常に二つのことを並行してやる。無駄な時間がきらいだから ー 厚切りジェイソン氏(第1回)

最終更新日: 2019年11月25日
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中村千晶

常に二つのことを並行してやる。無駄な時間がきらいだから ー 厚切りジェイソン氏(第1回)

あつぎり・じぇいそん◆1986年生まれ。ミシガン州出身。17歳でミシガン州立大学に飛び級入学。19歳のときに1年間来日し「旭化成」で音声認識ソフトの開発に従事。大学卒業後、「GEヘルスケア」でプログラミング開発をしながら、イリノイ大学アーバナ・シャンパーン校・大学院でコンピューターサイエンスの修士号を取得。11年に再来日しIT企業「テラスカイ」に勤務しながら14年に芸人としてデビュー。現在も「テラスカイ」アメリカ法人の役員、エンジェル投資家でもある。著書に『ジェイソン式英語トレーニング 覚えない英英単語400』(主婦と生活社)などがある。

 

――芸人として活躍しながら、同時にIT企業の役員という肩書きをお持ちですね。

 僕はだいたい二つのことを並行してやる人生なんです。片方だけをやると、どうしても待ち時間ができたり「この人が動くまで自分は何もできない」という状態がありますよね。そのときにボーっとして待っているのがいやなんです。その時間を有効に使いたい。片方になかったスキルがもう片方で身につくことも多いです。僕は芸人になってから会社でのプレゼンがうまくなりました。人前で話す経験を積んだからです。

――経歴もとてもユニークです。まずは17歳のときに飛び級で大学生になられたとか。

 アメリカではAP(Advanced Placement)といって、高校生のうちに大学の単位を取得できる制度があります。これは普通のことで、僕の周りもみんなそうしていました。ただ飛び級で大学に進学したのは僕だけでしたね。アメリカでは就職活動も日本と違い、大学2、3年の夏休みにインターンシップをして、その後、その会社に進むのが一般的です。僕は19歳で大学を1年間休学して日本の「旭化成」でインターンシップをしました。

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撮影:丸橋ユキ

――「旭化成」を選んだのは?

 アメリカではそういう考え方はありません。「この会社に入りたい」じゃなくて、「何がしたいのか」で会社を選ぶ。僕はプログラミングがやりたかったので、その経験を積みたかったんです。その後、アメリカに戻って大学を卒業し、07年に「GEヘルスケア」に就職しました。プログラミング開発を担当し、特許も3つ取りました。同時に夜間大学で修士号を取り、次期経営者を育てるリーダーシップトレーニングも受け、3年後にそれらを終了して「さあ普通の社員になるぞ」という瞬間に辞めて転職して、日本に来ました(笑)。

――社員を育ててきた会社としては、それってOKなのですか?

 いや、やっぱり会社嫌がるんですけど、僕は関係ないです。自分の将来が最優先ですから。「こんなにトレーニングをしてあげたのに」と言われたら「じゃあその分、報酬をください」と僕は言います。アメリカはそういう社会ですよ。「恩があるから会社に返さないと」と言う人は、ずっとがまんしなさい!と思います。それに結局その考え方では、働く人が苦労する。不公平だと思いますね。それを変えていくには本人の覚悟が必要です。自分から言わないと、誰も給料や待遇を上げてくれないですから。自分の運命は自分で舵を取らないとダメです。

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――アメリカ人のなかでもジェイソンさんは貪欲なのでしょうか?

 僕の世代の半分ぐらいは「シリコンバレーで自分の会社を作りたい!」「高校を卒業して10年以内に億万長者になる!」みたいな感覚だと思います。フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグが84年生まれで、僕と2年しか変わらない。「彼にできて、なぜ自分にできないんだ!」と思っている人は多い。特にIT業界は自分の努力だけで、上にいける可能性がある世界ですから。