「ほかの人はどう働いているんだろう?」に興味がある ー 作家 三浦しをん氏(第2回)

最終更新日: 2019年11月25日
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中村千晶

「ほかの人はどう働いているんだろう?」に興味がある ー 作家 三浦しをん氏(第2回)

みうら・しをん◆1976年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000年、24歳で『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利屋』で第135回直木賞を受賞。12年『舟を編む』で第9回本屋大賞を受賞。映画化された著作も数多い。06年に書き始め、08年に上梓した『光』(集英社)が大森立嗣監督によって映画化。11/25に公開。

 

――いきなり小説を書くことができたのですか。

 なぜ書けると思ったのかわからないんですけど、まあ当時は時間があったんでしょうね。大学卒業後、古本屋さんでみっちりアルバイトをしながら、たぶん3か月くらいで書き上げたと思います。ダメ出しもそんなになくて。そうやって『格闘する者に○』が出来上がったのですが、ただ自分が思う小説を書くのって難しいんだな、と思いました。いままで自分が読んで好きだなと思ってきたような小説と、自分が書いたものの彼我の差に打ちひしがれるというか。ようやく「これかな」思えるようになったのは、2年後に『秘密の花園』を書いたときです。「あ、小説を書くのって、おもしろいな。まだまだ自分のなかで書いていきたいことがあるな」と思えた。最初のころは書いていて煮詰まるとかはあまりなかったですけど、最近は体力の限界や気力も尽きてきた、という感じでしんどいですね(笑)。

――小説を書く方法、というものはあるのですか?

 私が一番最初に思い浮かぶのは「空気感」みたいなものなんです。書きたいな、と思うことの「もやっとした雰囲気みたいなもの」というんですかねえ。特に長編の場合は雰囲気やその世界の明るさ・暗さみたいなものが、最初に浮かぶことが多いかもしれません。

 エッセイも書きますが、小説とエッセイでは使う脳の回路が違うというか、使う筋肉が違う気がします。エッセイは瞬発力が必要な短距離走で、小説は長距離走、というのかな。エッセイは見聞きしたものをすぐに書けるんですが、小説の場合はそうではなくて、ずいぶん時間が経ってから「そういえば……」みたいな感じでスタートすることもある。しかも見聞きしたものとは全く違う形になってジワジワ出てきたりする。だからすごく疲れます。書いている途中に編集者に相談に乗ってもらうこともほとんどないので、孤独な作業です。

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撮影:丸橋ユキ

――仕事をテーマにした作品も多いですね。

 特に意識してきたわけじゃないんですけど、多いですね。やっぱり興味があるのかな。私は結局就職できずに会社員をやったことがないし、小説を書くことは家にこもって、一人でやる仕事なので、常に「自分の仕事の仕方や、仕事への姿勢はこれでいいのかな?」という不安があるんですよね。だから「ほかの人はどうやって仕事してるのかな?」に興味があるんだと思います。

 例えば『舟を編む』では辞書編集部の仕事を取材しましたが、辞書は一人ではできなくて、いろんな人と協力して作るものです。しかも出来上がるまでにものすごく長い時間がかかる。『神去なあなあ日常』は林業の話で、彼らは会社員ではないけれどチームで仕事をすることが多い。しかも木を育てるには長い年月がかかるので、いろんな世代の人が一緒に仕事をしています。『仏果を得ず』の人形浄瑠璃(文楽)も同じで、「さまざまな世代の人がずっと受け継がれている一つのものにどう取り組むか」という世界。たぶん、私はそういうものが好きなんだと思います。

 

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