2023.02.22INTERVIEW
若手社会人にとって必要な「学び」とは?「GLOBIS学び放題」立ち上げ人がおくる、これから学ぼうとする20代へのメッセージ
株式会社グロービス
グロービス・デジタル・プラットフォーム
マネジング・ディレクター
鳥潟 幸志(とりがた こうじ)様
「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」をビジョンに掲げる株式会社グロービス。「グロービス経営大学院(MBA)」「グロービス・エグゼクティブ・スクール」によるビジネスリーダーの育成・輩出や企業研修など法人向け人材育成サービスを通じた企業の人材育成・組織開発のサポート、「グロービス・キャピタル・パートナーズ」を通じたスタートアップ企業の支援、書籍「グロービスMBAシリーズ」の出版、オウンドメディア「GLOBIS 知見録」など、多彩な事業・サービスを展開しています。今回お話を伺った鳥潟さんは、同社の定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の立ち上げ人であり、2022年10月には若手社会人の学び応援企画「#これからの履歴書」をスタートされました。リスキリングやリカレント教育など、社会人としての学びが注目される中、「#これからの履歴書」が実施した調査では多くの若手社会人が「学ぶ必要性を感じているけれど、できていない」という実態が明らかに。これからを担う社会人にとって必要な学びとは何か、自分にとって必要な学びをどのように見つけたらいいのか、どうしたら無理なく学び続けることができるのか、鳥潟さんのお考えをお伺いしました。
このサービスを立ち上げたのは2016年のことでした。立ち上げた背景には二つあり、一つは時代的な背景です。当時から「人生100年時代」と言われ、従来以上に長期的なキャリア形成を考えることが当たり前になってきていました。また、AIが人間の仕事を代替する時代になっていくとも言われており、実際に大学院の学生も危機意識を強く持ち始めていました。
グロービスは30年近くビジネス教育にフォーカスした事業を展開してきましたが、業種・職種を問わず、また時代が変遷しても通用するポータブルなスキルを身に着けられるサービスの提供を強みとしてきました。そうした強みを大学院生だけでなく、もっと幅広いビジネスパーソンに提供することで社会のお役に立てると考えたのです。
そして「GLOBIS学び放題」立ち上げのもう一つの背景は、自分自身の失敗の経験です。23歳のときに友人と3人でPR会社を設立し、経営を10年やっていきました。おかげ様で事業は順調に成長していましたが、ビジネスや組織、人の育成などについて全く分からない状態での起業でしたので、会社が成長する過程で失敗も数多く経験してきました。
その後、30代前半でMBAを取得しましたが、「大学院で学んだことをもっと早く知りたかったな」と思いました。この知識があれば過去の失敗も防ぐことができたんじゃないかと思ったんです。起業に限らず新しいことに挑戦したいと考える20代の方はたくさんいらっしゃると思いますが、良いアイディアをよりスムーズに形にするためにMBAの知識が非常に有用であることを、自身の経験から実感しました。そこで、これから何かに挑戦しようとするビジネスパーソンが、良質な学びをより手軽に得られるようにしたいと考えるようになり、「GLOBIS学び放題」をスタートさせました。
―そして2022年10月に「#これからの履歴書」の企画をスタートされました。これはどのような背景があってのことでしょう
若い方々がキャリアに不安を感じていると思ったことがきっかけです。不安を感じるのは、自分がどのようにこの先のキャリアを歩んでいけばいいのかわからないからだと思います。
変化が多く先行き不透明な時代の中で、その状態に焦りを持つ方も多いでしょう。焦る気持ちから、何かを始める方もいらっしゃるかもしれません。そのこと自体は決して悪いことではありませんが、「他の人がそうしているから」とよく考えずに飛びつくと、結局自分にはあわないということも多いです。自分自身に向き合い、納得して人生を歩んでいってほしい、そんな想いからスタートしました。
「#これからの履歴書」という名称には、前向きにこれからの自分の履歴をつくっていってほしいという想いを込めています。履歴書というと「学歴」や「職歴」などを記すものですが、自分が今考えていることやこれから打ち込むことが、未来での「履歴」をつくります。ぜひ、いろいろなことに取り組み、前向きにキャリアを築いていってほしいと思います。
調査の背景としては、若手社会人が「学び」に対してどんなインサイトを持っているのかをリアリティをもって把握したいという思いから始めました。国も「リスキリング」を提唱し、従来あった職業もなくなっていくかもしれないと言われる世の中です。こうした現状をどのようにとらえているのか、知ることが出発点になると思いました。また、調査結果や、調査結果を反映した学びのアドバイスを発信することで、若手社会人自身が考えたり行動を起こしたりするきっかけになればと考えました。
実施してみて分かったことは、若手社会人の約7割が学びの必要性を感じているということです。「GLOBIS学び放題」を始めた2016年に、若手社会人を含む幅広い年代のビジネスパーソンに対して、学びの必要性や、学びへの意欲について調査をしたことがありました。その時は「学びたい」と回答した人は半分を切っており、自主的に何かを学び新しい能力やスキルを身に着けたいという人は少なかったのです。それが変わってきていることは注目点ですね。
また、約7割が学びを必要だとしている一方、そう答えた人の約6割が実践できていないという現状もあります。危機感はあるが踏み出せていないというギャップが見て取れます。そして、その一歩を踏み出せない理由が「わからない」からです。そもそも自分は何を学べばいいのかわからない、学びたいことがあったとしても何をすればいいのかわからない。想定してはいましたが、調査によって現状が浮き彫りになると、改めて若手社会人の学びについて考えさせられました。
学びが必要だと感じながらも実践できていない理由については、私たちも過去に調査をしたことがあり、多くが「時間がない」もしくは「お金がない」ことを理由に挙げています。今回の調査でもそうした項目が高かったものの、それに加えて「わからない」という項目が上位に挙がってきており、“学び迷子”とも呼ぶべき人が増えてきていると感じています。
―“学び迷子”が増えているのはなぜでしょう
情報が膨大にあることが、大きく影響しています。SNSを開けばたくさんの情報が発信されていますし、テレビなどのメディアもこぞって「学び直し」や「リスキリング」、「リカレント教育」といったキーワードで特集を組んでいます。どれも重要そうに見えますが、「自分はどうなりたいのか」という軸を見つけられないまま情報に接しているので、迷子になってしまうのだと思います。
―若手社会人が「学び」を必要とするようになってきているのは、どんな背景からなのでしょうか
時代的な要請は大きなポイントです。トヨタ自動車が「終身雇用を守っていくことが難しい局面に入ってきた」と述べたことは大きなニュースとなりましたが、一度就職した会社の中で安泰な人生を歩める時代ではなくなりました。人生100年時代に加え、終身雇用の崩壊でますます学びが必要とされるようになってきています。
また今の若手社会人はSNSを通じていろいろな情報を収集することに長けている世代です。自分の会社以外で何が起きているのか情報を得やすくなっています。活躍する同年代が何をしているのか、成長中の会社が何に取り組んでいるのかといった情報をすぐに手にすることができます。それによって、より自分にとって最適な環境を手にするために学びを通じて新しいスキルを身に着けようと考える人も増えているのだと思います。
―時代背景もありつつ、情報が入手しやすくなったからこそ、「学んだ方が良いのではないか」と思わされてしまっている側面もありそうですね
そうした方もたくさんいると思います。ただ、外部からの刺激だけだと、なかなか続かない方が多いというのも事実です。
短期・中期・長期それぞれの視点で、学びは大切だと考えています。
短期的な視点はとてもシンプルで、学びによって、仕事のパフォーマンス効率を上げることができるということです。例えば企画書やプレゼンテーションの資料作成に3~4時間かかっていたとして、作成方法を学び1時間に短縮できたとすれば、2~3時間は自己研鑽に充てたり、他の人の仕事を手伝だったりできます。
中期的な視点、つまり2~3年、長くても5年くらいのスパンで考えると、学びは自分のキャリアを主体的に作るために必要となるものです。どの職種・業種でも使えるポータブルなスキルを身に着けることが重要となります。
そして長期的な視点とは自身の人生観を形成するような学びです。自分の人生を楽しく生きるための学びとも言えるかと思います。自分が生きていきたい方向や、貢献したいこと、役に立ちたいことを見つけ、そこに向かって常に「学び」を続けることができれば、60代、70代、80代になってもリスキリングし続け、活躍されている方がいるように、長く楽しく学び、働くことができるようになると考えています。
―自分のやりたいことや、軸を見つけることが第一歩ということだと思いますが、そもそもそれを見つけることが難しい方もいます
中長期的なキャリアを考えたときに、どんな方向に向かうべきか見えてこないという相談をいただくこともあります。そんなときに、おすすめするのは、自分の人生を振り返ってみるということです。自分の軸のヒントは自身の過去にあることが多いからです。また、感情の起伏もポイントです。これまでにどんなことにワクワクしたり憤りを感じていたのかを思い起こしキーワードを繋げていくと、自分のアンテナはどんなところに感度高く反応するのかということが見えてきます。
こうして自己認識をしたうえで、次に視野を広げて外を見るようにお伝えしています。この先のキャリアを考えたときに、どうしても自分が属している業界だけで考えてしまうと選択肢が限られてしまいます。そうではなく、世の中にある社会課題に目を向け、興味を持てる課題を見つけたら足を運んでその現場を見て、話しを聞いてみていただきたいです。
そうすると、これは解決したいという思いを持つ事柄が出てくると思います。これが自分の軸が反応するということです。気になる事柄・テーマに対するアクションは、最初から具体的でなくても構いません。周辺情報を集めていき、少しずつ具体化していき、その方向に進もうとなれば必要となる経験・スキルに沿って学習計画を立てていけばいいと考えています。
―若手社会人にとって、そうした自分の軸を模索する作業はいつから始めた方がいいものでしょうか
20代という観点でいうと、まずは目の前の仕事をしっかりこなせるようになり、基礎ができてからだと思います。そうでなければ自分は何ができるのかが分からないからです。そのため、社会人として2~3年の経験を積んでからでも十分なのではないかと思います。
グロービス経営大学院の学生には「信頼残高」という言葉をよく伝えています。"自分の半径5メートル"の身近な人の信頼も得られない人が何かをやろうとしても、周囲からの助力は期待できません。だからこそ、まずは目の前の仕事にしっかり向き合う、周囲との約束は守るといった行動を通じて「信頼残高」を貯めていっていただきたいですね。
―読者の中には大学生の方もいます。新卒での就職活動で第一志望の業界や企業に進むことができないこともありますが、社会人になってからもう一度模索していけばいいということですね
そうですね。グロービスでは教育理念に「志」を掲げており、GLOBIS学び放題での関連動画の提供はもちろん、経営大学院でも「志」に関する科目を開講したり、グループとしても書籍を出版したりしています。そこでお伝えしているのは「志」とは人生をかけて達成したい目標のことで、それは少しずつ見えてくるものだということです。目の前にある小さな目標を「小志」と呼んでいますが、それを達成すると次の「小志」が見えてきて、それを重ねていくと少しずつ大きな志となっていきます。
新卒で入社した1社目の会社が「何か違ったかも」と思ったとしても、やってみないことにはわかりません。まずはやってみて、そして自分が何をしたいのかを見定めていってほしいですね。グロービスの経営大学院に通う方も、社会人になった当初から「絶対にこれを成し遂げるぞ」と決めている方はほとんどいません。実際に業務に取り組む中で、自身と向き合い、学びに対する一歩を踏み出されているのです。
―自分のやりたいことを見つけ、不足しているスキルを逆算し「学び」につなげていくとのことですが、不足しているスキルをきちんと見極めるためにはどんな考え方が大事になるのでしょうか
自分が就きたい仕事やキャリアが具体的であればあるほど、現状の自分との差が分かるので不足しているスキルや能力を明確に設定できると思います。例えば、ただマーケッターになりたいという人と、SNSのデジタルマーケッターになりたいという人では後者の方のほうが具体的です。さらに、業界などが絞られていればより明確ですよね。
そのため、まずは自分のやりたいことを冷静に見極めて、もし、ふわっとしている状態であるなら、いきなりスキルのことを考えるのではなく、その仕事やポジションが社会においてどんな役割を担っていて、どんな価値提供をしているのか分解してみてください。
仕事図鑑のような職種解説を読んだり、業界で活躍されている方の仕事観や仕事内容を調べていくと徐々にイメージをつかむことができるようになります。そして必要となるスキルを書き出していけば学習計画を立てることができるようになると思います。
また、習得したいスキルについても、資格のように勉強をすることで身に着けられるものもあれば、実践しなければ身に着かないものもあります。その実践がいま所属している会社でできないのであれば、副業やプロボノなどを通じて経験を積むのも選択肢の一つです。
若い方に広く共通することとして、3つの力を身に着けてほしいと思っています。1つ目は「考える力」、2つ目は「挑戦する力」、3つ目は「学び続ける力」です。
1つ目の「考える力」は非常にポータブルなもので、どんな業界・職種であっても役立つ力です。一方で日本の小・中・高校では論理的思考力や問題解決力を磨くようなカリキュラムがなかなか組まれていないのが現状です。
経営コンサルタントや戦略コンサルタントと呼ばれるような方は入社1年目の時点で徹底的に考える訓練をさせられています。一朝一夕で身に着く秘伝の方法があるわけではないので、メソッドを学びながら実際の業務で訓練した思考法を試し、経験を積むことで磨かれていきます。AIやロボットに仕事を取って代わられるとも言われますが、最後の判断は人間が下すものです。論理的思考力、問題解決力はいつの時代にも必要となる力だと思っています。
2つ目の「挑戦する力」については、マニュアル通りのオペレーション業務が減ってくる中で必要とされています。非連続でクリエイティブな仕事は、物事が計画通りにうまくいくとは限らず、とにかく挑戦してみないことには始まりません。「挑戦する力」を身に着けるといっても、何も起業しろということではなく、日々の仕事の中で、「こうしたらもっと良くなるのでは」と自分なりに仮説を立てて、上司に提案してみるといったことからでも構いません。もしかすると大きな会社の中で失敗をしないことが良いことだと考えている方もいるかもしれませんが、今は失敗する数こそ大切です。
そして3つ目の「学び続ける力」は、先ほどの通り自分の軸を明確にし、情報を仕入れながら学び続けるということです。
また、世の中でこれから求められる職業が何かということも抑えておいた方が良いポイントとなります。
―それはどういうことでしょうか
世の中の大きなトレンドを踏まえ、これから成長する産業やニーズが高まる職業に活かせる能力・スキルを知ることは、自身の労働市場での価値を高めるうえで必要不可欠ということです。自身の興味にあわせて学ぶことも大事ではあるものの、その学びの結果が生活にどう影響するかという視点も持たなければいけません。興味とトレンドの掛け合わせが大切です。
例えばカスタマーサポートという仕事は、ユーザーの問い合わせに対応し、コミュニケーションをとりながら解決に導く仕事です。ですが、現在はそうした問い合わせデータを蓄積し、どんな傾向があるのか、どうすれば効率的に対応できるのかといったことを読み解く力も求められています。
今後カスタマーサポートの仕事でキャリアを築くためには、お客様対応だけが上手ければいいのではなく、こうしたデータを構造化する力が必要でしょう。そしてさらに高度な分析や仕組み化ができるようになれば、エンジニアやデータサイエンティストなどの道も拓けてくるかもしれません。いずれにしても、「データ活用」という大きなトレンドをキャッチアップし、意識することができていれば、このように生かすことができるのです。
―「学び続ける力」とのことですが、無理なく学び続けるためのポイントがあれば教えてください
無理なく続けるために、まずは「他人と比較しないこと」が大切になります。自分にとって何が本当に大切か、何が楽しいのかにフォーカスするようにしてください。そして、大きすぎる目標を立てないことも大切です。また、自分のペースで続けられるようにするということもポイントですね。学生時代は机に向かって長時間勉強するということもできましたが社会人になると忙しさから、なかなかそうした時間を設けることができません。そこで、私も取り組んでいますが通勤中に書籍を音声で聞いたり、動画を見て学ぶなど、隙間時間を使って無理なく続けられる方法を見つけてみてください。
これまでの経歴の中で2回ほど選択に悩むときがありました。最初はサイバーエージェントを辞めて起業するというタイミングです。サイバーエージェントもいい会社でしたが、当時は「何をするかよりも誰とするか」を大事にしていたことと、会社の看板なしに自力でどこまでやれるのかを試してみたいと思う気持ちから起業を選びました。若さからの勢いもありましたが、ダメだったらもう一度やり直せばいいという気持ちで意思決定しました。
もう一つは自分で起ち上げた会社を辞めて社員としてグロービスに転職したときです。全く異なる業界であることに加え、役職もない状態での転職でした。この時は大きな葛藤の末の意思決定でした。実は自分の心の中にずっと、人生のどこかで教育に携わる仕事、人の可能性を開花させる仕事に就きたいという気持ちがあったんです。
学生時代に先生から信頼されることでパフォーマンスが上がったという経験もありましたし、逆に性悪説に立って学生を信用しない先生のもとでは学生生活がものすごく息苦しくなるという経験もしました。教鞭をとる人によってここまで自分自身の成長や人生が変わるものなのかと思いました。
こうした過去を振り返り、自分の志に従おうと決めました。経営者としての大きな責任もありましたが、教育にかかわる仕事をしたいという思いを持ち続けていましたので、思い切って飛び込もうと決断したんです。
―そうした鳥潟さんの実体験もこれからの学びを考える若手社会人にとっては参考になりそうですね。それでは最後に読者へのメッセージをお願いします
まず一歩目はきちんと自分に向き合うことです。自分が何をしたいのか、壮大なことではなくてもいいので目標を立ててみましょう。そのために1日5分でも時間を作って考えてみることが大切です。日々の生活の中にも学びのきっかけになるようなことはたくさんあります。例えばお客さんや上司にメールを送るという日常的な業務でも、単に送るのではなく一往復で終わらせるために結論から書き、そのあとに背景や理由を説明するというクリティカルシンキングに基づいた文面にするというのも学びの一歩です。そしてそれは別の機会のプレゼンテーションに活かすこともできます。こうしたことを積み重ねていけば必然的にできることが増えていきます。
「リスキリング」や「リカレント教育」などのキーワードも飛び交っていますし、様々な情報があふれています。それはそれで興味のあるものについては手に入れつつも、自身の軸をきちんと定め、やりたいことが見つかったときに挑戦できるようにベースを固めていってほしいですね。
株式会社グロービス
1992年8月1日設立。「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」をビジョンに掲げ、ヒト・カネ・チエそれぞれの分野にて事業を展開。2016年、ビジネスを学べるオンライン動画サービス「GLOBIS学び放題」をリリース。同サービスは2022年10月に若手社会人の学び応援企画「#これからの履歴書」をスタート。また同年に「GLOBIS学び放題 フレッシャーズ」とのコンテンツ統合により、内定者・新社会人向けのサービスを拡充するなど、若手社会人の活躍をサポートする取り組みを多数行っている。
グロービス・デジタル・プラットフォーム
マネジング・ディレクター
鳥潟 幸志(とりがた こうじ)様
「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」をビジョンに掲げる株式会社グロービス。「グロービス経営大学院(MBA)」「グロービス・エグゼクティブ・スクール」によるビジネスリーダーの育成・輩出や企業研修など法人向け人材育成サービスを通じた企業の人材育成・組織開発のサポート、「グロービス・キャピタル・パートナーズ」を通じたスタートアップ企業の支援、書籍「グロービスMBAシリーズ」の出版、オウンドメディア「GLOBIS 知見録」など、多彩な事業・サービスを展開しています。今回お話を伺った鳥潟さんは、同社の定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の立ち上げ人であり、2022年10月には若手社会人の学び応援企画「#これからの履歴書」をスタートされました。リスキリングやリカレント教育など、社会人としての学びが注目される中、「#これからの履歴書」が実施した調査では多くの若手社会人が「学ぶ必要性を感じているけれど、できていない」という実態が明らかに。これからを担う社会人にとって必要な学びとは何か、自分にとって必要な学びをどのように見つけたらいいのか、どうしたら無理なく学び続けることができるのか、鳥潟さんのお考えをお伺いしました。
変化の激しい、不安の多い時代に立ち上げた「#これからの履歴書」
―まずは鳥潟さんが「GLOBIS学び放題」を始めようと思われたのはどんな理由からだったのでしょうかこのサービスを立ち上げたのは2016年のことでした。立ち上げた背景には二つあり、一つは時代的な背景です。当時から「人生100年時代」と言われ、従来以上に長期的なキャリア形成を考えることが当たり前になってきていました。また、AIが人間の仕事を代替する時代になっていくとも言われており、実際に大学院の学生も危機意識を強く持ち始めていました。
グロービスは30年近くビジネス教育にフォーカスした事業を展開してきましたが、業種・職種を問わず、また時代が変遷しても通用するポータブルなスキルを身に着けられるサービスの提供を強みとしてきました。そうした強みを大学院生だけでなく、もっと幅広いビジネスパーソンに提供することで社会のお役に立てると考えたのです。
そして「GLOBIS学び放題」立ち上げのもう一つの背景は、自分自身の失敗の経験です。23歳のときに友人と3人でPR会社を設立し、経営を10年やっていきました。おかげ様で事業は順調に成長していましたが、ビジネスや組織、人の育成などについて全く分からない状態での起業でしたので、会社が成長する過程で失敗も数多く経験してきました。
その後、30代前半でMBAを取得しましたが、「大学院で学んだことをもっと早く知りたかったな」と思いました。この知識があれば過去の失敗も防ぐことができたんじゃないかと思ったんです。起業に限らず新しいことに挑戦したいと考える20代の方はたくさんいらっしゃると思いますが、良いアイディアをよりスムーズに形にするためにMBAの知識が非常に有用であることを、自身の経験から実感しました。そこで、これから何かに挑戦しようとするビジネスパーソンが、良質な学びをより手軽に得られるようにしたいと考えるようになり、「GLOBIS学び放題」をスタートさせました。
―そして2022年10月に「#これからの履歴書」の企画をスタートされました。これはどのような背景があってのことでしょう
若い方々がキャリアに不安を感じていると思ったことがきっかけです。不安を感じるのは、自分がどのようにこの先のキャリアを歩んでいけばいいのかわからないからだと思います。
変化が多く先行き不透明な時代の中で、その状態に焦りを持つ方も多いでしょう。焦る気持ちから、何かを始める方もいらっしゃるかもしれません。そのこと自体は決して悪いことではありませんが、「他の人がそうしているから」とよく考えずに飛びつくと、結局自分にはあわないということも多いです。自分自身に向き合い、納得して人生を歩んでいってほしい、そんな想いからスタートしました。
「#これからの履歴書」という名称には、前向きにこれからの自分の履歴をつくっていってほしいという想いを込めています。履歴書というと「学歴」や「職歴」などを記すものですが、自分が今考えていることやこれから打ち込むことが、未来での「履歴」をつくります。ぜひ、いろいろなことに取り組み、前向きにキャリアを築いていってほしいと思います。
「学びが必要」が7割。それでも“学び迷子”になってしまう若手社会人
―「#これからの履歴書」の第一歩としての実態調査では「社会人と学び」に関する調査を実施されています。このテーマを選ばれた理由や、調査を実施されてみてどのような発見があったのか教えてください調査の背景としては、若手社会人が「学び」に対してどんなインサイトを持っているのかをリアリティをもって把握したいという思いから始めました。国も「リスキリング」を提唱し、従来あった職業もなくなっていくかもしれないと言われる世の中です。こうした現状をどのようにとらえているのか、知ることが出発点になると思いました。また、調査結果や、調査結果を反映した学びのアドバイスを発信することで、若手社会人自身が考えたり行動を起こしたりするきっかけになればと考えました。
実施してみて分かったことは、若手社会人の約7割が学びの必要性を感じているということです。「GLOBIS学び放題」を始めた2016年に、若手社会人を含む幅広い年代のビジネスパーソンに対して、学びの必要性や、学びへの意欲について調査をしたことがありました。その時は「学びたい」と回答した人は半分を切っており、自主的に何かを学び新しい能力やスキルを身に着けたいという人は少なかったのです。それが変わってきていることは注目点ですね。
また、約7割が学びを必要だとしている一方、そう答えた人の約6割が実践できていないという現状もあります。危機感はあるが踏み出せていないというギャップが見て取れます。そして、その一歩を踏み出せない理由が「わからない」からです。そもそも自分は何を学べばいいのかわからない、学びたいことがあったとしても何をすればいいのかわからない。想定してはいましたが、調査によって現状が浮き彫りになると、改めて若手社会人の学びについて考えさせられました。
学びが必要だと感じながらも実践できていない理由については、私たちも過去に調査をしたことがあり、多くが「時間がない」もしくは「お金がない」ことを理由に挙げています。今回の調査でもそうした項目が高かったものの、それに加えて「わからない」という項目が上位に挙がってきており、“学び迷子”とも呼ぶべき人が増えてきていると感じています。
―“学び迷子”が増えているのはなぜでしょう
情報が膨大にあることが、大きく影響しています。SNSを開けばたくさんの情報が発信されていますし、テレビなどのメディアもこぞって「学び直し」や「リスキリング」、「リカレント教育」といったキーワードで特集を組んでいます。どれも重要そうに見えますが、「自分はどうなりたいのか」という軸を見つけられないまま情報に接しているので、迷子になってしまうのだと思います。
―若手社会人が「学び」を必要とするようになってきているのは、どんな背景からなのでしょうか
時代的な要請は大きなポイントです。トヨタ自動車が「終身雇用を守っていくことが難しい局面に入ってきた」と述べたことは大きなニュースとなりましたが、一度就職した会社の中で安泰な人生を歩める時代ではなくなりました。人生100年時代に加え、終身雇用の崩壊でますます学びが必要とされるようになってきています。
また今の若手社会人はSNSを通じていろいろな情報を収集することに長けている世代です。自分の会社以外で何が起きているのか情報を得やすくなっています。活躍する同年代が何をしているのか、成長中の会社が何に取り組んでいるのかといった情報をすぐに手にすることができます。それによって、より自分にとって最適な環境を手にするために学びを通じて新しいスキルを身に着けようと考える人も増えているのだと思います。
―時代背景もありつつ、情報が入手しやすくなったからこそ、「学んだ方が良いのではないか」と思わされてしまっている側面もありそうですね
そうした方もたくさんいると思います。ただ、外部からの刺激だけだと、なかなか続かない方が多いというのも事実です。
「学び」の第一歩目は「軸」を見つけること
―すると、若手社会人にとって学びは本当に必要なのでしょうか短期・中期・長期それぞれの視点で、学びは大切だと考えています。
短期的な視点はとてもシンプルで、学びによって、仕事のパフォーマンス効率を上げることができるということです。例えば企画書やプレゼンテーションの資料作成に3~4時間かかっていたとして、作成方法を学び1時間に短縮できたとすれば、2~3時間は自己研鑽に充てたり、他の人の仕事を手伝だったりできます。
中期的な視点、つまり2~3年、長くても5年くらいのスパンで考えると、学びは自分のキャリアを主体的に作るために必要となるものです。どの職種・業種でも使えるポータブルなスキルを身に着けることが重要となります。
そして長期的な視点とは自身の人生観を形成するような学びです。自分の人生を楽しく生きるための学びとも言えるかと思います。自分が生きていきたい方向や、貢献したいこと、役に立ちたいことを見つけ、そこに向かって常に「学び」を続けることができれば、60代、70代、80代になってもリスキリングし続け、活躍されている方がいるように、長く楽しく学び、働くことができるようになると考えています。
―自分のやりたいことや、軸を見つけることが第一歩ということだと思いますが、そもそもそれを見つけることが難しい方もいます
中長期的なキャリアを考えたときに、どんな方向に向かうべきか見えてこないという相談をいただくこともあります。そんなときに、おすすめするのは、自分の人生を振り返ってみるということです。自分の軸のヒントは自身の過去にあることが多いからです。また、感情の起伏もポイントです。これまでにどんなことにワクワクしたり憤りを感じていたのかを思い起こしキーワードを繋げていくと、自分のアンテナはどんなところに感度高く反応するのかということが見えてきます。
こうして自己認識をしたうえで、次に視野を広げて外を見るようにお伝えしています。この先のキャリアを考えたときに、どうしても自分が属している業界だけで考えてしまうと選択肢が限られてしまいます。そうではなく、世の中にある社会課題に目を向け、興味を持てる課題を見つけたら足を運んでその現場を見て、話しを聞いてみていただきたいです。
そうすると、これは解決したいという思いを持つ事柄が出てくると思います。これが自分の軸が反応するということです。気になる事柄・テーマに対するアクションは、最初から具体的でなくても構いません。周辺情報を集めていき、少しずつ具体化していき、その方向に進もうとなれば必要となる経験・スキルに沿って学習計画を立てていけばいいと考えています。
―若手社会人にとって、そうした自分の軸を模索する作業はいつから始めた方がいいものでしょうか
20代という観点でいうと、まずは目の前の仕事をしっかりこなせるようになり、基礎ができてからだと思います。そうでなければ自分は何ができるのかが分からないからです。そのため、社会人として2~3年の経験を積んでからでも十分なのではないかと思います。
グロービス経営大学院の学生には「信頼残高」という言葉をよく伝えています。"自分の半径5メートル"の身近な人の信頼も得られない人が何かをやろうとしても、周囲からの助力は期待できません。だからこそ、まずは目の前の仕事にしっかり向き合う、周囲との約束は守るといった行動を通じて「信頼残高」を貯めていっていただきたいですね。
―読者の中には大学生の方もいます。新卒での就職活動で第一志望の業界や企業に進むことができないこともありますが、社会人になってからもう一度模索していけばいいということですね
そうですね。グロービスでは教育理念に「志」を掲げており、GLOBIS学び放題での関連動画の提供はもちろん、経営大学院でも「志」に関する科目を開講したり、グループとしても書籍を出版したりしています。そこでお伝えしているのは「志」とは人生をかけて達成したい目標のことで、それは少しずつ見えてくるものだということです。目の前にある小さな目標を「小志」と呼んでいますが、それを達成すると次の「小志」が見えてきて、それを重ねていくと少しずつ大きな志となっていきます。
新卒で入社した1社目の会社が「何か違ったかも」と思ったとしても、やってみないことにはわかりません。まずはやってみて、そして自分が何をしたいのかを見定めていってほしいですね。グロービスの経営大学院に通う方も、社会人になった当初から「絶対にこれを成し遂げるぞ」と決めている方はほとんどいません。実際に業務に取り組む中で、自身と向き合い、学びに対する一歩を踏み出されているのです。
―自分のやりたいことを見つけ、不足しているスキルを逆算し「学び」につなげていくとのことですが、不足しているスキルをきちんと見極めるためにはどんな考え方が大事になるのでしょうか
自分が就きたい仕事やキャリアが具体的であればあるほど、現状の自分との差が分かるので不足しているスキルや能力を明確に設定できると思います。例えば、ただマーケッターになりたいという人と、SNSのデジタルマーケッターになりたいという人では後者の方のほうが具体的です。さらに、業界などが絞られていればより明確ですよね。
そのため、まずは自分のやりたいことを冷静に見極めて、もし、ふわっとしている状態であるなら、いきなりスキルのことを考えるのではなく、その仕事やポジションが社会においてどんな役割を担っていて、どんな価値提供をしているのか分解してみてください。
仕事図鑑のような職種解説を読んだり、業界で活躍されている方の仕事観や仕事内容を調べていくと徐々にイメージをつかむことができるようになります。そして必要となるスキルを書き出していけば学習計画を立てることができるようになると思います。
また、習得したいスキルについても、資格のように勉強をすることで身に着けられるものもあれば、実践しなければ身に着かないものもあります。その実践がいま所属している会社でできないのであれば、副業やプロボノなどを通じて経験を積むのも選択肢の一つです。
ポイントは、自身の興味×世の中のトレンド
―若手社会人の方が学びを深めたり、スキルを習得する上で必要となる力はなんでしょうか若い方に広く共通することとして、3つの力を身に着けてほしいと思っています。1つ目は「考える力」、2つ目は「挑戦する力」、3つ目は「学び続ける力」です。
1つ目の「考える力」は非常にポータブルなもので、どんな業界・職種であっても役立つ力です。一方で日本の小・中・高校では論理的思考力や問題解決力を磨くようなカリキュラムがなかなか組まれていないのが現状です。
経営コンサルタントや戦略コンサルタントと呼ばれるような方は入社1年目の時点で徹底的に考える訓練をさせられています。一朝一夕で身に着く秘伝の方法があるわけではないので、メソッドを学びながら実際の業務で訓練した思考法を試し、経験を積むことで磨かれていきます。AIやロボットに仕事を取って代わられるとも言われますが、最後の判断は人間が下すものです。論理的思考力、問題解決力はいつの時代にも必要となる力だと思っています。
2つ目の「挑戦する力」については、マニュアル通りのオペレーション業務が減ってくる中で必要とされています。非連続でクリエイティブな仕事は、物事が計画通りにうまくいくとは限らず、とにかく挑戦してみないことには始まりません。「挑戦する力」を身に着けるといっても、何も起業しろということではなく、日々の仕事の中で、「こうしたらもっと良くなるのでは」と自分なりに仮説を立てて、上司に提案してみるといったことからでも構いません。もしかすると大きな会社の中で失敗をしないことが良いことだと考えている方もいるかもしれませんが、今は失敗する数こそ大切です。
そして3つ目の「学び続ける力」は、先ほどの通り自分の軸を明確にし、情報を仕入れながら学び続けるということです。
また、世の中でこれから求められる職業が何かということも抑えておいた方が良いポイントとなります。
―それはどういうことでしょうか
世の中の大きなトレンドを踏まえ、これから成長する産業やニーズが高まる職業に活かせる能力・スキルを知ることは、自身の労働市場での価値を高めるうえで必要不可欠ということです。自身の興味にあわせて学ぶことも大事ではあるものの、その学びの結果が生活にどう影響するかという視点も持たなければいけません。興味とトレンドの掛け合わせが大切です。
例えばカスタマーサポートという仕事は、ユーザーの問い合わせに対応し、コミュニケーションをとりながら解決に導く仕事です。ですが、現在はそうした問い合わせデータを蓄積し、どんな傾向があるのか、どうすれば効率的に対応できるのかといったことを読み解く力も求められています。
今後カスタマーサポートの仕事でキャリアを築くためには、お客様対応だけが上手ければいいのではなく、こうしたデータを構造化する力が必要でしょう。そしてさらに高度な分析や仕組み化ができるようになれば、エンジニアやデータサイエンティストなどの道も拓けてくるかもしれません。いずれにしても、「データ活用」という大きなトレンドをキャッチアップし、意識することができていれば、このように生かすことができるのです。
―「学び続ける力」とのことですが、無理なく学び続けるためのポイントがあれば教えてください
無理なく続けるために、まずは「他人と比較しないこと」が大切になります。自分にとって何が本当に大切か、何が楽しいのかにフォーカスするようにしてください。そして、大きすぎる目標を立てないことも大切です。また、自分のペースで続けられるようにするということもポイントですね。学生時代は机に向かって長時間勉強するということもできましたが社会人になると忙しさから、なかなかそうした時間を設けることができません。そこで、私も取り組んでいますが通勤中に書籍を音声で聞いたり、動画を見て学ぶなど、隙間時間を使って無理なく続けられる方法を見つけてみてください。
まずは自分と向き合うこと。これから学びを始める20代へのメッセージ
―鳥潟さんは新卒でサイバーエージェントに入社し、起業され、大学院でMBAを取得し、「GLOBIS学び放題」を立ち上げられています。まさに「挑戦する力」や「学び続ける力」を実践されているかと思いますが、その時々でどのような判断をされたのか、ぜひ教えてくださいこれまでの経歴の中で2回ほど選択に悩むときがありました。最初はサイバーエージェントを辞めて起業するというタイミングです。サイバーエージェントもいい会社でしたが、当時は「何をするかよりも誰とするか」を大事にしていたことと、会社の看板なしに自力でどこまでやれるのかを試してみたいと思う気持ちから起業を選びました。若さからの勢いもありましたが、ダメだったらもう一度やり直せばいいという気持ちで意思決定しました。
もう一つは自分で起ち上げた会社を辞めて社員としてグロービスに転職したときです。全く異なる業界であることに加え、役職もない状態での転職でした。この時は大きな葛藤の末の意思決定でした。実は自分の心の中にずっと、人生のどこかで教育に携わる仕事、人の可能性を開花させる仕事に就きたいという気持ちがあったんです。
学生時代に先生から信頼されることでパフォーマンスが上がったという経験もありましたし、逆に性悪説に立って学生を信用しない先生のもとでは学生生活がものすごく息苦しくなるという経験もしました。教鞭をとる人によってここまで自分自身の成長や人生が変わるものなのかと思いました。
こうした過去を振り返り、自分の志に従おうと決めました。経営者としての大きな責任もありましたが、教育にかかわる仕事をしたいという思いを持ち続けていましたので、思い切って飛び込もうと決断したんです。
―そうした鳥潟さんの実体験もこれからの学びを考える若手社会人にとっては参考になりそうですね。それでは最後に読者へのメッセージをお願いします
まず一歩目はきちんと自分に向き合うことです。自分が何をしたいのか、壮大なことではなくてもいいので目標を立ててみましょう。そのために1日5分でも時間を作って考えてみることが大切です。日々の生活の中にも学びのきっかけになるようなことはたくさんあります。例えばお客さんや上司にメールを送るという日常的な業務でも、単に送るのではなく一往復で終わらせるために結論から書き、そのあとに背景や理由を説明するというクリティカルシンキングに基づいた文面にするというのも学びの一歩です。そしてそれは別の機会のプレゼンテーションに活かすこともできます。こうしたことを積み重ねていけば必然的にできることが増えていきます。
「リスキリング」や「リカレント教育」などのキーワードも飛び交っていますし、様々な情報があふれています。それはそれで興味のあるものについては手に入れつつも、自身の軸をきちんと定め、やりたいことが見つかったときに挑戦できるようにベースを固めていってほしいですね。
株式会社グロービス
1992年8月1日設立。「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」をビジョンに掲げ、ヒト・カネ・チエそれぞれの分野にて事業を展開。2016年、ビジネスを学べるオンライン動画サービス「GLOBIS学び放題」をリリース。同サービスは2022年10月に若手社会人の学び応援企画「#これからの履歴書」をスタート。また同年に「GLOBIS学び放題 フレッシャーズ」とのコンテンツ統合により、内定者・新社会人向けのサービスを拡充するなど、若手社会人の活躍をサポートする取り組みを多数行っている。