人生に一つとしてムダな経験はない 退職も転職も“勲章”だと思えばよい ― タレント 松尾貴史氏(第1回)

最終更新日: 2019年11月25日
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朝日新聞社教育総合本部 岩田 一平

人生に一つとしてムダな経験はない 退職も転職も“勲章”だと思えばよい ― タレント 松尾貴史氏(第1回)

まつお・たかし◆1960 年生まれ。俳優。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業。ナレーター、コラムニスト、「折り顔」作家など幅広い分野で活躍する。大阪と東京にあるカレー店「般°若(パンニャ)」店主。近著『東京くねくね』など著書も多数。

 

――タレントの仕事の一方で、一昨春まで京都造形芸術大学の客員教授をされ、大学生と接する機会も多かったでしょう。いま最初の就職につまずき再チャレンジする若者が増えています。

 再就職をリベンジ扱いしない方がよいですね。生きていくうちに経験することで一切ムダなことはないと、僕は思っています。最初の就職も、それを辞めるのも、再就職するのも、その人なりに死ぬまでにすることのプロセスを踏んでいるのだと思います。けっして「役に立たないことをした」ってことはない。経験して身に着けたことが、いまは何か目に見えて使えなくても、それに過ごした時間はムダではないはずです。

――20代での再就職をもっと積極的に捉えてほしいと。

ええ。人間は死ぬまで自分にストレスをかけ続けて生きている。退職とか転職とか、もともと自分からやろうとは思わないような経験をすでにしたというのは、自分に一つの勲章が付いたようなものだと思えばいいんじゃないかな。

確かに「この道一筋」という人もいますよ。でもそれだって、作業の手順とか仕事の環境とか扱う素材とか、何か変化があります。人間って同じ方向からストレスをかけ続けていると病気になったり、心にひずんだりするでしょう。だから、いろんなストレスをかけることでバランスを取っているのだと思います。

――興味深い“ストレス説”ですね。そう思うようになったきっかけは。

言ってみれば、「ずっと、じっとしていろ」というのもストレスなら、「休むな」といわれるのもストレスでしょう。私自身、長いこと同じ作業をしていると気分が優れなかったり、体調を崩しやすかったりするんですよ。それで、こっちからストレスかけたら、それと反対の方向からストレスをかけたくなる。今日はこんな仕事をしたから明日は別のことをやってみようとか。そうやってバランスを取っているというわけです。

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撮影:丸橋ユキ

――松尾さんは仕事の幅が広いのも、そういうところにあったのですね。テレビや舞台の俳優だけでなく、落語、コラムニスト、折り紙作家、カレー店の経営…八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶり。

毎日、人とたくさん会う仕事をしていると、どこかで一人になりたくなるというようなバランスのとり方をしたいと思います。ずっと一人だと寂しくなるけど、逆に、たくさんの人と会う仕事をしていると、どこかで一人になりたくなる。それもやはり自分の中でバランスを取りたい気持ちが働くからでしょう。

――でもレギュラーの仕事が多くて、なかなか思い通りにいかないでしょうね。海外旅行は?

長らく海外に行ってなかったのですが、2年前の秋に時間が取れてインド旅行をしました。あちらの一流の料理学校で5日間、インド料理を学ぶコースがたまたまありまして。カレー屋をやっているのにもっとインド料理のことを知らなきゃ恥ずかしいと思って出かけました。

――インド旅行することで、ストレスのバランスが取れた?

抽象的ですが、ふだんと違うものがあって、逆に離れても同じなんだということもあって、それなりに発見があり、おもしろかったですねえ。

――思い立ったら、ともかくやってみる。これって、20代の再就職にも当てはまる。

確かに。どんな経験でもムダってことはないわけですから。

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