今日一日を生きる大切さを痛感 「自分で道は切り開ける」と伝えたい ー サヘル・ローズ氏(第2回)

最終更新日: 2019年11月25日
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中村千晶

今日一日を生きる大切さを痛感 「自分で道は切り開ける」と伝えたい ー サヘル・ローズ氏(第2回)

さへる・ろーず◆1985年、イラン生まれ。幼少時代を孤児院で過ごし、8歳で養母と来日。様々な苦難を乗り越えながら、高校時代から芸能活動を始める。声優の専門学校に通いながら東海大学でITを専攻し、卒業。高校時代からJ-WAVEでラジオDJデビューし、女優、タレント、キャスターとしてTV、ラジオ、映画、舞台と活動中。現在、「探検バクモン」(NHK総合)進行役、「サヘル・ローズのイチオシNIPPON」(BS12)、「ノンストップ!」(フジテレビ)などにレギュラー出演中。映画「東京島」、「ペコロスの母に会いに行く」、「振り子」、「みんな!エスパーだよ!」、「西北西」(2017年公開予定)などに出演。所属事務所「エクセリング」は現在、スタッフ募集中。

 

――学生時代、アルバイトなどしたのですか?

 中3の後半が、人生で最も生活が苦しい時期でした。当時の我が家の夕飯は、パスタをゆでて塩コショウをかけたもの。アメ横で買った焼鮭を母と一緒に食べるのが週に一度の贅沢でした。お昼は、私は学校の給食を食べ、母はツナ缶1つを3日間に分けて食べていました。なので私は、チラシやティッシュ配りなど、できる限りの仕事をしました。大変さがわかるからこそ、配ってる人を見ると、必ずもらうようにしています。

――高校生で始めたJ-WAVEの仕事が、大きな転機になったそうですね。

 高3のとき、知り合いに「ラジオで外国人のレポーターを探しているから、オーディションを受けてみない?」と声を掛けて頂いたのがきっかけで、大学に通いながらレポーターをするようになりました。最初は「アナウンサーのように話せばいいんだ」と思って、それっぽくやっていたら、プロデューサーの方に厳しく注意をされました。「それじゃあ、なぜサヘルを採用したのかわからない。ほかの人と同じことをやったら、それは君じゃない。失敗することを怖がらなくていい。自分の感性で表現をして、どんどん挑戦してほしい」と。それからは「いいお天気ですね」を「イルカさんが飛んでいそうな、澄み切った青空です!」と言ったり、自分の感性で発信するようにしました。

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撮影:丸橋ユキ

――大学ではITを専攻されていたとか。就職活動もしたのですか? なぜ、他の学生のように一般企業に就職しなかったのでしょう。 

 はい。企業に就活をして、内定ももらいました。でもその時点で「やっぱり違うな」と思ったのです。

 面接でラジオでの経験や、自分のことを話すうちに、だんだん「自分にはもっと伝えたいことがある」と思えてきました。私はこれまでの人生で、生きている意味や、血のつながりがなくても人と人は愛し合えるということを痛感し、命のありがたみも知る事ができました。そうしたことを表現し、発信することで「今日一日、生きることの大切さ」を、より多くの人に伝えたくなったのです。タレントや女優として、自分の培ってきた事を発信する仕事をしたい。そしてこの道を選ぶことにしました。

 

 私は児童養護施設で育ち、愛情に飢えた幼少期を送りました。そうした環境で育った子の中には、その後の人生をうまく切り開けず、生きる希望を見失ってしまった子たちもいます。「人間、誰しも自分で道を切り開くことができるんだ」と、私というフィルターを通して感じて頂きたい。そのために、私自身が発言力を持てるよう、日々努力をしています。