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2024.02.21INTERVIEW

デザインコンペ受賞率9割超。個人のSNSフォロワーは30万人。1分でアイデアを生み出す“アイデアクリエイター”となるために必要なこととは?

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
LINEヤフー株式会社
マーケティング統括本部 クリエイティブ推進部 デザイナー
石川 和也(いしかわ かずや)様


東日本大震災の復興支援・風化防止などを目的としたキャンペーン「SEARCH FOR 3.11 検索は、チカラになる。」のビジュアルデザインなど、多くの方が一度は目にしたことのあるようなデザインを手掛ける石川さん。LINEヤフーでの活躍に加え、副業ではイベント会社のCOOや多数のデザインコンペでの受賞歴を誇る(受賞率9割以上)ほか、アイデアクリエイターとしての個人活動(個人SNSのフォロワーは約30万人)も行うなど、多彩な活動をされています。今回は石川さんのご経歴に加え、数々のアイデアを武器に仕事をするうえで必要なこと、そして会社員、経営者、個人として様々な立場を行き来しながら仕事をするとはどのようなものなのか、お話を伺いました。

<デザインコンペ受賞実績(一例)>
■ 第24回 サンスター文具アイデアコンテスト 審査員特別賞
■ 第24回 サンスター文具アイデアコンテスト グランプリ
■ コクヨデザイナワード 2020 ファイナリスト
■ 12th SHACHIHATA New Product Design Competition 準グランプリ
■ 13th SHACHIHATA New Product Design Competition 準グランプリ
■ 14th SHACHIHATA New Product Design Competition 原研哉賞
■ Plastic Design & Story Award 2018 入選

アイデア事例として「四角いガムテープ」や「真ん中に溝がある定規」、「繁華街になる付箋」など、SNSや各種メディアで話題となったありそうでなかった文房具などを生み出しています

学生時代に学んだこととは全く違う世界へ。LINEヤフーへの入社理由

―多彩な活動をされている石川さんですが、まずはなぜLINEヤフー(当時のヤフー株式会社)に入社されたのかから教えてください

(石川)大学時代はプロダクトデザインを学んでいましたので、ITやWebに関する知識があったわけではありませんでした。ただ、いろいろな企業の面接を受けていく中で、当社の採用面接が最も印象的だったんです。テンプレートに縛られない面接形式で、最終的には夢を語り合うような内容で、純粋にこの人たちと一緒に働いてみたいと思いました。

当時から「何を仕事にするか」よりも「どんな環境で働くか」を重視しており、「人」は入社先を決めるうえでとても重要なポイントでした。入社してみて、この会社には魅力的な人がたくさんいますし、今でも入社して良かったなと感じています。

環境という意味では、福利厚生が整っていることも後押しになりました。好きな場所で働くことができるリモートワーク制度なども、「こんな働き方できるのか」とワクワクしたことを覚えています。

―プロダクトデザインを学ばれたのにIT企業を志望されたんですか

(石川)プロダクトデザインを学んだからと言ってメーカーなどの専攻が活かせるような会社に行くことが納得できなかったんです。大学の時に学んでいたこととは違う世界にあえて飛び込んでみるのも選択肢としてあり得ると思っていました。実際に僕自身、いろんなことに興味を持っていて、大学入学時はインテリアデザインをやってみたかったですし、その後はいろんな影響を受けてプロダクトデザインを学びましたし、さらにその中でも車という特殊な領域にも手を出すなど、興味を持ったらかじってみるということをしていました。

そして、大学でまなんだことは一区切りつけて、就職活動のタイミングで全くやったことのない領域に進もうと決めました。それに、プロダクトデザインの世界は比較的年齢層の高い方が活躍する傾向にある中で、IT業界は若い方も活躍されているので、同世代と一緒に仕事したいという気持ちもありました。

そんな人だったんで、入社後も人事は僕をどこに配属させるか迷ったんでしょうね(笑)。配属先を知らせるときに、一人ひとり呼ばれて通知を受けるのですが、僕だけ最後の方まで呼ばれず、いよいよ呼ばれたと思ったらコーポレート領域のデザイナーとしての配属でした。同期みんながビジネス領域に配属になっていましたので、逆にこれはおいしいポジションではないかとも思いましたね。同時に、大きな企業でいろいろなポジションがあるからこそ、様々な個性を受け入れて配属してくれたとも思ったので、感謝の気持ちも持ちました。

―面接時に語り合った夢とはどんなものだったのでしょう

(石川)僕自身、未来のことを語るのがとても好きな性格で、「何か世の中に爪痕を残したい」という野望のようなことを伝えていました。そして、そのためには入社して様々なことを経験してスキルを磨き、会社にも還元しつつ将来は自分のやりたいことをやりきる、といったようなことを言いました。

「クリエイティブで世の中を変えたい」という想いはもっていましたし、影響力のある人間にもなりたかったので、自分の発信でみんなが納得してくれるような権威を身に着けたいと言いました。

―幅広く興味関心を持ち、このような考え方の気質になったのは何かきっかけがあったからなのでしょうか

(石川)小学生時代、親の仕事の都合もあって何度も転校することがありました。その度に、当時は同調性を意識して、どうやったら周囲と馴染むことができるのかを考えていました。それでもいじめの標的になったり、「あいつ目立っているから気に入らない」といったようなことも言われてしまい、人間関係の構築に悩んでいたんです。そのうちに、周囲に合わせることが面倒になってしまいました。

そして中学時代には個性は押し殺しつつ、でも周囲とも馴染まないといった選択をとっていたのですが、それも我慢の限界を迎え、高校進学を機に自分らしさを解き放つことにしたんです。すると、自分の感性を受け入れてくれる同級生や先生がいて、「人と違っても良いんだ」ということに気づくと同時に、「人と違うことが自分の価値なんだ」と気づくこともできました。

そこから、みんなが普通科の高校に進むというなら、自分は美術系の高校に進もうと考えたりと、周囲と違う方向に進むことを考えるようになっていき、そして、人から何と言われようと自分の決めた道を行こうと考えるようになったのだと思います。

―いろいろな進路がある中で、アートやデザインの世界に進まれたのですね

(石川)もともと絵を描くことが好きだったこともありますし、授業中ずっと折り紙を折っていたり、図工は満点の評価をもらい続けていました。だからこそ、大学進学するときには自分の好きな表現することを学びたいと思ったのです。そうと決めてからは美術の先生に弟子入りし、毎日のように放課後はデッサンに明け暮れていました。
 
 

仕事内容は会社のブランディングにかかわることすべて

―現在はどのような仕事に取り組まれているのでしょうか

(石川)いろいろなことに取り組んでいる部署ですが、わかりやすく言うと「会社のブランディングにかかわる業務」です。LINEヤフーを好きになってもらうための施策を、企画からデザインまですべてやるといった内容です。

例えば、「SEARCH FOR 3.11 検索は、チカラになる。」を立ち上げ、3月11日に「3.11」と検索すると東北支援に携わる団体に寄付されるキャンペーンを実施したり、最近はオンラインで開催するハッカソンイベント「Digital Hack Day」という24時間でプロダクトを作り90秒で審査員にプレゼンし受賞作を決めるといった企画のアートディレクションや世界観づくりといったことも手掛けています。そのほかには「PayPay祭」の企画・デザインなども行いました。

―石川さんにとって最も印象的だったプロジェクトは何だったのでしょう

(石川)どれも印象的ですが、一つ上げるなら「Hack Day」でしょうか。コロナの影響を受け、「Digital Hack Day」としてオンライン開催に切り替わりましたが、それまでは秋葉原でリアル開催していました。イベント会場の看板やノベルティ、ステージ上の演出など、デザインにかかわることが9割と言っても良いような企画でした。

お祭りごとでリアル開催。いろいろな演出ができ、規模も大きく、開催当日は現地に足を運ぶことで作った実感も沸きました。また、来場した方々の表情や様子を目にすることで達成感も得られました。

―様々な企画の世界観からデザインまでを手掛けられていますが、どのようなプロセスを経て形にしていくのでしょうか

(石川)たとえば「Hack Day」であれば、企画側で世界観(コンセプト)を策定したのち、それを体現するデザインを作るためにビジュアルイメージとして様々な事例を取り寄せ、メンバーとざっくりどんなイメージがふさわしいのか共通認識を持つようにします。そのうえで、どのように落とし込んでいくのか考えていくのですが、「それぞれが少しずつプロダクトを構築していることを表現するなら、コツコツ積み上げるブロックがイメージとしては近いから、ブロックをモチーフとして使おう」など話を進めていきます。

そして、モチーフがブロックと決まったら、次は未来やテクノロジーを感じられるようにしていかなければならないので、ブロックを半透明にして中に電球を入れて光らせたり、宙に浮かせて回転させるような演出をしていこう、と決めていくのです。

「Hack Day」のこれまでの歩みや詳細は特設ページで閲覧できる。
https://hackday.yahoo.co.jp/


―年間にどのくらいの案件を手掛けられるのでしょうか

(石川)概ね一つの案件につき3ヶ月ほどの期間をかけるので、最低でも年に4つの案件に携わることになりますが、3.11企画やPayPay祭といった年間で固定の企画もあります。また最近はカンファレンスなども刷新していくため世界観の再構築を依頼されたり、株主総会の招集通知のデザインや事業報告ビデオなども手掛けています。

―毎年、新しい企画・案件などもあると思いますが、どのように作られていくのでしょうか

(石川)毎年LINEヤフーではブランド調査を実施しており、社会からどのように見られているのかを測定しています。社会貢献意識の強い会社であると思われることが多いのですが、項目によっては前年よりも下がってしまうものもあります。そうしたときに、評価の下がってしまった項目を引き上げるための施策を考えましょう、といって企画が立ち上がっていきます。

そのうえで、当社はダイバーシティやSDGsへの取り組みのほか、だれもが便利に使えるサービスを提供しようというユニバーサルな考えも重視しています。そうした姿勢を世の中に発信するために、取り組みをまとめたランディングページを作成したり、SNSアカウントで発信したり、といった施策が生まれてきます。これはあくまで一例ですが、いずれにしてもブランド調査の結果をよりよくするためにアイデアを出していっています。

アイデアを生み出し続けることは、特別なことじゃない

―本業のほか、イベント会社のCOOや個人としての活動もされていますね

(石川)影響力のある人間になりたいという想いもありますし、自分のやりたいことを100%実現するためにはLINEヤフー以外でも活動の場を持ちたいと思ったためです。

また、学生時代もアルバイトではなく、デザインコンペの賞金でお金を稼ぐことが多かったです。気軽に稼げて自分のスキルも磨ける方法を探していた自分にはピッタリでした。デザインコンペはいいこと尽くめで、自分の作品も増えますし、自分のアイデアが商品化されるかもしれませんし、賞金ももらえるし、審査員からコメントももらえる。だから積極的に応募していきました。

コンペへの応募回数が増えるにしたがって、アイデアのストックも溜まっていくのですが、それがだれの目にも触れないのはもったいない、自分の中で抱えているままでいいのかというもどかしさに駆られるようになりました。クリエイターは自分のアイデアが盗まれるかもしれないと世の中に発信しない人もいますが、僕の場合は逆で、自分のアイデアを発信しなかった結果、後悔するくらいならどんどん出していきたいと思い、社会人になってTwitter(現:X)のアカウントを作ったというわけです。

副業も認められているので社会人になってからもデザインコンペに出し続け、そして生まれたアイデアを、ポートフォリオを作るような感覚でTwitterに投稿していきました。それがあるとき注目されてフォロワーも増えたことで、YouTubeも始め、本も書かせてもらうようになったという経緯です。もちろん、こうした経験はLINEヤフーでの仕事にも還元できているので、相乗効果を生み出していると思います。

それに、様々な活動を通じて社内外を問わず数多くの方に出会うことができます。中にはこれまで会ったことのなかったような方もいて、それも自分にとってプラスになっていますね。

―それだけ多くの活動をされていて、一日どんな風に過ごされているのでしょう

(石川)朝9時くらいにメールチェックをして、会社からデザインの依頼があれば取り組んでいます。業務が終わり次第、気分転換がてらに個人の活動も少しやったり、土日は個人の活動に集中したり・・・というように、本業と副業を行ったり来たりして気分転換しています。また、自宅や会社など仕事をする場所も変えることで、一日の集中時間を持続させることもできています。

―クリエイターの方の中には、なかなかアイデアが生まれないなどスランプに陥る方もいると思います

(石川)スランプに陥ったことはありません。アイデアが生まれない、生むことが苦しいというのは、「生み出さなければいけない」と思うからそうなるのだと思っています。僕は「生みだしたい」と思っているので、そうならないのだと思います。会社などから求められていないときにもアイデアを生み出したいので、毎日5案くらいは生まれているのです。そしてそれを引き出しにためておいて、求められたときに出していくことをしています。

―求められていないのにアイデアを出せるのは驚きです

(石川)これは完全に習慣化しているからできることです。子どものころから身の回りの物を見ては「なんでこんな形をしているのだろう」「素材を変えたらもっと頑丈になるのでは」とか思っていました。大人から「これはこういうものなんだ」と言われても、つい「なんで?」と聞き返してしまう、ませた子どもでした(笑)。でも、そうした子どものときの意識が大人になっても引き継がれていて、すべてのものが完成されていないように映っているんです。

例えば、一般的に鉛筆は木でできた丸い形状と思う人が多いと思いますし、そこに何も疑問はないと思います。でも、本当に木が良いのか、もっと別の形でも良いんじゃないかと考えることで、反射的に1分くらいでアイデアが出てくるのです。

困ったことに、そんな風になっているので日常雑貨を販売する店舗には行けなくなってしまいました。陳列されているものが目に入ると「もっとこうしたい」と思ってしまうので、どうしても売り場を通らないといけない時には商品を見ないようにして歩いています(笑)。

ただ、この考え方やものの捉え方は決して難しくはなく、クリエイターだけではなく誰でも身に着けることができるし、その結果、もっと生活がアップデートされるものだと思っています。それを伝えたい想いもあって、アイデアクリエイターとしての個人活動を行っている面もあります。自分のアイデアを見てもらいたいだけではなく、この感覚を知ってもらいたいんです。
 
 

アイデアの本質は課題を解決できるものかどうか

―感覚を伝えたいというのは印象的です

(石川)これも夢の話の一環ですが、将来的には「アイデアクリエイター集団」をつくりたいんです。僕と同じような感覚を共有できるメンバーで数多くの町工場が抱えている課題などを解決したいと思っています。

町工場には技術力はあるけれど、企画力が不足している場合があります。技術はあるけど何を作って良いのかわからないということです。そこで自分のコミュニティのメンバーと町工場に働きかけて、お互いにウィンウィンな関係になるような活動もしていきたいです。

―そもそもアイデアクリエイターを目指されるようになったのはどうしてでしょうか

(石川)僕も昔はアイデアクリエイターを名乗れるような人ではなく、独りよがりなアイデアばかり生み出していて、プロダクトの見た目は良くても、そこにどんな機能があるのか、どんな風に役に立つのかということがすっぽり抜けていました。

アイデアを生み出す人になろうと明確に決めたのは大学1年生のときでした。当時、大学のある市と大学がタイアップして、その市の代表的なお土産を作ろうというプロジェクトがあったんです。お土産のテーマは「左向きの馬のサブレ」。左向きの馬には幸運をもたらすという意味があるそうで、そのサブレのデザインを考案するというものでした。

大学1年生ですので高度なソフトを扱えるわけでもありませんし、学部や大学院の先輩と比べてデザインの技法を身に着けていたわけでもありません。とりあえず挑戦してみようと思ってA4の紙に鉛筆でサブレの形を描いて出してみたんです。そしたらファイナリスト10人に選ばれたということがありました。その後、その10人の案から投票して選ばれるわけですが、こんなA4の鉛筆の走り描きが選ばれるものかと思っていたところ、上位3位に入賞したんです。

そんな経験から、とりあえずうまく表現すれば良いということではなくて、そのデザインの意味やどのように役立つのかが本質であると気づくと同時に、自分にはその才能があるのかもしれないと思うようになりましたね(笑)。

もちろん、そこからすぐにうまくいったわけではありません。馬サブレのコンペの運営側のメンバーでもあり、受講していた講義のティーチングアシスタントだった先輩に何度も自分のアイデアを持っていってはダメ出しを受けました。その人は辛口な指摘をくれるけれどコンペの受賞歴も多数の実力派で、その人に認められたいという一心でした。メンタルもこの時に鍛えられたのだと思います。

こうした一連の経験で気づいたことは、主観的に「これは面白い!」と思ったアイデアでは意味がなく、客観的な視点や、みんなの共通認識となっている課題が解決されるようなアイデアでないと受け入れられないということでした。そこから課題起点でアイデアを考えることができるようになりました。そこからコンペでも受賞率が上がりましたし、授業でも評価されるようになっていったんです。

―すると、日々のアイデアは「面白そう」ではなく「こうなった方が便利だ」という視点で生まれているということですね

(石川)そうです。身の回りのどんなものであっても「もう少しこうだったらいいのに」という部分が絶対にあるはずです。その「こうだったら」の部分を、ちょっとした工夫で解決できないかなという視点でアイデアを出しています。

―ちょっとした工夫がポイントなんですか

(石川)他人から評価されるアイデアやデザインというのは、なるべく短い時間で理解し共感される必要があります。だからこそマイナーチェンジが良いのです。大げさなフルモデルチェンジをすると相手が理解するまでに時間がかかってしまいます。それに、提案する側と同じ熱量で見てくれるとも限りませんので、しっかり意図を汲み取ってくれるわけではありません。だから、「ちょっと変える」「ちょっと工夫する」が大切なのです。それに、ちょっとした工夫でみんなの課題が解決されるという驚きも与えることができます。アイデアは共感も大切ですが、驚きもないと印象に残らないですよね。

その驚きというのは、「意外性」や「斜め上のアイデア」で、言い換えると「ありそうでなかったもの」ということだと思っています。これは僕の活動のコンセプトでもあります。

―他人に共感や驚きを持ってもらうと言っても、みんなが同じ価値観を持っているわけでもないので一筋縄ではいかなさそうです

(石川)その通りです。X(旧Twitter)で「いいね!」がたくさんついたアイデアがコンペで入賞するとも限りません。社内の業務であったり、コンペの場合には、つまるところ直近の承認者の理解を得なければなりません。だからこそ、その人の趣味や嗜好、何を求めているのかを深く想像していきます。そのため、アイデアを考える前の段階にすごく時間をかけていて、提案する相手によって入念に戦略を立てるようにしています。そして相手の感性や期待に添うものと、あえて裏切るものの2パターンを用意し、どちらが採用されるのかを検証していきます。期待に添うものが好みの人もいれば、意外性を採る人もいますので、それを自分のデータとして蓄積し、今後の仕事に生かしていきます。

こうした考え方を続けていくと、客観的な視座が養われていき、どんな人ともコミュニケーションをとりやすくなってきました。具体的には話をする相手に合わせて自己紹介の内容を調整したり、プレゼンテーションの場の雰囲気づくりができるようになったということです。そう考えると、アイデアを考えることが相手と良い関係を築くスキルにもつながっているようにも思っています。そしてこれは、すべての職業で活用できる汎用的なスキルだとも思います。

―たくさんの夢や目標を話していただきました。今後、まずは何から取り組みたいですか

(石川)大小あわせると本当にたくさんの夢や目標があるのですが、まず、先ほどの「アイデアクリエイター集団」については3年後までには実現したいと思っています。そして自分のブランドも持ちたいと思っています。

色々なアイデアが形にならないのがもったいないということもありますし、「どこで買えますか」「どうして商品化しないんですか」といった声もいただきます。中にはアンチコメントで「この人はアイデアだけ出していて何もしない人」なんて言われることもありますね(笑)。

だからこそ、アイデアを商品化していきたいと思っていますし、せっかくそうするならブランドにしたいですし、ゆくゆくはセレクトショップみたいなのを作って、個人で活動しているコミュニティのメンバーと運営するようになったらすごく楽しいと思っているんです。SNSでの活動を通じてメーカーや町工場の方とのパイプもできましたから、あとは進めていくだけです。ここで築かれた「アイデアクリエイター集団」の活動をLINEヤフーと接続し、さらなるシナジーを起こしていくことも、もちろん考えています。
 
 

人と違っても良い。固定概念にとらわれないキャリアを

―最後に、これから就職や転職などキャリアを考える読者に対してメッセージをお願いします

(石川)他人と違う道を歩んでいこうと思っていたつもりが、結果としてどんな人にも大切なスキルを身に着けることができるようになりました。もちろんそれは、学生時代の経験やLINEヤフーでの仕事、そして副業などから気付けたことですが、他の人と違うことをしていたとしても、少しずつ前進することはできるはずです。

学校などで講演をすることもありますが、毎回伝えているのは固定概念に縛られてキャリアを決めない方が良いということや、必ずしも学生時代にやってきたことを仕事にすることが幸せであるわけではない、ということです。事実、僕はプロダクトデザインを学んでLINEヤフーに入社しているわけです。学生時代には自動車メーカーのインターンシップなどにも参加していたので、「石川は自動車メーカーに就職するんだろうな」と思われていたと思います。

ただ、それでも今はとても充実していますし、あえて環境を変えたことで自分の価値である「他人と違うこと」を活かすことができたように思います。仮に自動車メーカーに入ってプロダクトデザインを続けていたとすれば、自分の個性を出すことはできなかったかもしれません。

少し哲学的な話になりますが、僕は「この人は○○な人だ」と相手に印象付けられるくらい個性を発揮した方が良いと思っています。それが自信にもつながりますし、周囲もどういう人かわかっているのでコミュニケーションをとりやすくなると思います。例えば「石川はアイデアの人だ」と認識されていれば、どんな仕事をお願いしたらいいかわかりやすいですし、誰に何をお願いするか判断する時間も短縮されますよね。

それにLINEヤフーや副業で初めての経験をたくさん積みましたが、その度に発見がありました。どんなことでも「やらされてやっている」という意識ではなく、「新しく経験できる機会をもらえた」というつもりでありがたく受け入れていくと、ストレスなく自己成長につなげることができるように思います。

LINEヤフー株式会社
2023年10月に、LINE株式会社やヤフー株式会社などのグループ会社による再編を経て誕生した日本最大級のテックカンパニー。ミッションに『「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。』を掲げ、検索・ポータル、eコマース、メッセンジャー、広告など、多様な領域において事業を展開する。社会課題解決活動(CSR)にも力を入れており、東日本大震災後の復興支援、地域カーボンニュートラル促進プロジェクトなども推進している。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.

1991年12月生まれ。
新卒で大手新聞社に入社。記者として取材・記事の執筆を経験後、Webサービスを手掛ける企業に転職。約20名のメンバーのマネジメントの傍ら、Webサイトの開発・サイトの集客プロモーション・取材やライティングを幅広く担当。20代の働き方研究所では、企業へのインタビュー取材・取材記事執筆を担っている。
#カスタマーサクセス #コンテンツディレクション #イベントプロモーション #仕事終わりの晩酌が日課

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