自分を決めつけず、新しい経験にチャレンジしよう ― 脳科学者 茂木健一郎氏(第3回)

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朝日新聞社教育総合本部 岩田 一平

自分を決めつけず、新しい経験にチャレンジしよう ― 脳科学者 茂木健一郎氏(第3回)

もぎ・けんいちろう◆1962年生まれ。脳科学者。脳とこころの関係を研究する。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。理学博士。東京大学理学部、法学部卒。同大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。2005年『脳と仮想』で第4回小林秀雄賞、09年、『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。著書多数。

 

――転職で今度こそ自分にふさわしい会社を見つけるにはどうすればよいか。茂木さんはよく「偶然の幸運に出合うこと」を意味するセレンディプティについて話されていますが。

 セレンディプティが偶然の幸運だとしても、それに恵まれるためには3つのAが大切です。

第1がAction(行動)。ともかく行動する。人に会うとか就活サイトで情報を取るとか、アンテナを張り巡らしておく。何もしない人は幸運に恵まれません。

第2にAwerness (気づき)。幸運に出合っていながら、それに気づかなければチャンスを逃してしまいます。人間って、自分の世界観にこだわっているから、それと違うものが出てきた時には気づけないでやり過ごしてしまいがちです。

そして、第3にAcceptance(受容)です。自分は、こういう人間だと決めつけて、こだわることがセレンディプティの一番の敵です。自分は変わりうる存在だと常に頭の中に置いておいておき、どんどん好奇心を持って新しいところに飛び込んでいく。それが大切ですね。創造性の最大のかたちは「自分が変化すること」です。いままでにやったことのない仕事をするのは、すごくおもしろい。私自身がそれを実感してきました。たとえば、テレビに出演するなんて思ってもみなかったことでしたが、やってみたら出来た。新しいことにチャレンジし自分が変わっていくのを実感するのが仕事をする喜びでしょう。

――自分がいままで経験したこともないことがチャンスだって、どうすれば気づけるのですか。

最近よくいわれるマインドフルネス(maindfulness)がキーワードでしょうね。いまここで起きていることに目を向ける、あるいは感覚を開くエクササイズです。グーグルとかフェイスブックといった企業が創造性を発揮するトレーニングとして取り入れています。仏教に回りの音とか光とか自分の呼吸に目を向ける瞑想(めいそう)の修行がありますが、マインドフルネスは瞑想にヒントを得て特定の価値観とか仮説で決めつけないで何ごともありのままに受け入れる。そういう状態にあることがセレンディプティを起こりやすくします。

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撮影:丸橋ユキ

――脳科学者から見て、転職とは行動なんでしょう。

AI(人工知能)が発達し、これからは学力よりパーソナリティ(人格力)に評価がシフトします。転職は自分のパーソナリティを発展させるよい機会です。新しい経験をすればするほど、幸福感やヤル気に関する神経伝達物質のドーパミンが出ます。すると前頭葉を中心に強化学習が進み、神経回路が強くなります。転職を何度か経験した人は同年代で同じ環境にいる人より、おそらく「脳が若い」はずです。

――でも、転職にはどうしても不安がつきまといます。

そう。そこで必要なのが「安全基地」です。イギリスのジョン・ボルビーという学者が研究して有名になりました。子どもはまさに日々新しい経験をしていますが、どうしてそれができるかというと、母親や父親のような他者との間に安心できる絆があるから。大人になって転職のようなチャレンジをするには、やはりご自分の安全基地を再確認することが必要です。転職で迷っているなら友人でも知り合いでも、だれか信頼できる人に相談することです。それが、あなたの背中を押してくれる。おやじに転職の相談をしたら反対されるかもしれません。でも、それでいい。自分と父親の間に絆があれば、それも安全基地。そして最後は自分が決断する。

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