください
(萩原)マネジメントの観点でいうと、セルフケアが重要だと思っています。自分自身が健康に働けるように各人が意識するようにならないと、やはり働き続けることはできません。お互いに顔を直接見ることができないからこそ、一層大事になるポイントじゃないかと思っています。
また、仕事以外で自分が本当に取り組んでみたいことを見つけることも大切です。仕事だけで幸せになれる人がいるならばそれでも良いと思いますが、何か夢中にあることがないと続かないものです。ストレス発散のためでもありますが、自分の人生を充実したものとするためには、仕事と自分が夢中になれることのバランスをうまく調整する必要があって、それができることが「マーブルワークスタイル」が目指している、自律した働き方なのではないかと思いますね。
株式会社MIXI
1999年6月3日設立。「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスに掲げ、大胆な発想で「スポーツ」「デジタルエンターテインメント」「ライフスタイル」の各領域で様々なサービスを展開。楽しく、ワクワクするようなコンテンツと、それを通じて仲間や家族とエモーション(感情)を分かち合う「心もつなぐ」場と機会を創造し続けている。