2023.10.27INTERVIEW
新卒初任給最大51%アップ。技術者の地位と収入、そして今後のキャリアを本気で考える「経営理念」を掲げるジェイテックとは?
20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
株式会社ジェイテック
取締役 経営企画室長
村田 竜三(むらた りゅうぞう)様
※役職は取材時点のものとなります。
「技術商社」の名を冠し、国内の様々なメーカーへの技術者派遣を通じ、日本のものづくりを支えるジェイテック。同社では経営理念に「技術者の地位向上と業界最高の収入を実現し創造的個人経営者集団を形成させる。」を掲げ、会社を上げて技術者のキャリア形成や働きがいのある環境づくりに取り組んでいます。また、自社の技術職を新たな付加価値を生み出す存在として「テクノロジスト」と称し、高い専門性や人間力を備えた人材への育成を後押ししています。そんな同社では2024年4月入社の新卒採用から、基本給を最大51%アップするなど、テクノロジストの大幅な待遇改善に取り組んでいます。その狙いは何か、また同社がテクノロジストにかける想いとは。技術畑出身で、一連の取り組みを推進されている取締役の村田さんにお話を伺いました。
(村田)1992年に地元・岐阜県の工業高校を卒業し、工場に就職しました。4年間にわたって勤務していましたが、規模の小さな工場であったこともあり、仕事の範囲も限られていました。そこでもっと充実したキャリアを築きたいという思いで転職を決意し、当社と同業のIT系の会社に入社しました。工業高校でコンピュータの扱いを得意としていたこともあって、プログラマにキャリアチェンジし、いろいろな仕事に携わる機会をいただきました。
そして2002年、システムエンジニアとしてジェイテックに入社しました。前職でお世話になっていた上司が当社に転職しており、声を掛けていただいての転職でした。そこから4年ほどはシステムエンジニアとして勤務していましたが、2006年に社内の教育部門に異動しました。
当社には「社外留学制度」という、会社に在籍しながら海外留学や国内の大学に通える制度があるのですが、それを活用して夜間のビジネススクールに通うことにしました。そこで、従来のようにお客様先でエンジニアとして勤務しながらでは仕事と学びを両立できないだろうという配慮から、異動させていただいたのです。
当社のテクノロジストの技術教育を担当しながら学校に通い、2009年に経営学士を取得しました。そして、教育部門の本部長や、経営企画室の室長などを歴任し、今に至ります。
<エンジニアとしての開発実績>
・航空機エンジンテストセルプログラム作成
・自動車メーカー向け試作部品調達管理システム
・コンビニ向けBGM配信スケジューラ開発
・音楽再生用プレイヤーの開発
・お見合い管理支援システム
・遠隔地リモート監視システムの開発
・モバイルテレビドアホンシステムの開発
・電気鍵システム開発 など
―ITの技術者としてキャリアを積まれてきた中で、ビジネススクールに通われたのですね
(村田)工場勤務からはじまり、プログラマ、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいく中で、もっとキャリアに幅を持たせたいと考えました。また、当時「プレ役員制度」という教育制度があり(現在は「プレマネージャー制度」に制度変更)、プレ役員に任命されると毎月の取締役会への参加などもでき、自身で経営について考える機会が得られました。私も何度かプレ役員として経営者と意見交換する貴重な場を経験することができ、そうしたこともあって、経営学を学ぼうと思ったのです。
村田 竜三さん 2002年11月入社。執行役員技術本部長、執行役員ジェイテックグループ統括本部長、取締役まなクル事業本部長などを歴任し、2023年4月より取締役経営企画室長に再任
(村田)経営理念の冒頭で「技術者の地位向上」を掲げています。社会の中における技術者の地位は、欧米諸国などと比べると日本は相対的に低いと考えています。もっと地位を向上すべきではないかという思いを込めています。
ただし、ここでいう「技術者」にはいろいろな方が含まれます。工場でのライン作業といった方も「技術者」と呼ばれますよね。当社の「テクノロジスト」は世で言う技術者とは異なり、技術を提供することはもちろんのこと、新たな付加価値をお客様に提供できるだけの知識とコンサルティング能力を有する技術者を指しています。
こうしたテクノロジストといえる技術者は非常に価値が高く、より良い働く環境を提供していくことが必要だと考え、当社として様々な取り組みを推進しているのです。
―直近では2024年4月入社の新卒者からテクノロジストの待遇改善に取り組まれているそうですが、どのような内容なのでしょうか
(村田)当社のテクノロジストは機械設計・電気電子設計・ソフトウェア開発と、グループ会社がカバーする建築設計の大きく4分野に分けることができます。その中で、近年はIT業界の盛り上がりもあり、情報系の学科への進学者が増え、機械設計・電気電子設計を学ぶ学生が少なくなってきました。しかしながら、機械設計や電気電子設計の技術者はものづくりにおいて欠くことはできません。当社のような業界はもちろん、メーカーからも引く手あまたで、希少性が高まっています。
また、人気あるIT業界といっても、ソフトウェア開発は「オープン系」と「組み込み系」に大別できますが、日本が得意とするものづくりにおいてより必要だとされているのは「組み込み系」の分野となっています。
こうした背景を踏まえ、それぞれ給与額を大幅にアップしました。機械設計・電気電子設計の学生は月額基本給を51%(17万3,000円から26万2,000円)、組み込み系ソフトウェア開発の学生は35%(17万3,000円から23万5,000円)、それ以外のソフトウェア系の学生も15%(17万3,000円から20万円)へとそれぞれ上げております。この金額は同業他社と比較しても群を抜いて高い水準となっています。
―今回、大幅に給与を上げる判断の背景には何があったのでしょう
(村田)過去より当社には「業績給制度」がありました(現在はスター型賃金制度として制度改変)。これはお客様からのフィーの一定割合をテクノロジストに還元するというものですが、派遣期間が終了すると同時に業績給の支給もストップしてしまい、安定的に高い水準の給与を支払えないという課題がありました。今回の取り組みは理念にある「技術者の地位向上」と「業界最高の収入の実現」を実現することの一環です。これからもさらなる取り組みを推進していこうと考えています。例えば、今回は新卒入社に限った話ですが、中途入社の方にも同じような取り組みを実施していかなければ整合性がとれません。新卒・中途を問わず業界最高の収入を実現したいと考えています。
―そうした分野を専攻している学生が企業から求められているとはいえ、その学科を卒業していれば誰でも良いわけではないと思います。ジェイテックではどんな方を採用したいと考えているのでしょうか
(村田)基礎学力はポイントの一つですが、コミュニケーション能力、そして向上心を重視しています。当社では主事業である人材派遣、請負、業務委託事業を「技術職知財リース事業」としています。これは、お客様の事業をより発展させるために、テクノロジストの技術力はもちろん、会社の持つ知財をリースするものだということを表していますが、そのためにはお客様の課題やニーズに合わせてサービスを提供しなければなりません。ここにおいて、円滑なコミュニケーションを実現する力は必要です。
また、提供する技術力も、お客様が既に持っているレベルと同水準では高い付加価値の提供はできません。常に学び続け、よりスキルを磨く必要があるため、向上心が必要となるのです。
(村田)負担が大きくなることは間違いありません。その中で私たちが取り組むこととしては、お客様との契約単価の適正化です。物価高などに伴って様々な業界で取引金額の見直しなどが行われていますが、この業界ではなかなか見直しが進まないこともあります。会社としては、提供した価値に対して正当なフィーが支払われるように見直しを続けていく必要があります。
また、「まなクル」という新規事業が大きく成長しています。このサービスは社会人の学び直しや、育児を終えた主婦の社会復帰などを目的に、学びの場の提供や就職支援を実施することを目的としています。技術的なスキルを身に着けてもらい、より良い仕事に出会える場を提供するものです。「リスキリング」の必要性が声高に叫ばれていますし、「女性の社会進出」においても役割を発揮しています。これが徐々に成長を続けています。なお、当社では創業以来、社員の技術や社会人基礎力などの教育をすべて自社内で行っており、「まなクル」はその培ったノウハウをもっと生かすべく誕生した事業です。こうした取り組みや新規事業の成長もあって、大幅な待遇改善を実現することができています。
―自社で築いた育成ノウハウを外部に提供することで、また新たなテクノロジストを生み出すような事業ということですね
(村田)技術力のある人材は社会的にも必要ですし、「まなクル」で学ばれた方で高度なスキルを身に着けたことで、当社に入社いただくといった事例も生まれています。新しい社会への価値提供でもあり、当社にとっても良い循環となるようなサービスではないかと考えています。
―経営理念には「創造的個人経営者を形成させる。」ともあります
(村田)私は技術者としてキャリアをスタートし、現在は取締役として会社経営に関わる立場になりました。同じように当社のテクノロジストがゼネラリストとして経営の道を歩むような事例を増やしていきたいと思っており、そこにおける教育・育成も強化していきたいと思っています。ここまでお話した一連の取り組みやスタンスはすべて経営理念に則るものですが、単に技術力を上げるとか、報酬を上げるといったことだけではなくて、より多くの選択肢から自分の道を選べるようにサポートしていきたいですね。
―今後の取り組みについても教えてください
(村田)新規事業である「まなクル」は、今後更なる店舗拡大を目指しています。これは当社をリタイアしたテクノロジストの方にさらなる活躍の場を提供することも狙いの一つとしています。長年にわたる経験や、身に着けたスキル・ノウハウを生かし、先生として新たなテクノロジストを生み出す仕事に携わっていただくという道です。定年退職を迎えたあとも、イキイキと活躍してほしいと思っています。
本社エントランスにはオープンスペースが設けられ、コミュニケーションが活発に行われている。
(村田)私自身、経験をしてきたからこそ強く感じることですが、技術系アウトソーシング企業で働くことの最大のメリットは「技術を追求することに向き合える」ということだと考えています。様々なお客様先で働いてみて分かったことは、一つの企業で働き続けている技術者は、社内の調整業務などにも対応しなければならないということでした。特にキャリアを重ねていくと、技術に関する仕事に取り組む機会はほとんどなくなってしまう場合もあるくらいです。
また、ものづくりにかかわる会社は世の中にたくさんありますが、各社によって文化は全く異なります。それを転職することなく、経験することができることもメリットです。例えば、設計書を完璧に作りこみ、その通りにものづくりに取り組む会社もあれば、現場での合わせ込みを大切にする会社もあります。そのほかにも、対象となる製品やサービスによって、ものづくりに対するアプローチも全く変わってきます。どちらが良い、悪いということではありません。しかし、個々人によってどちらが馴染みやすいかは異なります。それを転職することなく見つけやすいというのはこの業界ならではです。
―そうした業界の中でジェイテックが秀でている点はどのようなところになるのでしょうか
(村田)一つは経営理念の通りで、会社を上げてテクノロジストを大切にしていこうという姿勢が強く表れていることです。それはこれまで紹介した取り組みでも明らかではありますが、加えて一人ひとりのキャリアに真摯に向き合うことを大切にしているという点もあると思います。私自身が一人のテクノロジストから取締役というポジションに就任できたように、いろいろな可能性がある会社だと思っていますし、経営陣の一人としてそうした会社の良さをもっと引き出していきたいと考えています。
技術者が会社のどのようなポジションにいるのか、定年まで技術者として働き続けることができるのかは、客観的にも企業選びの観点で重要です。経営層や幹部社員に技術者がいれば、会社運営に技術者の視点を生かすこともできますし、定年まで働き続けている人や、年齢が高くなったときにサポートする仕組みがあれば、生涯活躍したいと思う人にとってより良い環境だと言えるのではないでしょうか。
株式会社ジェイテック
1996年8月16日設立。技術職知財リース事業(人材派遣及び請負・業務委託)を主事業とし、大手上場企業を中心に国内約120社へ技術力を提供している。そのほか、自社・受託開発事業のほか、創業以来培ってきた社員教育制度のノウハウを生かし2022年1月より、新規事業「まなクル」をスタート。東京証券取引所 グロース市場に上場。日本経済団体連合会に加入。
取締役 経営企画室長
村田 竜三(むらた りゅうぞう)様
※役職は取材時点のものとなります。
「技術商社」の名を冠し、国内の様々なメーカーへの技術者派遣を通じ、日本のものづくりを支えるジェイテック。同社では経営理念に「技術者の地位向上と業界最高の収入を実現し創造的個人経営者集団を形成させる。」を掲げ、会社を上げて技術者のキャリア形成や働きがいのある環境づくりに取り組んでいます。また、自社の技術職を新たな付加価値を生み出す存在として「テクノロジスト」と称し、高い専門性や人間力を備えた人材への育成を後押ししています。そんな同社では2024年4月入社の新卒採用から、基本給を最大51%アップするなど、テクノロジストの大幅な待遇改善に取り組んでいます。その狙いは何か、また同社がテクノロジストにかける想いとは。技術畑出身で、一連の取り組みを推進されている取締役の村田さんにお話を伺いました。
技術者としてキャリアをスタートし、上場企業の取締役へ
―まずはご経歴について伺います。村田さんも技術者としてキャリアを歩まれたそうですね(村田)1992年に地元・岐阜県の工業高校を卒業し、工場に就職しました。4年間にわたって勤務していましたが、規模の小さな工場であったこともあり、仕事の範囲も限られていました。そこでもっと充実したキャリアを築きたいという思いで転職を決意し、当社と同業のIT系の会社に入社しました。工業高校でコンピュータの扱いを得意としていたこともあって、プログラマにキャリアチェンジし、いろいろな仕事に携わる機会をいただきました。
そして2002年、システムエンジニアとしてジェイテックに入社しました。前職でお世話になっていた上司が当社に転職しており、声を掛けていただいての転職でした。そこから4年ほどはシステムエンジニアとして勤務していましたが、2006年に社内の教育部門に異動しました。
当社には「社外留学制度」という、会社に在籍しながら海外留学や国内の大学に通える制度があるのですが、それを活用して夜間のビジネススクールに通うことにしました。そこで、従来のようにお客様先でエンジニアとして勤務しながらでは仕事と学びを両立できないだろうという配慮から、異動させていただいたのです。
当社のテクノロジストの技術教育を担当しながら学校に通い、2009年に経営学士を取得しました。そして、教育部門の本部長や、経営企画室の室長などを歴任し、今に至ります。
<エンジニアとしての開発実績>
・航空機エンジンテストセルプログラム作成
・自動車メーカー向け試作部品調達管理システム
・コンビニ向けBGM配信スケジューラ開発
・音楽再生用プレイヤーの開発
・お見合い管理支援システム
・遠隔地リモート監視システムの開発
・モバイルテレビドアホンシステムの開発
・電気鍵システム開発 など
―ITの技術者としてキャリアを積まれてきた中で、ビジネススクールに通われたのですね
(村田)工場勤務からはじまり、プログラマ、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいく中で、もっとキャリアに幅を持たせたいと考えました。また、当時「プレ役員制度」という教育制度があり(現在は「プレマネージャー制度」に制度変更)、プレ役員に任命されると毎月の取締役会への参加などもでき、自身で経営について考える機会が得られました。私も何度かプレ役員として経営者と意見交換する貴重な場を経験することができ、そうしたこともあって、経営学を学ぼうと思ったのです。
業界最高水準へ、大幅に給与額を引き上げ
―ジェイテックでは「エンジニア」ではなく「テクノロジスト」と呼称されています(村田)経営理念の冒頭で「技術者の地位向上」を掲げています。社会の中における技術者の地位は、欧米諸国などと比べると日本は相対的に低いと考えています。もっと地位を向上すべきではないかという思いを込めています。
ただし、ここでいう「技術者」にはいろいろな方が含まれます。工場でのライン作業といった方も「技術者」と呼ばれますよね。当社の「テクノロジスト」は世で言う技術者とは異なり、技術を提供することはもちろんのこと、新たな付加価値をお客様に提供できるだけの知識とコンサルティング能力を有する技術者を指しています。
こうしたテクノロジストといえる技術者は非常に価値が高く、より良い働く環境を提供していくことが必要だと考え、当社として様々な取り組みを推進しているのです。
―直近では2024年4月入社の新卒者からテクノロジストの待遇改善に取り組まれているそうですが、どのような内容なのでしょうか
(村田)当社のテクノロジストは機械設計・電気電子設計・ソフトウェア開発と、グループ会社がカバーする建築設計の大きく4分野に分けることができます。その中で、近年はIT業界の盛り上がりもあり、情報系の学科への進学者が増え、機械設計・電気電子設計を学ぶ学生が少なくなってきました。しかしながら、機械設計や電気電子設計の技術者はものづくりにおいて欠くことはできません。当社のような業界はもちろん、メーカーからも引く手あまたで、希少性が高まっています。
また、人気あるIT業界といっても、ソフトウェア開発は「オープン系」と「組み込み系」に大別できますが、日本が得意とするものづくりにおいてより必要だとされているのは「組み込み系」の分野となっています。
こうした背景を踏まえ、それぞれ給与額を大幅にアップしました。機械設計・電気電子設計の学生は月額基本給を51%(17万3,000円から26万2,000円)、組み込み系ソフトウェア開発の学生は35%(17万3,000円から23万5,000円)、それ以外のソフトウェア系の学生も15%(17万3,000円から20万円)へとそれぞれ上げております。この金額は同業他社と比較しても群を抜いて高い水準となっています。
―今回、大幅に給与を上げる判断の背景には何があったのでしょう
(村田)過去より当社には「業績給制度」がありました(現在はスター型賃金制度として制度改変)。これはお客様からのフィーの一定割合をテクノロジストに還元するというものですが、派遣期間が終了すると同時に業績給の支給もストップしてしまい、安定的に高い水準の給与を支払えないという課題がありました。今回の取り組みは理念にある「技術者の地位向上」と「業界最高の収入の実現」を実現することの一環です。これからもさらなる取り組みを推進していこうと考えています。例えば、今回は新卒入社に限った話ですが、中途入社の方にも同じような取り組みを実施していかなければ整合性がとれません。新卒・中途を問わず業界最高の収入を実現したいと考えています。
―そうした分野を専攻している学生が企業から求められているとはいえ、その学科を卒業していれば誰でも良いわけではないと思います。ジェイテックではどんな方を採用したいと考えているのでしょうか
(村田)基礎学力はポイントの一つですが、コミュニケーション能力、そして向上心を重視しています。当社では主事業である人材派遣、請負、業務委託事業を「技術職知財リース事業」としています。これは、お客様の事業をより発展させるために、テクノロジストの技術力はもちろん、会社の持つ知財をリースするものだということを表していますが、そのためにはお客様の課題やニーズに合わせてサービスを提供しなければなりません。ここにおいて、円滑なコミュニケーションを実現する力は必要です。
また、提供する技術力も、お客様が既に持っているレベルと同水準では高い付加価値の提供はできません。常に学び続け、よりスキルを磨く必要があるため、向上心が必要となるのです。
好循環サイクルを生み出す新規事業が業績向上を後押し
―それにしても、給与水準を大幅に上げるとなると経営的にも大きな負担になるのではないでしょうか(村田)負担が大きくなることは間違いありません。その中で私たちが取り組むこととしては、お客様との契約単価の適正化です。物価高などに伴って様々な業界で取引金額の見直しなどが行われていますが、この業界ではなかなか見直しが進まないこともあります。会社としては、提供した価値に対して正当なフィーが支払われるように見直しを続けていく必要があります。
また、「まなクル」という新規事業が大きく成長しています。このサービスは社会人の学び直しや、育児を終えた主婦の社会復帰などを目的に、学びの場の提供や就職支援を実施することを目的としています。技術的なスキルを身に着けてもらい、より良い仕事に出会える場を提供するものです。「リスキリング」の必要性が声高に叫ばれていますし、「女性の社会進出」においても役割を発揮しています。これが徐々に成長を続けています。なお、当社では創業以来、社員の技術や社会人基礎力などの教育をすべて自社内で行っており、「まなクル」はその培ったノウハウをもっと生かすべく誕生した事業です。こうした取り組みや新規事業の成長もあって、大幅な待遇改善を実現することができています。
―自社で築いた育成ノウハウを外部に提供することで、また新たなテクノロジストを生み出すような事業ということですね
(村田)技術力のある人材は社会的にも必要ですし、「まなクル」で学ばれた方で高度なスキルを身に着けたことで、当社に入社いただくといった事例も生まれています。新しい社会への価値提供でもあり、当社にとっても良い循環となるようなサービスではないかと考えています。
―経営理念には「創造的個人経営者を形成させる。」ともあります
(村田)私は技術者としてキャリアをスタートし、現在は取締役として会社経営に関わる立場になりました。同じように当社のテクノロジストがゼネラリストとして経営の道を歩むような事例を増やしていきたいと思っており、そこにおける教育・育成も強化していきたいと思っています。ここまでお話した一連の取り組みやスタンスはすべて経営理念に則るものですが、単に技術力を上げるとか、報酬を上げるといったことだけではなくて、より多くの選択肢から自分の道を選べるようにサポートしていきたいですね。
―今後の取り組みについても教えてください
(村田)新規事業である「まなクル」は、今後更なる店舗拡大を目指しています。これは当社をリタイアしたテクノロジストの方にさらなる活躍の場を提供することも狙いの一つとしています。長年にわたる経験や、身に着けたスキル・ノウハウを生かし、先生として新たなテクノロジストを生み出す仕事に携わっていただくという道です。定年退職を迎えたあとも、イキイキと活躍してほしいと思っています。
生涯、とことん技術力を磨きたいと考える人にこそ、相応しい会社へ
―ここまでお話しいただきありがとうございます。これから就職・転職活動を考える方へのメッセージとして、技術系アウトソーシング企業で働く魅力を教えてください(村田)私自身、経験をしてきたからこそ強く感じることですが、技術系アウトソーシング企業で働くことの最大のメリットは「技術を追求することに向き合える」ということだと考えています。様々なお客様先で働いてみて分かったことは、一つの企業で働き続けている技術者は、社内の調整業務などにも対応しなければならないということでした。特にキャリアを重ねていくと、技術に関する仕事に取り組む機会はほとんどなくなってしまう場合もあるくらいです。
また、ものづくりにかかわる会社は世の中にたくさんありますが、各社によって文化は全く異なります。それを転職することなく、経験することができることもメリットです。例えば、設計書を完璧に作りこみ、その通りにものづくりに取り組む会社もあれば、現場での合わせ込みを大切にする会社もあります。そのほかにも、対象となる製品やサービスによって、ものづくりに対するアプローチも全く変わってきます。どちらが良い、悪いということではありません。しかし、個々人によってどちらが馴染みやすいかは異なります。それを転職することなく見つけやすいというのはこの業界ならではです。
―そうした業界の中でジェイテックが秀でている点はどのようなところになるのでしょうか
(村田)一つは経営理念の通りで、会社を上げてテクノロジストを大切にしていこうという姿勢が強く表れていることです。それはこれまで紹介した取り組みでも明らかではありますが、加えて一人ひとりのキャリアに真摯に向き合うことを大切にしているという点もあると思います。私自身が一人のテクノロジストから取締役というポジションに就任できたように、いろいろな可能性がある会社だと思っていますし、経営陣の一人としてそうした会社の良さをもっと引き出していきたいと考えています。
技術者が会社のどのようなポジションにいるのか、定年まで技術者として働き続けることができるのかは、客観的にも企業選びの観点で重要です。経営層や幹部社員に技術者がいれば、会社運営に技術者の視点を生かすこともできますし、定年まで働き続けている人や、年齢が高くなったときにサポートする仕組みがあれば、生涯活躍したいと思う人にとってより良い環境だと言えるのではないでしょうか。
株式会社ジェイテック
1996年8月16日設立。技術職知財リース事業(人材派遣及び請負・業務委託)を主事業とし、大手上場企業を中心に国内約120社へ技術力を提供している。そのほか、自社・受託開発事業のほか、創業以来培ってきた社員教育制度のノウハウを生かし2022年1月より、新規事業「まなクル」をスタート。東京証券取引所 グロース市場に上場。日本経済団体連合会に加入。