20代の転職、まずはやり抜く力が大切だ ― 脳科学者 茂木健一郎氏(第1回)

最終更新日: 2019年11月25日
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朝日新聞社教育総合本部 岩田 一平

20代の転職、まずはやり抜く力が大切だ ― 脳科学者 茂木健一郎氏(第1回)

もぎ・けんいちろう◆1962年生まれ。脳科学者。脳とこころの関係を研究する。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。理学博士。東京大学理学部、法学部卒。同大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。2005年『脳と仮想』で第4回小林秀雄賞、09年、『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。著書多数。

 

――茂木さんはいま、脳科学者として多方面でご活躍です。

20代~30代では2~3年に1度はキャリアチェンジを経験しました。東京大学で理学部物理学科を出てから法学部に学士入学し、大学院で再び理学部に、博士課程では生物物理学をしていて、博士課程を取ったあと脳科学にテーマが変わりました。それからケンブリッジ大学留学し、そこで民間企業のソニーコンピューターサイエンス研究所に入ることを決めました。この研究所はいまもお世話になっています。

――ソニーコンピューターサイエンス研究所に行ったのは大きな決断だった?

はい。それまで100%アカデミズムの世界にいて、私の頭に民間企業のオプションはありませんでした。だから情報が不足していて、初めて研究所に行ったときはスーツにネクタイ姿をして行きました。ところが、もっと自由なところで、みんなラフなかっこうをしているんですよ。いまとなっては笑い話ですね。やはり、転職も一回目が難しいでしょうね。どんなところかわからないところに行くのには、だれでも不安や迷いがある。でも、私はやってみると、よいことが多かった。おもしろいこともあるし、新しい出会いもあるし、自分の幅がぐっと広がりました。

――どうして、その研究所に入ることになったのでしょう。きっかけは?

研究所の創立者で当時は所長だった情報工学の所眞理夫さんと、現所長の北野宏明さん。このお二人に出会ったことがポイントです。

「あっ!この人たちがいらっしゃるならおもしろいに違いない」と思いました。「あそこに入社したい」「こんな仕事がしたい」と、あれこれ夢を語る若い人に抽象的でどこか足が着いていない人がよくいますが、わたしのおススメは、行きたい会社の人に実際会うことです。一番精度が高く、リアルに会社が感じられますよ。

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撮影:丸橋ユキ

――ふだんから大学や研究所で若い人に囲まれていらっしゃいますが、二十代から就職の相談を受けますか。

ええ。新卒の就職でも転職でも、いくつか受けて失敗して、そこでめげてしまう人がけっこういるのが気になります。採用選考で落ちたことで自分が否定された気持ちになってしまうんですね。東京・恵比寿で、いまカリスマ的なコーヒー専門店「猿田彦珈琲」の店主の大塚朝之さんと話していておもしろかったのは、彼は、以前は俳優さんで、役者のころは10年間に1千回オーディションに落ち続けたそうです。「それに比べれば、コーヒー店を始めるのは苦にならなかった」と言うんですよ。千回就活に失敗するようなものですが、そんな人はまずいないでしょう。いくつか採用選考に落ちたくらいで自分が否定されたと思わないことです。

――二十代で転職を決めた若いひとへのアドバイスは。

米国の心理学者アンジェラ・ダックワースさんが提唱したグリット(grit)という性格類型がこのところ注目されています。もともと英語のgritは「歯をギシギシさせる」「くいしばる」というような意味なんですが、一言でいえば<あきらめずに、やり抜く力>です。グリットの能力をどのくらい持っているか心理テストをして調べてみると、たとえば、アメリカの陸軍士官学校ウエストポイントで超ハードな基礎訓練をやり遂げる候補生はこのテストのスコアがよく、学業成績のような他の才能よりもグリットの方が決め手になっていました。若いときの転職も同じだと思います。転職を決めたら、ともかくあきらめずにやり抜くことでしょうね。

 

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