_{サヘル・ローズ◆1985年、イラン生まれ。幼少時代を孤児院で過ごし、8歳で養母と来日。様々な苦難を乗り越えながら、高校時代から芸能活動を始める。声優の専門学校に通いながら東海大学でITを専攻し、卒業。高校時代からJ-WAVEでラジオDJデビューし、女優、タレント、キャスターとしてTV、ラジオ、映画、舞台と活動中。現在、「探検バクモン」（NHK総合）進行役、「サヘル・ローズのイチオシNIPPON」(BS12)、「ノンストップ！」（フジテレビ）などにレギュラー出演中。映画「東京島」、「ペコロスの母に会いに行く」、「振り子」、「みんな！エスパーだよ！」、「西北西」（2017年公開予定）などに出演。所属事務所「エクセリング」は現在、スタッフ募集中。}

――就職するのを辞めて、女優の道に進んだことは大きな決断ですよね？

　たまに「安定した仕事に就いていたら、どうだったかな」と思うこともあります。この仕事は保証もないし、すごく怖いです。「就職をしない」と母に言ったとき、母は心のなかで「大学の学費が無駄になった」と思ったかもしれない。でも私は「待ってて。必ず、道を切り開いて、後悔させないから！」と言いました。それに大学で学んだことは何一つ無駄になっていない。学生時代に６年程エキストラをやったことも、結果的にはいまにつながっています。スポットライトを浴びている人を間近で見て「私も、いつかここに行ってやる！」と思うようになった。そのおかげで、いまの私があるんです。

――経験は無駄にならない。そして失敗を恐れないことが大事なのですね。

　失敗はどんどんしていいと思います。オーディションも100回失敗して、１回がうまくいけば大成功です。「これがやりたい！」と思うことについての企画書もそうです。提出しても「いいね。でも、いつかね」と大抵言われる。でもそこでへこたれない。私はそれを続けた結果、８年越しの企画を実現させることができました。里親になった人と、施設で育った人、その双方を集めて、音楽と彼らの声を融合したイベントです。岩井俊二監督が賛同してくれて、先日、それが叶いました。

――別人を演じる、女優という仕事は大変ではありませんか。

　ちょっと変わっているのかもしれませんが、私にとって役者は唯一「オフになれる瞬間」なんです。私は家にいるとき、母の前でも常にオンの状態で、役者をしている時間だけ別の人になれる。その瞬間、本当の私は何も考えなくていいので、役者でなくなってしまうと、私が私でなくなってしまう。

　また、私はアンジェリーナ・ジョリーさんの生き方に憧れています。彼女は自分のネームバリューを上げることで自分が掲げる理念を実践し、社会的な活動をしています。私もそうなりたいと思っています。今後も引き続き、里親と養子縁組の問題や、私の将来の夢である、イランに児童養護施設を建てるためにも頑張っている最中ですので、今の仕事は天職だと思っています。

_{撮影：丸橋ユキ}

――Ｒe就活を目指す人たちにアドバイスをお願いします。

　ぜひ自分と向き合う時間を作ってほしいな、と思います。立ち止まることはすごく大事なことです。そして自分の心の声にじっくり耳を傾けてほしい。意外とその声が客観的な意見を言ってくれたりするものです。そして自信がなくても、とにかくやってみる。ぶつかってみる。そうすると信じられないような光景が目の前に広がることもあると思います。やってみて「やっぱり違ったんだ」でもいいじゃないですか。すべては生きている証拠。人生の宝物になると思います。