憧れの先輩に教わったこと ― クリエイティブディレクター/アートディレクター 佐藤可士和氏(第2回)

最終更新日: 2019年11月25日
  • シェア
  • ツイートする

中村千晶

憧れの先輩に教わったこと ― クリエイティブディレクター/アートディレクター 佐藤可士和氏(第2回)

さとう・かしわ◆1965年、東京都生まれ。89年に多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、博報堂に入社。00年に「SAMURAI」を設立。国立美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブンなどのブランド戦略のクリエイティブディレクションなどを手がける。ADC賞、毎日デザイン賞ほか受賞多数。慶應義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書に『佐藤可士和の超整理術』『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』(ともに日本経済新聞社)など多数。

 

――入社4年目で、大貫卓也さんと仕事をするチャンスがやってきたのですね。

当時の僕は一通りの仕事を覚えて、そこそこ出来るようになっていましたが、出来にムラがありました。すべてを勘でやっていたからです。たまにヒットがあっても三振もする。「なぜこれは評価されて、これはダメなんだろう?」がわからなかった。そんなとき、すでに独立していた大貫さんについて、サントリーの「リザーブ&ウォーター」や森高千里さんが「ジンジンジン♪」と歌う「アイスジン」CMなどを作りました。ウィスキーやジンが全然売れない時代といわれましたが、これらはとてもヒットしました。

――大貫さんに教わったものとは?

コマーシャルは表現以前が大事だ、という方法論みたいなものですね。例えばウィスキーの新しいCMを作るとします。僕が最初の打ち合わせに100個くらいアイデアを持って行くと、大貫さんは「いや、それはまだいいよ」と。そして延々と「ウィスキーとはなにか?」という話をするんです。「ウィスキーとは社会のなかでどういう存在なのか」「男にとってどういう存在なのか」「なぜ今、あまり飲まれていないのか」・・・・・・何日も何日も夜中まで話し合いました。そうやってウィスキーの持つ本質を探っていくのです。

――「表現ありき」ではなく「本質」を突き詰めていく過程が大事だと。

そうです。すごく勉強になりました。その後、ホンダの「ステップワゴン」の仕事を任されたので、大貫さんに教わったものを実践したんです。「家族とはなんだろう」「いま、車に何が求められているんだろう」と徹底的に考えた。自分の力でそれが出来たとき、初めて「わかった!」と思いました。「自転車に乗れるようになった!」というような感じです。そこからはもう、転ばなくなりました。打率も上がりましたね。

satokashiwa2-02.jpg

撮影:丸橋ユキ

――「ステップワゴン」のCMは大きな話題になり、車も大ヒットしました。

僕はそれまでは自分を「表現者」だと思っていたんです。企業の商品に僕の表現を当てはめて売ればいいんだと思っていた。でもそうではなくて、広告とはクライアントや商品の中にある本質を引き出して表現するのだと理解しました。自分のイメージを勝手に作り上げるのでなく、クライアントから問診のようにヒアリングをし、課題や伝えたいことを整理することで、表現が見えてくるということです。

――その後、00年に独立されるまでの経緯は?

広告の仕事は楽しかったのですが、いっぽうで「何か違うな」という思いがありました。その理由がわかったのは、キリンビバレッジの「チビレモン」の仕事でした。先方に指名していただいて、商品のコンセプトから名前やパッケージ、味などの商品開発、広告まで一環して担当した時に「僕がやりたかったのは、これだったんだ!」と気づいたんです。

 

20代の転職なら「Re就活」

20代・第二新卒・既卒のための転職サイト「Re就活」。
「もう一度、納得できる仕事を探したい」…というあなたの向上心に期待する企業との出会いが待つ転職サイトです。

求人はすべてキャリアチェンジ大歓迎。あなたを採用したい企業から届く「スカウト機能」など、はじめての転職をサポートする機能が満載です。

“これまでの経歴”ではなく、“これからの可能性”を。あなたの可能性に期待するたくさんの企業が、あなたのチャレンジを待っています。