_{あつぎり・じぇいそん◆1986年生まれ。ミシガン州出身。17歳でミシガン州立大学に飛び級入学。19歳のときに１年間来日し「旭化成」で音声認識ソフトの開発に従事。大学卒業後、「GEヘルスケア」でプログラミング開発をしながら、イリノイ大学アーバナ・シャンパーン校・大学院でコンピューターサイエンスの修士号を取得。11年に再来日しIT企業「テラスカイ」に勤務しながら14年に芸人としてデビュー。現在も「テラスカイ」アメリカ法人の役員、エンジェル投資家でもある。著書に『ジェイソン式英語トレーニング 覚えない英英単語400』（主婦と生活社）などがある。}

――日本のIT企業に勤めながら、「お笑い」の世界にも興味を持ったのですね。

　楽しそうだったから、ちょっとやってみたかった。05年に最初に来日したときにも、日本のテレビ番組をおもしろいなあと思っていたんです。11年に再来日して２年間は「テラスカイ」に務めながら、夜間のビジネススクールでほかのことを学んでいました。で、13年から週末にワタナベエンターテイメントの養成スクール（ワタナベコメディスクール）に通い始めたんです。1年間のコースです。卒業前にテレビ番組に出るようになり、お笑いの番組「R1ぐらんぷり」の決勝戦に２回進出して、そこからいつの間にか、ここまで来ました。

――芸人として、やっていけるビジョンがあったのですか？

　僕に「ビジョン」というのはないんです。大切なのは「いま、自分ができる最大限ことをする」こと。将来どんな機会に恵まれるかわかりませんから、そのときまでにたくさんスキルを身につけて、最大限のことをできるようにしておけば、どんなことにも対応できる。そういうやり方でいままで生きています。

　それに新しいことをやるときは、けっこう雑に動き出すタイプなんです。とりえあえず動き出せば、うまくいくかどうかも、だいたい見えてくる。うまくいかせるにはどうしたらいいかも、肌感覚でわかってくる。だからとりあえずやるんです。芸人としてうまくいかなくても、会社に戻るだけですから、何のリスクもない。そういうやり方でいままで生きてきました。

――養成スクール時代、ウケなくて落ち込んだりはしなかった？

　最初の10カ月はそうでしたよ。全然ウケないし、まあ芸人としてやっていくのは無理だろうと思っていた。でもそれもいい経験だし、卒業までにウケなかったら会社に戻って、その次何をしようか考えるだけ。でも、卒業する前に売れたから、しばらくこれでやってみるかと。なぜ世の中の多くの人が、やる前から「それは無理」「できない」と思ってしまうのか不思議です。なぜ？とりあえずやってみればいいのに？　やってみなければわからないですよ。僕もやってみて「これは違ったな」ということはたくさんあります。最初はプログラミング開発をしましたが、その後営業もやりました。でも営業はそこまで好きではなかったので、そこから経営方面にまわりました。

_{撮影：丸橋ユキ}

――現在、二足のわらじで大変なことはありませんか？　時間のやりくりとか。

　僕は人生のなかで“大変”な思いはしていません。寝る時間はもちろん削られるけど、それは自分で選んだことだから。やりたくないことをやるから、人はつらく感じるんです。自分がやりたいことがハッキリしていれば、そのうえで優先順位を決めて、時間のやりくりもできます。意外とできるものですよ。芸人になって１年後に会社も上場しましたし、犠牲にしているものはありません。奥さんと３人の娘がいますから、家族も大事にしています。できるときには娘の送り迎えもやります。